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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第五章

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それぞれの年越し

 後数日で年を越せるという日。


 徐州琅邪国琅邪県。

 県城内にある大きな屋敷。

 其処は曹操の父の曹嵩と一族の者達が暮らしていた。

 年が明ければ、曹操が州牧をしている兗州の濮陽へと向かう予定であった。

 なので、年越しの準備をしつつ旅支度をしていた。

 使用人達が準備をしている中で屋敷の主人である曹嵩は庭を眺めながら日向ぼっこをしていた。

「ふふふ、まさかあの放蕩息子が州牧になるとはな。乱世とはいえ、思いもよらない事だ」

 曹嵩は故郷に居た頃の曹操の事を思い出しながら、驚くと共に誇らしい気持ちであった。

(曹操が何をしても義父上は笑って曹操の好きにさせろと言っていた。義父上の言う通りにしたが、此処まで立派になるとはな)

 伊達に大長秋に就いてはいなかったのだと改めて義父の曹騰の慧眼に頭が下がる思いであった曹嵩。

 庭で日に当たっていると、誰かが曹嵩の元にやって来た。

「嵩。今良いか?」

 そう声を掛けるのは年齢は曹嵩と同い年ぐらいであった。

 身の丈も七尺(約百六十センチ)と高くなく中肉中背なのであまり印象を抱かせる様に見えなかった。

「どうした? 従兄殿」

 曹嵩に声を掛けたのは義理の従兄である曹忠であった。

 この曹忠は曹嵩の義理の父である曹騰の兄である曹伯興の息子だ。

 年頃がそれほど変わらないので曹嵩とは親しくしている。

「うむ。徐州の州牧である陶謙を知っておるか?」

「いや、名前と少し前に息子と一戦したぐらいしか知らぬが。その者がどうした?」

「その陶謙から使者が来たのだ」

「使者?」

 曹嵩は何故陶謙から使者が来るのか分からず首を傾げる。

「使者が言うには、年越しを祝って宴を行うので是非郯県に来られたしと言っているのだ」

「うむ? 何故だ?」

 使者の言い分を聞いて曹嵩は意味が分からなかった。

 風の噂で曹操と戦い敗れたと聞いている曹嵩。

 その腹いせで兵を送り込んで人質にするとか皆殺しにするのであれば分かるが、どうして年越しを祝って宴を共にしようと言うのか分からなかった。

「どう思う?」

「何かの罠かもしれんぞ」

 曹嵩と曹忠の二人は相手が何が目的なのか分からないので、どうしたら良いのか分からず考えた結果、とりあえず断る事にした。

 やって来た使者には失礼が無い様にやんわりと断りの言葉を陶謙に伝える様に言伝をして帰って貰った。

 その数日後。

 今度は陶謙の息子の陶商がやってきた。

「かの有名な曹孟徳様のご尊父様であられる巨高様が来られるのを、父は首を長くして待っております。どうか、我が城へお越し下さい」

 凄い必死な表情で請願する陶商。

 その表情を見た事と、一度断ってまた断るのは流石に失礼に当たると思い曹嵩は予定を変更して、旅支度を速めて郯県へと向かう事にした。

 曹嵩が旅支度を進めている中で陶商は護衛として共に付いて来た兵の一人に何事か伝えた。

 それを聞いた兵は頷くと、一人だけ馬に乗り県を出て行った。


 数日後。

 

 琅邪県を出た兵は郯県城の謁見の間で陶謙と対面していた。

 陶謙はまだ、病み上がりなのか顔色が良いとは言えなかったが、それでも職務は行えるぐらいの気力はあるようだ。

「そうか。曹巨高様はこちらに来られるのか」

「はっ。旅支度に時間が掛かりますが。年越し前にはこちらに来られると思います」

「そうか。報告ご苦労。下がって良いぞ」

「はっ」

 報告に来た兵を労い下がらせると、陶謙は部屋の中に居る家臣達に告げる。

「皆の者。曹大人が来た時は王侯の礼を持って出迎えるのだぞ」

 陶謙がそう言うのを聞いて、曹豹が訊ねた。

「殿。何故、曹操の父にそのようなもてなしをするのです?」

 曹豹の疑問は室内に居る他の家臣達も同じ思いであった。

 そんな家臣達の顔を見て、陶謙は溜め息を吐いた。

「……仕方がなかろう。我が州の兵では曹操の兵には敵わん。それも分からず先に仕掛けたのは儂の不明であった。じゃが、和睦しても曹操が素直に応じるとは思わん。だから、此処は曹操の父君に仲介してもらい和睦させてもらうのだ」

 自慢の丹陽兵が曹操の青洲兵に負けた事で陶謙は曹操に対抗する気持ちを無くした。

 兵の質で負けている以上、此処は和睦して誼を通じるしかないと考える陶謙。

「申し訳ございません。これも私共の力不足故です」

「全ては儂の不明故に起こった事だ。気にする事ではない」

 曹豹は謝罪するが陶謙は手を振る。

「それよりも、今は曹操の父君を歓待する事に集中せよ。もし、この歓待が気に入らない事があれば、我等の首は城門に掛けられると思うが良い」

「「「はっ」」」

 陶謙が歓待に手を抜くなと厳命すると、家臣達も力強く頷いた。

 数日後。

 郯県城に曹嵩は一族を連れて辿り着いた。

 陶謙は城の外に出て直々に出迎えて、丁重なおもてなしをした。

 年が越えるまで城で過ごされた方が良いと陶謙が勧めると、曹嵩は篤い歓待に感謝しつつその言葉に従った。

 


 その数日後。

 濮陽に居る曹操の元にある報告が齎された。

「なに? 陶謙が父上と一族の者達を歓待している?」

 郯県に潜り込ませている『三毒』の者達からの報告に曹操は訝しんだ。

 敵と言える陶謙が曹嵩と一族の者達を歓待している理由が分からないからだ。

「何故、そんな事をしているのか分かるか?」

「はっ。私共が調べたところ、どうやら陶謙は殿と和睦をするつもりのようです。その手始めに曹嵩様と一族の方々を歓待し和睦の仲介を頼むようです」

「ほっ。そんな事で父上と我が一族を歓待していると? ご苦労な事だ」

 そんな事をしなくても和睦を申し出て賠償を払えば応じるつもりであった曹操。

「だが、向こうがこれ以上争うつもりは無いのであれば、こちらも矛を収めるのが道理か」

 向こうの考えが分かり曹操もこれ以上事を構えても無益と判断した。

「では、これで」

 報告した『三毒』の者は姿を消した。

「……さて、そろそろ広間に戻るか」

 報告を聞き終えた曹操は年越しの宴が行われている広間へと向かった。

本作に出て来る曹忠は曹伯興の子とします。

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