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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第五章

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援軍到来

「お~い。早く降伏しろよ。じゃないと、皆殺しにされるぞ」

「俺が居た県は降伏したから、かかあとガキは殺されなかったぞっ」

「俺達も同郷の奴等を殺したくないんだ。早く降伏しろっ」

 取慮県を降伏させた後、曹昂は降伏した兵達を使って降伏を促した。

 そのお陰なのか、それとも曹操は降伏しない城は皆殺しにするという噂が広まったお蔭か、包囲された城は次々と降伏していった。

 取慮県を降伏させた後、夏丘、僮侯、徐県、下相、曲陽、淮浦、淮陰の順で攻めて降伏させて城を守る守備兵と備蓄されている食糧の半分を奪った。

 下邳郡にある県の殆どを降伏させたので、曹昂は広陵郡へと進軍した。

 この郡に入ってもやる事は変わらず県城を包囲し降伏を促した。

 淩、東陽、平安、射陽の県を降伏させて、今塩瀆県を包囲して降伏を促している所であった。

 元守備兵達に包囲させて、降伏を促すように声を掛けさせるのを陣から見ている曹昂。

 すると、耳元で羽ばたく音が聞こえて来たので、曹昂が顔を向けると同時に肩に何かが乗った。

 肩に乗ったのは愛鳥の重明であった。

「お帰り。それで、城内はどうだった?」

 重明の腹を撫でつつ訊ねながら、もう片方の手を懐に入れて巻物を取り出した。

 其処には平仮名が書かれていた。

 重明は身を乗り出して巻物を嘴で貫かない様にしながら突っついた。

 へ、い、し、み、な、ど、う、よ、う、し、て、い、る。

「ふむ。成程。だったら、半時程すればこの城も落ちるか」

 また守備兵と食糧を奪えるなと喜ぶ曹昂。

「報告ありがとう。はい。御褒美」

 曹昂は巻物を懐に仕舞い、今度は小さな革袋を出した。

 その革袋の口を緩めて手を中に入れる。出て来た手には干し肉が入っていた。

 左程、塩を使わないで干したので長く保存は出来ないが、重明の御褒美としては十分であった。

 その干し肉を重明の口元に近付けると、口を大きく開けて挟み少しずつ飲み込んでいった。

「クルウゥゥ」

 まだ欲しそうな声を上げるので、曹昂は干し肉を上げた。

「殿。よろしいでしょうか?」

 重明の餌をやっていると、劉巴が話しかけて来た。

「問題無い。何かあった?」

「はっ。郯県にいる密偵からの報告で、幽州からの援軍が参ったそうです」

「援軍か。誰が来たのか分かる?」

「報告によりますと、劉備だそうです。義弟の関羽、張飛と参謀の盧植と共に五千の兵を率いて参ったそうです」

「へぇ、劉備が来たのか」

 劉巴の報告を聞きながら重明の腹を撫でる曹昂。

(彭城か郯県を包囲している時に来なくて良かった。もし、そういう状況になったら挟み撃ちになっていたかも知れないな)

 もし、そうなったら一度引いて態勢の立て直しだなと思いながら劉巴に話し掛ける曹昂。

「他の諸侯の動きは?」

「袁術、劉表の二人は軍を動かす気配は無いそうです。袁紹の方は幽州の劉虞に戦を仕掛けているそうです」

「ふむ。徐州よりも幽州を狙うか。じゃないと、南進も出来ないから仕方が無いか」

「はい。そうだと思います。そちらは良いとして問題は劉備ですが、どうします?」

「……我が軍の総兵力は?」

「はっ。援軍と降伏させた守備兵を組み込んだ雑軍と我が軍を合わせまして八万五千になります」

「……それだけの数なら、父上に援軍の要請は要らないな。敵の情報を出来るだけ入手する様に潜入している者達に伝えておいて」

 思ったよりも集まったなと思いつつ曹昂は命令を下した。

「承知しました」

 曹昂の命を伝えるべく劉巴は一礼し離れて行った。

 

 曹昂達が塩瀆県を包囲しているのと同じ頃。


 劉備は率いて来た援軍と共に郯県に入った。

 城内に入ると民達が歓声を上げて出迎えた。

 他の諸侯達は援軍を出さない中で、援軍を率いて来た劉備を称えた。

 城内に入った劉備は関羽、張飛、盧植を伴い陶謙の元に向かった。

 兵の案内で劉備達は謁見の間に入った。

 室内に入ると陶謙は席から立ち上がり、劉備の側に来た。

「玄徳殿。良く知らぬ儂の為に援軍に来て下さり感謝するぞ」

「いえ、これも劉虞様が許可してくれた事ですので、お気になさらずに」

 陶謙は劉備の手を握りながら、感謝の意を込めて深く頭を下げた。

 其処まで感謝をされて逆に劉備が恐縮していた。

「此処まで歓待して貰えたら、来た甲斐があったな。兄貴」

「そうだな」

 劉備の後ろにいた張飛と関羽は陶謙の歓待に嬉しそうであった。

 盧植も同じ気持ちだが、今は曹操軍を撃退するのが大事だと思い咳払いをして空気を変えた。

 その咳払いを聞いて劉備も嬉しい気持ちを脇に置いて陶謙に訊ねた。

「陶謙殿。我等は五千の兵を率いて参りました。陶謙殿の元にはどれだけの兵がおりますか?」

「うむ。歩兵が二万。騎兵が五千じゃ」

「合わせて三万ですか。曹操軍はどれ程になりますか?」

「報告では六万以上と聞いている」

「こちらの軍の二倍ですか。それと噂で聞いたのですが、曹操軍が通過した県は皆殺しにされているそうですが。本当ですか?」

「分からんが、そう言う噂が流れておる。泗水の河の流れを堰き止める程に死体がうず高く積まれたという噂も流れておる」

 陶謙の口から出た噂を聞いて劉備達は絶句する。

 河の流れを堰き止める程の大量の人々を殺した事に。

「ほ、本当なのですか?」

「分からん。偵察に兵を送っても、誰も帰ってこないのだ。だが、そういう噂が流れている以上、虐殺をしていると思った方が良いであろう」

 陶謙も其処まで残虐な事をされていると思うと目に涙を浮かべた。

「曹操殿の怒りがどれ程のものなのか分かりますな」

「だからって、何の関係もない奴等を皆殺しにする事はねえだろうっ」

 関羽は曹操の怒る姿を思い浮かべると、張飛は怒鳴った。

「抑えよ、張飛。今は曹操殿をどうやって撃退するかが先だ。陶謙殿。儂に一つ策がある」

 盧植が張飛を宥めつつ、陶謙に提案を出した。

「策とは?」

「この城に全ての戦力を集めるのは危険でしょう。ですので、この城ともう一つの城に兵を分けて掎角の勢となって曹操軍を牽制するのです」

 盧植の提案に陶謙達は感心な声を上げた。

「おお、それは素晴らしい」

「この城の近くで堅固な城と言えば、彭城ですな」

「其処であれば、この郯県からは左程離れていませんので大丈夫かと」

 盧植の提案に賛成した陶謙達。

 話し合いの結果。

 郯県には劉備、関羽、張飛と曹豹が一万二千の兵と共に、彭城には陶謙とその家臣達と盧植が一万八千の兵と共に詰める事となった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 家族を殺害された報復だというのを知らないで動いてたと思ったら承知の上の援軍だったのか。 これ、時代背景的に陶謙が一方的に責められる話だな。
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