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さて、どうするべきか

 荊州にて協力者と言える桓階を味方に付ける事が出来て喜ぶ曹昂。

 桓階と情報交換する為、臨湘にも店を置く事にした。

 その店に関しては桓階に任せる事にした。

 

 数日後。


 店の事は桓階に任せ、曹昂達は次の目的地である零陵郡へと向かう。

 曹昂は桓階と別れの挨拶をする為に、彼の下に向かった。

 曹昂が役所を訪ねて、役人に桓階が何処に居るのか訊ねると。

 役人は自室で仕事をしていると教えてくれた。ついでとばかりに案内もしてくれると言うので、曹昂はその言葉に甘えて役人に案内して貰った。

 部屋に入ると、桓階は竹簡の山に上から目を通していき、傍に居る役人に指示を出していた。

「伯序様。お客様が参りました」

「客? どなただ?」

 役人が声を掛けても桓階は手を止めず仕事をした。

「昂という者です。こちらに参っておりますが」

 役人が名前を言うと、桓階の手がピタリと止まる。

「おお、そうか。此処にお通ししろ」

「もう来ています」

 曹昂が声を掛けると桓階は席を立った。

「おお、これはこれは。わざわざ出立する前に来ていただきありがとうございます」

「お世話になったのでお礼をしに参りました」

 曹昂達が挨拶を交わしていると案内してくれた役人が「では、これで」と一言言って部屋から出て行った。

 それを確認した桓階は膝をついた。

「人をやってくれれば見送りに参りましたのに」

「いや、そこまでしたら変に思われると思ったので、こうして訪ねたのです」

「成程。流石は曹孟徳の愛息子ですな。素晴らしい見識をお持ちだ」

 桓階は曹昂の見識を称賛するが、当の本人は別にどうと思っていない顔をしていた。

「それよりもこれからの事だけど」

「はっ。既に曹昂様の配下の者が店の経営をする様にしております。その者から連絡を取れる様に手筈を整えています。もし、何かしたい事があれば連絡を送ります」

「お願いします」

 曹昂は内心で別に『三毒』は僕の配下ではないのだけどなと思いながら確認事項を再確認した。

 それで後は挨拶をして別れるだけだと思われたが。

「曹昂様はこれからどちらに向かうので?」

「そうだな。桂陽に向かおうかと思っているけど」

 曹昂がこれからの経路を教えると桓階は顔を輝かせた。

「いやいや、桂陽は人こそ多いですが大した物も勧誘する人材もおりません。それでしたら零陵へ向かうべきです」

「零陵?」

「はい。其処には私の友人が役人をしております。その者を訪ねるのはどうでしょうか?」

「ふむ。その者の名は?」

「劉先。字を始宗という者です。博学にして強記。故実に通じた俊才です」

「そうか」

 曹昂は桓階が会うように勧める所を見ると、それだけ桂陽は何も無いのか。それとも劉先は優れた人材なのだろうと思った。

