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202/1008

出来たお祝い

 溜め池から戻って来た曹昂達は城に着くと、その場で解散した。

(後は浮かぶ為の動力機関が出来るのを待つだけだな。そして舟に付けて浮かばせれば、飛行船の完成だな)

 其処まで考えていると、曹昂の腹の虫が鳴きだした。

 そう言えば、昼を食べていなかった事を思い出した曹昂。

(何か肉が食べたいな。でも、ステーキとか焼肉という気分じゃないんだよな。う~ん……ああ、あれがあったな)

 何を作るのか決めた曹昂は厨房へ向かった。


 曹昂は厨房に入ると厨房長に一言断りを入れて厨房の一角を借りた。

「さて、作るか」

 そう言って曹昂が用意したのは豚肉の塊。牛肉の塊。葱。大蒜。生姜。卵。大根であった。

 この大根は外側の部分は白いが中は赤いという紅丸大根であった。

 そう言って曹昂は、皮を剥いて生姜と大蒜を擦り下ろした。

 葱は細かく切った。そして、今度は両手に包丁を持って、豚肉と牛肉の塊を叩き切った。

 両手に持った包丁をリズミカルに叩く様に動かして、塊肉を叩き切っていく。

 最初はさほど進まなかった包丁も少しずつ進んで行き、途中から塊肉が細切れになっていった。

 その細切れ肉をもっと細かくする為に切っていく曹昂。

(う、腕が痛い。流石に一から挽き肉を作るのは大変だ)

 誰かにやらせるかと考えたが、誰も作った事がない料理だ。何処まで細かくしていけば良いのか分からないと思い曹昂がするしかなかった。

 そうした苦労をしながら、肉に粘りが出てくると曹昂は切るのを止めて、細かくされた肉を見る。

「……良し。これぐらいなら良いな」

 曹昂はそう言って合い挽きの肉を鉢の中に入れた。

 其処に塩をして更に捏ねる。

 捏ねて捏ねて粘りを出す。

 厨房に居る者達は曹昂がしている事を不思議そうに見ていた。

 曹昂は捏ねた肉を手で持って、傾けると肉は粘りがあるからか中々落ちなかった。少しすると、手から離れて鉢の中に落ちた。

 それで十分と思ったのか卵、擦り下ろした生姜と大蒜を入れて更に混ぜる。

 白身の水分が肉の全体に回り、先程までと比べ水分が出ると曹昂は混ぜるのを止めて鉢に布を掛けた。

 手に着いている肉を拭い落した。

「ふぅ。此処で肉を休ませて。次は」

 曹昂は次に大根を擦り下ろした。

 曹昂の記憶の中にある白く半透明な色合いではなく少し赤みが混じった大根の擦り下ろしが出来た。

 その擦り下ろした大根の水分を手で切って、別の鉢に入れる。

(本当は肉を冷蔵庫とかに入れて休ませた方が良いんだけど。此処の氷室って、出入りするのが面倒なんだよな)

 それに早く食べたいという気持ちがあったので、曹昂は合い挽き肉が入っている鉢に掛かっている布を取り中に入っている肉を取りキャッチボールをする様に手の間を行き来した。

 有る程度したら、今度は手の中にある肉を楕円形に形作る。

 それを俎板の上に置いていく。

 鉢の中にある合い挽き肉を全て楕円形に作り終えると、熱した片手鍋に入れて行く。

 熱した片手鍋の熱で肉は焼けて行く。

 大蒜と生姜と葱を入れているからか、厨房内は良い匂いに包まれた。

 厨房に居る者達は生唾を飲み込んだ。

 その音があまりに大きいので曹昂の耳にハッキリと聞こえた。

(……残りは上げた方が良いかな?)

