これで安心
李典の部屋を後にした劉馥は、その足で張遼の部屋に向かった。
部屋に入ると、張遼は酒を飲んでいた。
「劉刺史。どうされた?」
「いや、少しお話をしようと思ってな」
張遼の膳には、盃の他には皿が乗っているが、盛られているのは干し魚の様であった。
実は張遼は甘い物よりも塩辛い物の方を好んでいた。
「話か。此度の丞相の命についてか」
張遼の問いに、劉馥は頷いた。
そして、李典達と話した事を伝えた。
「それは・・・二人は何か言っていたか?」
張遼は気になり訊ねた。
曹操に仕えて直ぐに、李典が戦って破った李乾の親族だと知った。
直接討ち取った訳ではないのだが、仇と言われても別段変とは言えなかった。
だが、同じ主に仕えているからなのか、それとも李典は理性的なのか突っかかられる事も、感情に任せて襲われるという事は無かった。
関係の改善を求めるのは無理と思い、出来るだけ近づく事はしないようにしていた。
楽進の方は一度揉めてから、そのまま仲直りする機会もなく、今に至っていた。
だから、二人は公私を分ける事が出来るのか気になっていた。
「安心されるがいい。二人は張遼殿と協力すると申していたぞ」
「そうか。ならば、一安心だな」
張遼は安堵の息を吐いた。
「お気遣いに感謝申し上げる」
張遼は深々と頭を下げると、劉馥は手を振った。
「なんの、これも戦に勝つ為にしただからな。これで、協力して孫権と戦えるであろう」
「はい。どうか、お任せを」
張遼が力強く返事をするのを聞いて、劉馥も満足そうに頷き部屋を後にした。
翌日。
劉馥は配下の将を一人呼んだ。
名を朱光と言い、劉馥が合肥に赴任した頃に仕えた部将であった。
廬江郡出身という事で、廬江郡の地理に詳しいと思い、侵攻の部隊を任せる事にした。
参謀に一人と兵を二千ほど与えて、廬江郡を攻め込むように命じた。
「とりあえずは・・・・・・皖県を拠点にし、其処で守りを固めるのだ。もし、孫権が攻め込んできた場合、援軍は送るからそれまで死守するのだぞ」
「はっ」
劉馥の命を聞いて朱光は頷き、直ぐに準備に取り掛かった。
兵達が出陣の準備に走り回っている姿を、張遼は見ていた。
(廬江郡に攻め込めば、孫権は間違いなく兵を出すであろう。そうなった場合、援軍はどの程度出すべきか)
合肥に駐屯している兵数から、どれだけ出すべきか考えていると、背後から足音が聞こえて来た。
「張将軍。少しよろしいか?」
張遼に声を掛けて来たのは楽進であった。
「楽将軍。どうされた?」
「いや、此度の戦について少し話をしようと思ってな」
楽進がそう言うのを聞いた張遼は、内心で劉馥が話していた通りだなと思った。
「承知した。此処では何なので、別室で」
「うむ」
楽進は張遼と共に、別室に赴こうとしてる所を、偶々通りかかった劉馥が見た。
それを見て、張遼達は問題ないと判断した。
(後は李典の方だけか。もう一度話をするか? いや、此処は少し様子を見た方が良いな)
李典は時間が掛るだろうと思った劉馥は様子を見守る事にした。




