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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第二十章

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此処はこうするか

 郡境に文聘軍が居ないと聞いて、劉備達は思わず聞き直す程の衝撃を受けていた。

 その後、もっと詳しく調べさせたが郡境の何処にも兵が居ないという報告しか齎されなかった。

 劉備達は直ぐに家臣達を集めた。

「既に報告は聞いておるだろう。郡境に居るはずの文聘軍が居ないそうだ」

 劉備が事実の確認の為にそう述べるのと、家臣達は唸りだした。

 徐福と馬順に至っては、何故こんな事が起こっているのか分からないという顔をしていた。

「兄者。どうするんだ?」

 張飛が徐福達が悩んでいるのを見て、劉備に訊ねた。

 これから、どうするかを劉備に決めて貰い行動した方が良いと思い訊ねた様だ。

 劉備もどうしたものかと考えていた。

 暫し、静かになった後、劉備が口を開いた。

「・・・・・・このままこの地に留まっていれば、江夏郡の太守である厳幹が混乱を治めて、兵を出して襲撃してくるかもしれん。郡境に兵が居ないのであれば、此処は南陽郡に入り、どんな状況なのか調べてから、どう行動するか決めようぞ」

 劉備は南陽郡に入る事を決断した。

 徐福達もこのままこの場に留まっても、時と兵糧を無駄に消費するだけだと思い劉備の決断に従った。

 そして、劉備率いる軍勢は郡境に向った。

 郡境を越える前に、再度兵を放ち調べたが伏兵を見つける事が出来なかった。

 その報告を聞いて劉備は郡境を越えて、南陽郡に入った。


 翌日。


 南陽郡に入った劉備軍は、その場に留まり兵を放とうとしたが、其処に馬に跨る兵達が近づいてきた。

 その兵達を見て、劉備軍の兵達は迎撃の準備をしつつ、劉備に騎兵が来たことを知らせる為に、その元に走った。

 劉備軍の兵達が迎撃の準備を整え終えた頃には、近づいてきた騎兵達はゆっくりと速度を落とし少し離れた所で止まった。

 その騎兵達の一人が手には旗を持っており、旗には侯という字が描かれていた。

「劉皇叔はおられるか⁉ 我らは侯音様配下の者にございます。我が主より言伝を伝えたいと思い参りましたっ」

 騎兵達の一人が大声で伝えた。

 程なく、呼びに来た兵と共に廖化が来た。

「侯音殿の配下の者と聞いたが。その侯音殿は何処におられるのだ?」

「その事を詳しくお話いたしますので、何卒皇叔の元にお連れして頂きたい」

「・・・・・・分かった。お主だけついてこい」

「はっ」

 廖化は話を聞かねば、何も分からないと思いとりあえず話していた兵を連れて行く事にした。

 兵は感謝しつつ、馬から降りた。

 そして、廖化は兵を連れて、劉備達が居る元に連れて行った。


 少し歩くと、劉備と他の家臣達が勢ぞろいしている所に来た。

 廖化は自分の家臣達の列に加わり、兵はその場に跪いた。

「わたしは侯音様配下の者にございます。劉皇叔にお会いできてうれしく思います」

「挨拶は良い。それよりも、馬順から聞いている。お主の主である侯音は衛開という者と協力し、この地の太守である東里袞に反乱を起こしたそうだな」

「はっ。その通りにございます。そして、其処から問題が起こったのです」

 その者が顔を上げると、自分がこうして出迎える事になった経緯を話し出した。

 反乱は成功したものの、捕まえた東里袞が脱走した。

 手引きしたのは侯音の部下であった。

 東里袞を捕縛する際、東里袞の部下達と争い部下達が全員戦死した。

 その戦死した部下の一人に親友が居た。

 その親友から、東里袞の事を聞いており尊敬できる人物と思い、このままにしてはいけないと思い東里袞が脱走した。

 東里袞はその足で、江夏郡に居る文聘の元に参り事情を話した。

 話を聞いた文聘は東里袞と共に、南陽郡に侵攻した。

 報告を聞いた侯音は衛開に宛県を守る様に命じた。

 その間に、自分は南陽郡に南の方に向い兵を集めてくると述べた。

 衛開もその案に乗り、宛県に残った。

 宛県を出た侯音は兵を募っていると、劉皇叔達が江夏郡と南陽郡の郡境の近くまで来ているという情報を手に入れた。

