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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第二十章

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今の所、順調

 十数日後。


 劉備率いる軍勢はようやく廬江郡と江夏郡の郡境に到達した。

 郡境に着く前の間、孫権軍は一度も襲撃をする事は無かった。

 劉備は安堵したが、直ぐに気を引き締めた。

 道のりは遠く、行軍を共にしている民達の疲労が濃く砂塵に塗れていた。

 疲れて脚が動けないという者が出た時は、他の者に手を貸して貰い進み続けたが、それでも行軍は続いていた。

「ようやく、此処まで来ましたな」

 劉備の隣にいる徐福も万感の思いを込めて述べた。

「うむ。だが、まだ道半ばよ。此処からが大変であろうな」

「確かに。ですが、江夏郡は馬順の工作が上手く行き混乱状態となっていると聞いております。ですので、そう何度も襲撃はしてこないと思います」

「だが、その混乱もいつまで続くか分からん。出来るだけ早く駆け抜けるべきだな」

「はい。とは言え、兵とその家族を連れてですから、行軍はかなり遅くなります。ですので、時が掛ります」

「そうだな。今は少しでも休んでもらうとしよう」

 今、劉備達は郡境の近くで足を止めていた。これから進み道に問題がないかを兵を送って調べさせていたからだ。

 徐福は其処まで言うと、一度周りを見た。

 周囲に自分達しかいない事を確認し終えると、劉備にそっと話しかけた。

「殿。兵の家族を連れて行く事に後悔しておりませんか?」

 徐福が突然そう尋ねてくるので、劉備は目を限界にまで見開かせた。

「周りには我らしかおりません。別に後悔しているとも限りませんので」

「・・・別に後悔などしておらん。それに、兵もその家族達もわたしに付いて来ると決めたのだ。どれだけ大変であろうと、その思いに応えるのが、わたしの務めというものであろう」

「殿。わたしが兵の家族を連れて行くように進言しました。そして、殿もそう決断しました。ですが、決断したからと言って後悔はしないとは言えないでしょう。この場にはわたししかいないのですから、殿の胸の内を零しても構いません」

 徐福がそう言うので、劉備は暫し考えた。

 周りに誰も居ない事を確認した後、ボソリと呟いた。

「・・・・・・兵の家族が疲れているのを見て、連れて来て良かったのかと思った。だが、自分が決断した事だから悔いても仕方がない。それに」

「それに?」

 劉備が意味深な事を言うので、徐福は首を傾げた。

「・・・・・・いや、何でもない」

 劉備は手を振って、何も言わなくなった。

 愚痴を言い終えたと思い、徐福はそれ以上聞かず黙って離れて行った。

 徐福が離れていくと、劉備が心の内で呟いていた。

(それに、兵の家族を置いていけば、また謀略に使われるかもしれないからな)

 以前劉備は徐州に居た頃、勢力を拡大していた時に、曹昂が侵攻してきて矢文を討ち込んで来た。

 劉備からすれば大した事では無かったが、麾下の兵達からしたら重大な事であった。

 その時の劉備軍の兵には、曹操の支配圏に入っていた豫洲と兗州から集められた兵が多くいた。

 矢文に書かれている内容を読んだ兵達が、このまま従えば家族を殺されると思い反乱を起こした。

 兵達が反乱を起こした理由が分かったのはかなり後であったが、そんな事があったので劉備は兵の家族の扱いを慎重にする事にした。

 だからこそ、徐福が家族を連れて行くべきと言うのを聞いて、置いていけば曹操か誰かの謀略に使われるのではと思い連れて行く事に決めたのだ。

 苦渋の決断であったと思いつつ、劉備は兵が戻ってくるのを待った。


 同じ頃。


 江夏郡沙羨県。


 その県に居る太守の厳幹は各県の混乱の報告を聞き対処していた。

 其処に廬江郡に不審な集団が居るという報告が来た。

 直ぐに調べさせると、それが劉備率いる軍勢という事が分かった。

 その対処をどうするか、頭を悩ませている所に、文聘からの使者が現れた。

「文将軍より文です。どうぞご確認を」

「うむ」

 使者から文を受け取った厳幹は、広げると中を改めた。

 目を通すにつれ、徐々に顔色を変えて行った。

「・・・・・・文将軍は本当にこの文に書かれている(・・・・・・・・)事をしろと申したのか?」

「はい。そう申しておりました」

「・・・・・・承知した。では、その様に行動すると伝えてくれ」

「はっ」

 使者が一礼し、その場を離れて行った。

 そして、厳幹が文に書かれている事を、各県に伝える様に命じた。

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― 新着の感想 ―
さて何が起きるか。 ここまで龐統率いる軍の動向が描かれなかったから、いよいよかな?
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