 此処はその言葉に従うべきか。それとも最初の計画通りの道で行くか考えるべきだと判断した。


 桓階が会うように勧めた所を考え、曹昂は桂陽へ向かわず零陵に向かう事に決めた。

 その事を貂蝉達に話すと。

「お前が決めたんならそれで良いんじゃねえの」

「曹昂様が決めた事なら、私はそれに従います」

「わ、私も従います」

「「「我等は護衛ですので。若君が決めた事に従います」」」

 と皆がそう言うので、曹昂達は零陵郡へと向かう事が決まった。

 臨湘の外まで見送りにきた桓階に見送られ、曹昂達は臨湘を後にした。


 数日後。


 臨湘を発った曹昂達は其処から更に歩いて長沙郡を出た。

 予定通り桂陽郡に向かわず、零陵郡へと向かった。

 零陵郡の郡政は泉陵で行われているそうだ。ついでに桓階が会うようにと勧めた劉先も此処で暮らしていると聞いたので曹昂達は向かった。

 曹昂達は桓階から荊州内では問題なく使える身分証を貰ったので、それを城門を守っている衛兵に見せるとすんなりと市内へと入る事が出来た。

 市内に入ると、人が淡々と歩いているのが見えた。

 皆、顔色は明るくも無いが暗くも無い。兵士達も巡回をしているが、長沙郡で見た兵達に比べるとやる気が無い様子であった。

「市場は活気も無いな」

「商品を売っている人達の声もイマイチ張りが有りませんね」

「皆さん顔は暗くないけど、疲れた様な顔をしていますね」

 曹昂達は歩きながら通りかかる人達や市場を覗いたが、どうにも活気が無いと思えた。

 どうして、活気が無いのか気になったので曹昂は劉先の家に向かう途中で歩いている人達に訊ね回った。

 そうして話を聞き回った結果。

 どうやら、劉表の権力が届かない事を良い事に零陵郡の太守は好き勝手な事をしていた。

 しかも、兵士達の給料も満足に払っていないそうだ。

 それで兵士達は仕事をする気が無いのだと分かった曹昂達。

「よく反乱が起きないですね?」

 貂蝉は不思議に思って独白した。

 それを訊いて他の者達も同意とばかりに頷いた。

「・・・・・・恐らくだけど、そういう反乱を起こす指導者が居ないんだと思うよ」

 反乱と一言に言っても、扇動する者が他の者達と徒党を組むことで起こす事が出来るものだ。

 肝心の扇動する者が居なければ、どんなに苦しい(まつりごと)が行われていても誰も反乱をする者など居ない。

 そういう意味では此処零陵郡はよく扇動する者が居ないなと思う曹昂。

「そんな事よりもよ。早く劉先って奴に会わないか。流石にヘトヘトだぜ」

 董白がそう言う様に、曹昂達の顔には疲労の色が出ていた。

「そうだね。早く行こうか」

 零陵郡は曹操の領土でも何でもない。そんな所であれこれしようとしても徒労になるのが見えていた。

 なので、曹昂は早く劉先に会って、零陵郡を出て次の武陵郡へと向かおうと決めた。

 零陵郡で商売をしないのは市場に活気が無いのに商売をしても売り上げになるかどうかも分からなかったからだ。

 

