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結構な大物が来た

 劉先が陣地に来てから数日後。


 曹昂の陣地に劉先がやって来た。

 陣地に来るなり、曹昂に会いたいと言うのでこの前と同じく甘寧と劉巴を伴って来たが、天幕の中に入ると見慣れない男性が居た。

 その者は年齢は三十近く、精悍な顔立ちで顎髭も口髭も生やしていなかった。

 後頭部で結ばれた髷。身長は八尺(約百八十センチ)はあった。

 その身長に見合った大柄でがっしりとした身体をしており、身に纏っている鎧も修繕した後が幾つもあった。

 曹昂はこの歴戦の武将は誰だろう?と思いながら二人の脇を通り床几に座る。

 甘寧達も曹昂の傍に立った。

「まずは、先触れも無しに訪ねて来た事をお詫びいたします」

 劉先がそう言って頭を下げるとお供の武将も同じように頭を下げた。

「お気になさらずに。それよりも、始宗殿。こちらの方は?」

 曹昂は失礼だと思いながらもジロジロと供の男を見た。

「ご紹介が遅れました。この者は劉表様配下の武将で文聘と申します」

 劉先が手で示しながら紹介された文聘は頭を下げた。

「お初にお目に掛かります。私は文聘。字を仲業と申します」

 名乗り終えて頭を上げる文聘。その際、曹昂達をジッと見た。

 値踏みとまでは行かないが、何かを探っている様な目付きであった。

 甘寧は何か言いたそうな顔をしていたが、劉巴が手で宥めた。

(文聘か。確か劉表配下の大将の一人だったな)

 前世の記憶の中では劉表の信任が厚く荊州北部の守備を任されている人物の筈が目の前に居るので曹昂は驚いていた。

 文聘が名乗っても曹昂が話をしないので、どうかしたのか?と不審な目で見だした。

「……オホン。失礼しました。僕は曹操孟徳の息子の曹昂と申します。以後よろしくお願いします」

 文聘達が不審そうに見て来るので、咳払いをして名乗る曹昂。

「それで、始宗殿。仲業殿。御二人が此処に来たという事は、僕と一緒に何かをするという事でしょうか?」

「ええ、その通りです」

 曹昂の問いに劉先はすんなりと認めた。

「劉表様に曹昂様の事を話しますと、少し疑いましたが信じて貰えました。それで曹昂殿と我等と合同で長沙郡の太守蘇代の討伐をする様に命じられました」

「そうですか。という事は、仲業殿が軍の大将という事でしょうか?」

「いえ、軍の大将は江夏郡の太守の黄祖です。仲業殿は別動隊で私は南部の出身という事で道案内として行動を共にしているのです」

「成程。そういう訳でしたか。それで、どのような作戦で蘇代を討つのですか?」

「事前の作戦通りなら、後四日後に黄祖が下雋の県に着きます。其処で蘇代を挑発して郡政を行っている臨湘を出て黄祖の下に向かわせます。そして、黄祖と蘇代が戦っている時に背後から蘇代を強襲して挟撃するという策になっております」

 劉先達が立てた作戦を聞いて、曹昂は少し考えた。

「……仲業殿はどれぐらいの兵を率いて来たのです?」

 曹昂が訊ねると、文聘は直ぐに答えないで劉先を見る。

 答えて良いのかどうかの確認の為で見たようだ。

 劉先は無言で頷くと、文聘は心得たとばかりに頷き返した。

「歩兵四千。騎兵千。弓兵二千。合計七千になります」

 文聘が率いる兵の数を聞いて、やっぱり騎兵が少ないなと思ったが、土地柄だからか仕方ないと思う事にした曹昂。

 蘇代がどれだけ兵を抱えているか分からないが、七千では挟撃するには少々足りないと思われた。

 だが、其処に曹昂率いる一万三千を加えたら二万になる。これだけの数であれば何の問題もないと言えた。

(う~ん。問題は上手く挟撃が出来るかどうかだよな。この時代の連絡手段が伝令を送る方法しかないからな。それで状況が刻一刻と変わる戦場に対応できるかな)

 挟撃する為に戦場に向かったが、その戦場には味方の姿が無く敵しか居なかったという事にならないか心配であった曹昂。

(……ああ、そうだ。別に蘇代を挟撃する為に戦場に行かなくても良いんだよな)

 挟撃と考えていると、ある事を思いついた曹昂。

「そうだ。これでいこう」

 曹昂は名案とばかりに指を鳴らした。

「何か良い策があるのですか?」

 これ以上、良い策があるのだろうかという顔をする劉先。

「いえ、最終的に挟撃する事には変わりありませんが、少しだけ修正致しましょう」

「修正?」

「どのように変えるのですか?」

 劉先達はどんな策なのか興味が湧いた顔をした。

 曹昂は考えた策を話した。

 結果。その策は採用されて、その策で行く事となった。

 劉先は直ぐに黄祖へ伝令を送った。

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