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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第五章

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素直に言えば良いのに

 徐州の攻撃が成功し曹操が濮陽に帰還したので、曹昂は自分が治める州に戻る事にした。

 曹操にもその事を告げると、許可を貰ったので曹昂は準備を整えた。


 数日後。


 曹昂達は帰る準備が出来たので、許県に帰ろうとしたのだが。

「……何で母上達が此処に?」

 準備をしていると、丁薔達がやって来た。

 そろそろ、子供が生まれそうな卞蓮と曹清と曹丕と乳母に抱かれた曹彰までいた。

 最初、見送りに来たのかと思ったが人数が多い事を疑問に思った曹昂。

 そう思い訊ねると、丁薔が笑顔を浮かべつつ答えた。

「蓮が故郷の沛郡譙県で子供を産みたいと言うから、私達も一緒に行くのよ」

「はぁ、そうですか」

 良く父上が許したなと思いながら、曹昂は訊ねた。

「あの、父上の許可は?」

「大丈夫。ちゃんと置き手紙を残してきたから」

「えっ?」

 丁薔がそう言うのを聞いて、耳を疑う曹昂。

「あの、母上」

「何かしら? 昂」

「こういう事は父上に言ってから行った方が良いと思います。ですので、今からでも父上に一言言うべきだと思います」

 提案というよりも流石にそれは礼儀的に駄目ではと思いやんわりと言う曹昂。

「ふふふ、良いのよ。今は新しく手に入れた側女の事で夢中だから」

 丁薔が笑顔でそう言うので曹昂は唾を飲み込んだ。

「側女? 誰の事ですか?」

「先の戦で手に入れたそうよ。環桃とかいう人を」

「…………ら、乱世ですから。父上の威武に屈したその環氏が生き残るために娘を献上したのでは? 献上された以上無体な事をすれば父上の名に傷がつきます」

 このご時世だ仕方がない事だと思い曹昂は曹操を弁護した。

 それを聞いて丁薔は笑みを深くした。

「つい最近、新しい側女を手に入れたのに?」

「えっ?」 

 初耳とばかりに目を剥く曹昂。

「徐州征伐に行く数日前に孫某とかいう者の娘を娶ったばかりだと言うのに。また、新しい側女を手に入れたのよ。どう思う? 昂」

「ち、父上は、その…………州牧になりましたので、自分の地位を守る為に誰かが、側女にするのは無理からぬことでは……?」

「私が怒っているのは、手に入れたその孫某の娘は人妻だったのに。無理矢理離縁させられて、それで旦那様に献上されたとの事。今度は未亡人であった環桃を側女にした事を怒っているの。私も年齢的にお(しとね)すべりしなければならないのは分かるわ。蓮も身籠もっているから側女が欲しいのも分かるけど、だからと言って人妻だった女性を側女にするなんて、旦那様はどういう心積もりなのか分からないわっ」

 心の中にある不満を吐き出す丁薔。

 この時代の女性はある程度の年齢になると閨房生活から退くのが常だった。

 これを褥すべりと言う。

 これはこの時代には高齢出産する医学的技術が無い事に加えて、家を発展させる為に子を多く成す事が大事という儒教の考えが浸透していたからだ。だから、新しく側女になった者達は子を成すというよりも曹操の趣味で側女になったのではと思っている丁薔。

 新しく側女になった女性達が人妻であったと聞いて曹昂は何も言えなかった。

(そう言えば、曹操の妻になった人達の殆どは人妻だったって話を聞いた事があるな)

 丁薔の話を聞いてそう思った曹昂。

「姉さん。気持ちは分かりますが。気を静めて」

 気が高ぶっている丁薔を宥める卞蓮。

「……そうね。という訳だから、暫く譙県に居るわ。子供が出来て落ち着いたら、貴方の許県に行くわ」

「は、はい。分かりました」

「それと、暫くの間、清と丕の二人を預けます。彰はこっちで預かるわ」

「はぁ、別に構いませんが」

 曹昂は二人を見ると構わないのか、二人は頷いた。

「くれぐれも、曹清が習い事を怠けない様にしなさいね」

「はい」

 丁薔がそう言うが、僕が強く言っても言う事を聞くか疑問だと思う曹昂。

 そんな事があり、少し出立に時間が掛かったが、曹昂達は許県に向かい、其処から丁薔達は譙県へと向かった。


 数日後。


 曹昂の元に曹操から手紙が届いた。

 手紙には洋葱のスープを作ったが、曹昂が作った物に比べると味がイマイチだとか。曹清はちゃんと習い事はしているか?とか。曹丕と曹彰は元気かとか。色々と書かれていた。

 近況報告かと思いながら見ていると最後の一文を見た曹昂は呆れていた。

『そろそろ、蓮の出産が近いだろう。だが、出産とは命懸けで行う事だ。薔も何度もお産を経験しているが、こういう事は熟練した者にやらせるのが一番だ。とは言え、お前の元に居たら、お前の気が休まらないだろう。なので、薔をこっちに戻って来る様にするべきではないか?』

 その一文を読んで曹昂は溜め息を吐いた。

 この一文で何が言いたいのかと言うと、暗に丁薔に戻って来いと言っているのだ。

「……素直に戻って来いって手紙を送れば良いのに。いや、直接送ったら無視されるかもしれないと思って、僕に仲介させるつもりか?」

 父も存外意地っ張りだと思う曹昂。

「……此処は素直に謝ってと送ろう」

 曹昂は手紙に大きく『自分で戻って来る様にと文を送って下さい』と書いて曹操に送った。

 それから数日後。

 曹昂の元に譙県から手紙が届いた。

 卞蓮が男児を出産。母子共に健康と書かれていた。

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