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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第二十章

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権力とはこういう時に使う

 数日後。


 曹昂達は許昌に辿り着くと、屋敷に寄り身なりを整えて、朝廷に向った。

 その際、曹昂の元に調査を命じていた三毒の者が来て、報告書を受け取った。

 

 その頃、外廷では朝議が開かれていた。

 劉勲が弁舌を振るっていた。

「ですので、わたしは何の落ち度もございませんっ。全ては朱桓が発狂したから起こった事なのです!」

 朝議が開かれるなり、荀彧が議題を述べると劉勲から事のあらましを尋ねた。

 その場には朱桓が居ないので、劉勲は自分が都合がいいように話し出した。

 朝議に参加している者達は事の事情については詳しくなかったので、劉勲の話を聞きつつも劉勲達と共に許昌に来た者達の話も聞いた所、朱桓が発狂して人を殺したと言うだけであった。

 報告した者は朱桓が発狂して、人を殺した事だけしか分からないのでそう報告する事しか出来なかった。

 だから、どうして殺す事になったのかも分からなかったので、発狂したから殺したとしか言えなかったのだ。

 お陰で劉勲は発狂した朱桓に部下を殺されたと思われていた。

 それが分かった劉勲は殊更に朱桓を発狂したと述べた。

 それにより、朝議に参加している朝臣達も、発狂した朱桓が悪いと思っていた。

 だが、話を聞いていた荀彧、華歆、王朗の三人は何か怪しいと思っていた。

 その為、数日に渡って朝議を開いて事情を聞き調べていた。

 しかし、調べても朱桓が発狂して劉勲の部下を殺したという事しか分からなかった。

 更に運が悪いのか、朱桓は許昌に着くと病に罹り倒れてしまったので、話を聞く事が出来なかった。

 これにより、劉勲の話を聞く事しか出来なかった。

 荀彧達も劉勲の話が真実なのだろうと思っていたのだが、其処に護衛の兵が走って来た。

「ただいま、曹陳留侯が参りました!」

 兵の報告を聞いて、その場がざわつきだした。

 まさか、曹昂が来ると思わなかったからだ。

 荀彧も来ると聞いていなかったので、驚きも一入であった。

 やがて、朝議の場に曹昂が姿を見せた。

 場に現れるなり、曹昂は上座に居る献帝に一礼し他の朝臣達に一礼する。

「陛下。突然参った無礼をお許しを」

「良い。それよりも、陳留侯よ。お主がこの場に来た理由を聞きたい」

「此度、朝議に名が出ている朱桓はわたしが呉郡の太守に推薦した者にございます。事の処罰がどうなるのか知りたいと思い参りました」

「そうか。では、朝議に加わるというのだな」

「はい。ですが、その前に」

 曹昂は劉勲を横目で睨みつけた。

 睨みつけられた劉勲は身体をビクリと震わせた。

「この者が朝議の場で出鱈目を申している様ですので、真実をお教えいたします」

 そう述べた曹昂は朱桓が発狂した経緯について事細かく報告した。

 報告を聞いて、荀彧達は発狂した理由が分かり納得し、劉勲は顔を青くしていた。

「・・・以上にございます。その証拠に」

 曹昂は袖に手を入れると、其処から竹簡を取り出した。

 それを荀彧に渡すと、直ぐに広げられた。

「何と、これは劉勲の部下の証言のようですな」

「ええその通りです」

 報告書に目を通した荀彧は紛れもない証拠だと分かり頷いた。

「これは間違いなく、お主の部下の字か?」

 荀彧は歩き出し、劉勲の傍に来ると報告書を見せた。

 報告書を見て、直ぐに部下の字と分かった劉勲は言葉を失っていた。

(ま、まずい。このままでは、偽証したわたしがどんな処罰を受けるか分からんっ)

 どうするべきかと劉勲は考えに考えた。

 そして、考えた末に重々しく口を開いた。

「お、恐れながら、それは曹陳留侯は推薦した者が処刑されては困ると思い、字を真似る上手い者に書かせて用意した物では」

 劉勲がそう述べると、朝議の場が凍り付いた。

 荀彧に至っては溜息を吐き、首を横に振った。

「ほぅ、貴殿はつまりわたしが嘘を着いていると言いたいのか?」

 平坦な声で曹昂は劉勲に問うた。

 あまりに感情が籠っていないので、逆に皆怖いと思った。

「曹丞相の子であり、車騎将軍の位に就き恐れ多くも天子の義兄であるわたしが嘘をつくと? 」

 曹昂が劉勲を睨みつけながら、自分の立場を述べた。

 ただ、それだけなのだが劉勲は失言したと分かり、身体を震わせながら汗を噴き出していた。

 其処まで言った曹昂は劉勲を睨むのを止めると、献帝を見て一礼する。

「陛下。今までの話を聞き裁決を」

「・・・ち、朕が決めても良いのか?」

「陛下は朝廷の主にございます。朝議の裁決は全て陛下がお決めになる事です。ですので、臣は陛下のお決めになった事に従います。できれば、朱桓に対してお咎め無しにして頂けますれば、幸いにございます」

 曹昂は此処だけは譲れない所を言い、後は献帝に判断させる事にした。

 その後、献帝は荀彧達と話し合い裁決を下した。

 朱桓に対してお咎め無し。劉勲には部下に唆されたという事で、爵位剥奪と棒叩き五十回の後に河内郡への移動を命じた。

 劉勲の部下達は全員処刑、率いていた兵は呉郡に暫く留め置かれる事となった。

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― 新着の感想 ―
代替わり後の曹昂の描く漢朝の在り方の伏線回の様な話。
土壇場で最悪の一言やったなwあんたが任命したからだろ… なんてw 首と胴がグッバイしなかっただけ温情や
この曹昂なら、謀略でもなく公の事であれば、己の部下に咎あれば、厳正に対応するはず 荀彧らは、それを理解しているけど まあ、他は曹昂の立場、曹操の陰に怯えるんだろうね
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