 人に劉先への家の道を訪ねながら屋敷へと向かった。

 屋敷の前に着くと、使用人が丁度門前を掃除していた。

「失礼。此処は始宗殿の屋敷ですか?」

「はい。その通りですが。貴方は?」

「失礼。桓階殿の知人の者です。私が零陵郡を通るので桓階殿が此処に居る始宗殿に会うようにと勧められたので、会いに来たのです」

 曹昂はそう言って桓階が渡してくれた手紙を出した。

 その手紙を受け取った使用人は手紙を見回して桓階の名前を見つけると、直ぐに桓階の知人だと分かった。

「これは伯序様の知人の方でしたか。失礼いたしました」

 使用人は頭を下げる。そして顔を上げると申し訳なさそうな顔をした。

「大変申し訳ないのですが。我が主は妹君の嫁ぎ先に行きましたので、暫くは戻らないのです」

「何だってっ⁉」

 会うように勧められた人物が出掛けていると知り曹昂はどっと疲れが出たのであった。


 使用人の口から暫く帰って来ないと言われて、曹昂は重いを溜め息を吐いた。

 いないのは仕方が無いと思い、曹昂は気持ちを切り替えた。

「そうでしたか。では、縁が有れば寄らして貰います」

「はっ。主人が戻ったらお伝えします」

 曹昂が一礼すると、使用人も返礼した。

 曹昂は顔を上げるとその場を離れた。


 劉先の屋敷から離れた曹昂達は大通りを歩いていた。

「ああ、ついてねえな。こうして訪ねに来たってのに。会いたい本人が出掛けているとか」

「そうね。これは仕方がないわね」

 董白が愚痴ると、貂蝉も同意とばかりに答えた。

 練師も口にこそ出さないが、同じ思いなのか頷いていた。

 曹昂は何とも言えない顔をしながら、貂蝉達の方に顔を向けた。

「会えなかったのは縁が無かったって事だから仕方がないよ」

「それで、これからどうするんだ?」

「荊州南部四郡に関しては桓階に任せてけばいいだろうね。数日したら次の武陵郡に向かおうか」

「賛成だな」

「じゃあ、そういう事……っ⁉」

 正面を見ないで歩いていた所為か曹昂は何かにぶつかってしまった。

 いきなりの事だったので、ふんばる事が出来ず尻餅をついてしまった。

「った~」

「大丈夫ですかっ」

 尻を強く打った曹昂は痛みで顔を顰めながら尻に着いた土を落した。

 貂蝉は曹昂の身体を心配そうに触る。

「大丈夫だよ。それよりも」

 貂蝉を安心させて曹昂は前を見た。

 すると、猪の顔が見えた。

「うわっ!」

 いきなり猪の顔を見たので驚く曹昂。

 驚きはするが、先程の様に尻餅はつく事はしなかった。

 それよりも、曹昂はどうして此処に猪が居るんだ?と不思議に思っていると。

「おお、悪いな。丁度、獲物のこいつを抱えていたんで見えなかったんだ」

 猪から声が聞こえて来た。

 そんな馬鹿なと曹昂は思ったが、よく見ると猪は誰かに担がれている様であった。

 曹昂が顔を上げると、其処には二十代後半ぐらいの男性が居た。

 身長は八尺(約180センチ)ほどで、豊かだが整えていない顎髭を生やしており立派な体格をしていた。

 大きな目に豊かだが整えていない顎髭を生やし頑丈で日に焼けた顔をしているので、曹昂は一瞬山賊かと思ってしまった。

「こちらこそ。前を見て歩いていなかったのですいませんでした」

 幾らなんでも、城内に山賊は居ないだろうと思い直して、曹昂はとりあえずぶつかった事を謝った。

「こっちも見えなかったからな。お互い様だ」

 男はぶつかった事を気にした様子はなく気にしなくて良いと手を振る。

「じゃあ、これで」

 男はそう言って市場へと向かった。

 右肩には大きい猪を担いでいた。左腕には大きな斧を持っていた。

 見た所、斧は数十斤はありそうであった。

 猪も六尺(約百三十センチ)は有ると思われた。

 首の右側に傷があるので、どうやら其処に斧を叩きつけたのだと思われた。

「う~ん。肉屋さんかな? それにしてもあんなに大きな猪を担ぐとは結構な膂力だな」

 あの男の人は誰だろうと思いながらその背を見ていると、

 道を歩いていた人達は男が討ち取った猪を感心しながら見ていた。

「おお、凄いな」

「流石は邢さん所の息子だ」

 男を見ていた人の口から出た名前を聞いた曹昂は思わず耳を疑った。

「ケイさん?」

 その名前を聞いて曹昂は思わず、頭の中である人物が思い浮かんだ。

(そう言えば邢道栄って零陵郡の太守の配下だったな。もしかして、さっきの人ってその邢道栄?)

 似た名前なので思わずそう思ったが、曹昂はまさかなと思い首を振る。

 恐らく偶然だろうと思いそれ以上は考えない事にした。

 余談だが、猪を狩った男は曹昂が思っている通りに邢道栄であった。

 その彼がどうして猪を狩ったのかと言うと、実家が肉屋なので売る為に猪を狩ったのだ。 


 猪を狩った人にぶつかった後は曹昂達は宿屋に入った。

 それから曹昂達は各々休息を取る事にした。

 数日後。

 曹昂達は泉陵を発った。

 そのまま北上して武陵郡へ向かった。

 泉陵を発ち北上していると烝陽県に辿り着いた。

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[一言]  人材登用を頼まれたの忘れてる?
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