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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第五章

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彭城に向かう前に

 戦いが終わった翌日。


 野営で一夜を明かし、軍を再編成させた曹昂は郯県へと進ませた。

 急いだ訳でもないのだが、朝出発して昼になる前には郯県に辿り着いた。

 城壁には矢が突き刺さり、至る所に黒い染みが出来ていた。

 まだ、戦の後の処理をしている最中の様で、地面に倒れている死体や破壊された城壁の破片などを拾っている兵達が居た。

 曹昂軍を見ると、兵達は手を止めて一礼した。

(思ったよりも死体の数が少ないな。予想よりも死傷者は少ないと考えるべきか?)

 まだ死傷者の数を聞いていないので決めつけるのは早いなと思いながら曹昂は軍と共に城に入った。

 城内に入ると、戦闘の後だからか矢が突き刺さったままな所もあれば黒い染みが出来ている所もあった。

 家に至っては扉が壊されており、室内を見ると色々な物が散乱していた。

 曹昂が進んでいると、進路上にあった家から曹昂軍の兵が出て来た。

 兵の手の中には布で包まれた何かを持っており、その布の端には赤い染みが出来ていた。

「良いのか。略奪は禁止していたのだろう」

 家から兵が出て来たのを見て董白が曹昂に訊ねてきた。

 今迄の降伏させた城は略奪などは禁止していたので気になり訊ねた様だ。

「降伏しなかったんだ。こうなるのも仕方がない」

 曹昂は軍紀に正して処罰するつもりはなかった。

 孫策に別動隊を預ける際に、城を陥落させた場合、略奪はしても良いが放火はしない様にと命じていた。

 戦いに出ている以上、何かしら旨みがなければ兵は不満を募らせる。

 不満が溜まって反乱を起こさない様に適度に解消させなければならないと思っている曹昂。

(昔の戦では降伏勧告に応じず抵抗した都市が、陥落後に略奪を受ける事は普通だったからな)

 命懸けの戦争に出ているのだ、規律だけでは兵は付いてこないので仕方がないと思いながら曹昂は馬を進ませていた。


 そのまま沿道を進んでいると、孫策が出迎えに来た。

 孫策は出迎えに遅れた事を詫びたが、曹昂は気にしないでお互いの無事を喜びつつ共に内城へと向かった。

 少しすると大広間で宴が開かれた。

 演奏に合わせて妓女が踊るのを見ながら、曹昂達は勝利を祝った。

「……ぷっは~、まさか大きな被害が出ないままで城を奪う事が出来るとは思いもしませんでしたな。殿」

 喉を鳴らしながら美味そうに酒を飲む刑螂。

「ああ、全くだ。城を攻めた時の死傷者は五百程度だし、そっちの野戦の被害は三千いったのか?」

 孫策は宴に出された料理を食べながら城を落とす時の損害を言いつつ、野戦での損害を訊ねた。

 曹昂はどれほどの損害だったのか思い出していると、劉巴が口を挟んだ。

「重軽傷者と死者を合わせても二千四百程です。主な損害は徐州兵ですので我が軍の被害は軽微と言えるでしょう」

「ははは、そうか。ああ、自分の損害を少なくする為に徐州兵を自軍に取り込んだのか」

 孫策は自軍の損害が少ないと聞いて、どうして徐州兵を降伏させて自軍に組み込んだ理由が分かった。

「しかし、本隊を囮にして城の兵を誘き出して野戦で撃破して、本隊が戦っている間に別動隊で城を落とすか。これが虎を調(あしら)って山を(はなれ)しむの計。調虎離山の計か。本当に上手くいくとは思わなかったな」

 孫策は話を聞いても、此処まで上手くいくとは思っていなかったので驚きも一入であった。

「孫策殿。そう言うのであれば、徐州兵を劉備軍と戦わせたのもあれは借屍還魂の計ですな」

 朱霊がそう訊ねるので、曹昂もその通りとばかりに頷いた。

「その通りです。流石は朱霊将軍」

「ははは、まぁそう思いましたので」

 徐州兵に矢を放ったのを見てこれも計略なのだろうと思っていたので、計略の話が出たので訊ねた朱霊。

「何だ。それ?」

 孫策がどういう計略なのか分からず訊ねてきたので、曹昂は少し考えてから簡単に教えた。

「他人の大義名分に便乗して自らの目的を達成する為とか、敵を滅ぼして我が物としたものを大いに活用してゆく計略の事だよ。野戦の時、徐州兵に矢を放って劉備軍に突撃させたのが、この計略だね」

「へぇ、計略ってのは色々とあるんだな」

「孫策様が知らなすぎるだけだと思いますが?」

 孫策が感心していると、隣に居る程普がボソリと呟いた。

 その呟きが聞こえたのか気まずいのか孫策は顔を背けた。

「……この様な席で言うのも何だけど、これからの行動について話すね」

 今の内に話しておこうと思い曹昂は口を開いた。

 それを聞いて、宴に参加している者達は顔を曹昂に向ける。

「行動と言っても、このまま陶謙が居る彭城へ向かうだけでは?」

「このまま西進しても城を落とすのに時間が掛かるだけだ。ならば、さっさと彭城を落し徐州を制圧するのが良かろう」

 朱霊と于禁の二人はこの城で少し休んだら、彭城へと向かうのだろうと思っていた。

「いや、その前に琅邪国に向かうよ」

「「「琅邪国?」」」

 曹昂の口から出た言葉に皆首を傾げた。

 東海郡を北上した所にあり、曹嵩が殺されるまで隠遁していた県がある郡国だ。

 彭城とは正反対の場所にある。

「何故、其処に?」

「琅邪国には味方に引き入れたい人が居てね。まぁ、敵にならなければ中立でも良いんだ」

 曹昂が味方に引き入れたい人物と聞いて、皆誰なのか気になり興味が湧いた。

「その人物とは?」

「開陽に駐屯している臧覇という人だよ」

 曹昂が人物名を言っても、皆は分からなかった。

「それはどの様な人物で?」

 于禁はどんな人物なのか分からず曹昂に訊ねた。

「陶謙に従っていた武将なんだけど、今では半独立状態で開陽に駐屯しているんだ」

「ほぅ、それで。何故、その者を味方に引き入れるのです?」

 朱霊は陶謙の部下が駐屯していると聞き、味方に引き入れる理由を訊ねた。

「このまま彭城に向かったら、陶謙が何か約束をして後背を突くようにするかもしれないからね。味方に引き入れて戦力にしようと思うんだ」

「成程。して、その臧覇はどれ程の兵力を持っているのです?」

 半独立状態とは言え、県一つに駐屯しているのだ。それ程の勢力は無いだろうと思い訊ねる于禁。

「琅邪国に放った者の報告だと三万ほど居るらしい」

 思ったよりも多い兵力なので、皆は曹昂が味方に引き入れたいという理由が分かった。

「彭城の陶謙の兵力は約二万。もし呼応したら敵は五万になりますな。流石に苦戦しますな」

「これは是非とも味方に引き入れたいですな」

「ああ、そうなんだ。どれだけの兵を連れて行くかは、明日決めるとして、今は宴を楽しもうか」

 曹昂が宴を楽しもうと言うと、皆も気持ちを切り替え宴を楽しんだ。

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