 そう思いながら木べらで楕円形にした合い挽き肉をひっくり返した。

 ひっくり返した面は綺麗な焼き色が付いていた。

 反対の面も焼いていると、途中から柄杓で水を掬い焼いている肉に掛からない様に片手鍋の中に入れる。

 熱せられた片手鍋に水が入ると直ぐに沸騰しだした。

 曹昂は蓋をして暫し放っておいた。

 その間に別の片手鍋を熱して卵を入れた。

 片手鍋に落ちた卵は白身の部分から徐々に火が通って行く。曹昂は白身の部分に火が入り、黄身が半熟の目玉焼きになるとへらで取った。

 目玉焼きを鍋から上げると、蓋をしている鍋の蓋を取った。

 すると、鍋の中に充満していた匂いが周囲に漂った。

 曹昂はその香しい匂いを嗅ぎながら、焼いている肉をへらで押した。

 押された肉は透明な肉汁を溢れ出した。

「良し。出来た」

 曹昂はへらで楕円形に焼いた肉を皿に盛る。

 二つほど皿に盛り、一つには先程下ろした大根を乗せて、もう一つは目玉焼きを乗せた。

 そして、肉を焼いた片手鍋に酒を少量注ぎ再び熱した。

 沸騰させて酒精(アルコール)を飛ばすと、其処に豆醤を入れて味を調えて、楕円形に焼いた肉に掛けた。

「これで良し」

 曹昂はそう言って皿と箸を持って厨房を出て行こうとしたら。

「若君。少々お待ちを」

「なに?」

「その料理は何と言うのですか?」

 厨房長が皿を指差して訊ねた。

「これ。これは……」

 ハンバーグと言っても良いのだろうかと考えたが、今の時代にそんな都市など存在しないから言っても良いのだろうか?と考えた曹昂。

(確かハンバーグの原型に何とかステーキって名前があったな? ええっと、確か……)

「……焼きタルタルステーキ?」

「焼きたるたるすてーき?」

 曹昂が疑問形で教えると、厨房長も首を傾げながらもオウム返しにした。

「残りは好きにして良いから」

 そう言って曹昂は今度から厨房を出て行った。


 厨房を出た曹昂は食堂に入った。

「では、いただきますか」

 曹昂はそう言って箸でハンバーグへ伸ばす。

 まず、最初に箸を付けたのは大根おろしを乗せた方であった。

 一口分に切り分けて大根おろしをたっぷりと乗せて口の中に入れた。

「……うん。久しぶりに食べたけど、大根の辛みで肉の脂っぽさが消えて良いな」

 咀嚼する度に肉汁が口の中に溢れだす。

 それだけであれば口の中を脂でくどくさせるが、其処を大根おろしでサッパリとする。

 掛けたソースに程良い塩味があるので、絞ってもまだ水分がある大根おろしの味で飽きさせる事が無い。

「さて、もう一つの方は」

 曹昂は目玉焼きを乗せた方に箸を向ける。

 まずは箸で黄身を割った。

 すると、其処からまだ火が通っていない黄身が流れ出す。

 流れ出た黄身がハンバーグに掛かると、其処の部分を切り取り口の中に入れた。

「……おぅふ、こっちはサッパリじゃなくて濃厚だ。でも、美味しいな」

 目玉焼きを乗せた方は大根おろしとは違い、濃厚であった。

 肉の脂。黄身のトロリとした柔らかい味。肉を焼いた鍋で作ったソースの味。

 それらが混じり合い更に美味しい味へと変えていく。

「う~ん。良い物を作ったな。偶に作ろうかな~」

 曹昂がハンバーグを味わっていると。

「ああ、居た」

「曹昂様。こちらに居られましたか」

 食堂で食べている曹昂に声を掛けたのは董白と袁玉の二人であった。

「ん? どうかしたの?」

「どうかしたって、お前が戻って来て、何処に行ったのか分からないから探していたんだぞ」

「せめて、誰かに戻って来た事を報告しても良いと思います」

「ああ、ごめん」

 董白達が戻って来た連絡をしない事に非難してきたので、曹昂は素直に謝る。

「……何か良い匂いがするけど、何を食っているんだ?」

「確かに」

 董白が鼻を鳴らして匂いを嗅いでいると袁玉も顔を動かして何処から漂うのか探した。

「ああ、ごめん。昼食べ損ねたから今、こうして食べているんだ」

「何を食っているんだ?」

「……焼きタルタルステーキ?」

「「やきたるたるステーキ?」」

 二人は首を傾げるので、曹昂は自分が作った物を食べさせた。

 その際、箸が一膳しかなかったので、曹昂が食べさせた。

 二人共、恥ずかしくて反対したが曹昂が気にしないと言うのと、曹昂が食べている物からあまりに美味しい匂いがするので二人は負けて曹昂の手を借りて食べる事になった。

 その時、曹昂はハンバーグを二人に食べさせるのを見て、小鳥に餌を与えている様な気分になった。そう仲良く食事をしていると、貂蝉と練師もやって来た。

 二人も曹昂を探している様であった。

 そして、董白達が美味しそうな物を食べているのを見て羨ましそうな顔をしているので、曹昂は二人にも食べさせた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公はえらく簡単に考えてるけど、熱気球を飛行船化するのは現代のテクノロジーでもかなりハードル高そう。 [一言] さすがにこの飛行船関係はちょっと考えるだけで「無理じゃね?」と思ってし…
[一言]  たるたる?樽?
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