 其処で侯音は劉皇叔と合流して、どの様な対策を練るか話し合う事に決めて、こうして自分達が参ったと告げた。

 話を聞き終えた劉備は何も述べず、徐福を見た。

 徐福は頷くと、話をした者を見た。

「少し我らで話し合いたいので、席を外して貰おうか」

「はっ。承知しました」

 そう言って、兵は一礼しその場を離れた。

 兵が出て行くのを見送ると、馬順が口を開いた。

「これで文聘軍が郡境に居ない理由が分かりましたな。これから、どうしますか?」

「どうとは?」

「正直な話、この反乱は我らが益州に逃げる為に起こしただけの事です。正直な話、このまま侯音と合流せず益州に向うという事も出来ます」

 馬順が出した冷酷な策を聞いて、劉備達は顔色を変えた。

「それはつまり、我らの為に反乱を起こした者達を見殺しにするという事か?」

「簡単に言いますと、そうなります。あの者達を囮に使えば、我らは追撃から逃れられるでしょう」

 馬順の献言を聞いて、徐福は誰よりも早く答えた。

「その様な事が出来るわけが無かろうっ」

 徐福の怒りが激発した。

「我らの求めに応じて反乱を起こした者達を見捨てるのは、信義にもとる行いぞっ。その様な事をして逃げれたとしても、殿の名に瑕がつくだけではないかっ」

「確かに、そうかもしれません。ですが、この状況をどうにかする為には、このような手もあると申しただけです」

「如何に生き残る為とはいえ、そのような事をしては、殿の信望を失う事になるではないかっ」

 馬順は冷静に、徐福は荒く息を吐きながら自分の意見を述べていた。

 二人の意見を聞いた劉備は考えていた。

(確かに、侯音達を囮にして益州に逃げるのも一つの手ではある。だが、それをすれば今後わたしに従ってくれる者達も信頼してくれるか分からなくなるな)

 自分の命と信義。

 どちらを取るべきか考える劉備に、孫乾が意見を述べた。

「今の我らは南陽郡に入ったばかりで、情報がほぼありません。そして、長い行軍で兵も家族も疲れ切っております。此処は一度何処かで休み、疲れを取ってから考えるのが良いと思います」

 孫乾の意見を聞いて、劉備が頷いた。

「うむ。そうだな。とりあえず、何処かで休むとしよう」

 劉備は孫乾の意見を採用した。

 そして、直ぐに侯音の兵を呼び、とりあえず兵が疲れているので休ませたいので、何処か無いかと訊ねた。

「それでしたら、新野が如何ですか? あの県は我らの反乱に従わないので攻めて落としました。その際に、家屋は出来るだけ立て直したのですが、住んでいた者達は逃亡してしまい、誰も暮らしておりません。その上、わたしの主である侯音様が拠点にしております」

 新野県と聞いて、劉備達は以前劉表の元に身を寄せていた時に居た土地だと思い、懐かしんでいた。

「しかし、新野は襄陽から近い。襄陽には曹操の親族である曹仁が駐屯していると聞いているが」

「その曹仁ですが、長沙郡で(・・・・)呉巨が(・・・)起こした(・・・・)反乱(・・)の鎮圧の為に出陣しておりますので、暫くの間長沙郡に居ると思います」

「おお、呉巨が立ち上がってくれたか」

 兵の話を聞いて、劉備は有難いと思っていた。

 反乱を起こしてほしいという文を送ったが、返事が来る前に発ったのでどうなっているのか分からなかった。

 曹仁が兵を出すほどと聞いて、反乱が成功していると分かり喜んでいた。

「そうなりますと、襄陽から襲来は無いと思ってよいですな」

「では、此処は新野に赴き休息を取るとしましょう」

 新野は宛県から離れているので、もし文聘軍が兵を差し向けても、襲撃を受ける前に新野に入る事が出来ると予想できた。

 曹仁も居ないので、誰も襲撃はしないと思い劉備達は新野に向う事にした。

 劉備達が新野に向う事に決めたと聞いた侯音の部下は笑みを浮かべていた。

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― 新着の感想 ―
いや…徐庶さんがキレるほど耳長に失う信用、信義なんて残ってないやろに(アカン
虚実の妙を感じるわ。 どっかの城に閉じ込めて、逃げ道を塞いで
最終的には耳長が麦城に行くコースですかな。
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