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無性に食べたくなる

 劉備が益州に逃げる事を決めた頃。


 曹昂は何故か厨房に居た。

(何か、時々だけど無性に食べたくなるんだよな。餃子)

 そう思いながら手には小麦粉で作られた皮を持ち、その皮の中心部分に挽き肉を乗せていた。

 肉が皮からはみ出ない様に包み、ひだを作って行った。

 今作っているのは餃子であった。

 色々と考えていたが、結局の所劉備がどう動くのか分からないので、今は待つ事しか出来なかった。

 待っているのも暇なので、厨房に入り餃子を作る事にした。

 肉を皮に包む際、何も考えず無心で作れるので作る事にした。

 久しぶりに厨房に立ち作っていたが、前世で見た事がある餃子の形はしていた。

 厨房に居る料理人達は、曹昂が怪我しないかとソワソワしながら見ていた。

 曹昂は視線を感じつつも、無心で餃子を生産していた。

 そうして作っていると、用意した皮に肉を包み終えて一息ついていると、ふと思った。

(・・・・・・久しぶりにソースを掛けたカツが食いたいな) 

 前世の記憶があるからか、時々前世で食べた物が食べたくなる時があった。

 とは言え、この時代で作る事が出来る物など知れていた。

 カレーは香菜、小茴香、姜黄、唐辛子があれば出来る。

 香菜はコリアンダーで、小茴香はクミン、姜黄はターメリックである。

 コリアンダーは前漢の武帝の頃に、西域から伝えられている。

 クミンとターメリックは紀元前から存在が確認されているので、商人に頼めば手に入る事は出来る。

 だが、一番重要で肝心である唐辛子は南アメリカにある。

 現在の航行技術では到達は無理と言えた。その為、作る事は不可能と言えた。

 なので、カレーは無理と諦めていた。

 その代わりとばかりに、他の物は食べれるように頑張った。

 そんな中で、ウスターソースを掛けたカツは食べていなかった。

 カツの方は出来るのだが、ウスターソースは作る事が出来なかった。

 材料が何となくしか覚えていなかった事と、作り方も詳しく覚えていなかった。

 なので、作る事は出来なかった。

(此処は馮才に頼んで作らせてみるか?)

 以前、うろ覚えであった玻璃(ガラス)を作ってくれたので頼めば出来るかもしれないと思えた。

 そう思いながら、餃子を焼いて行った。


 やがて、全ての餃子を焼き終えると、曹昂は部屋を移動した。

 皿には大量の餃子の山が出来ていた。

 食べきれず余ったら、孫礼か誰かにあげようと思いつつ箸をつけた。

 綺麗についた焦げ目を見つつ、摘まんだ餃子を別皿に置いた。

 その別皿には塩と胡椒が盛られていた。

 餃子を塩胡椒の中に落とし持ち上げると、焦げ目に白い粒と黒い粒がついていた。

 塩と胡椒がついた餃子を口の中に運んだ。

「・・・んっ、美味い」

 自分で作った餃子を自画自賛する曹昂。

 パリッと焼けた皮を噛むと、ジュワ―っと溢れ出る肉汁。

 刻まれた野菜と肉の脂を共に味わっている時に、塩味と辛味が襲う。

 その塩辛さが、更なる深みを生み出していた。

「水餃子も良いけど、わたしは焼き餃子が好きだな」

 其処は前世が日本人だったからなのか、それとも好みなのかは曹昂は分からなかった。


 後日。


 曹昂は馮才を呼び出して、大秦にはこの様な汁があるので作って欲しいと言い、うろ覚えながら材料と作り方を教えた。

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― 新着の感想 ―
また焼くか茹でるかで揉め…るかと思いましたが、プリンほど熱くはならなそうですね。
ウスターソースはいろんな野菜や果物、魚やら混ぜ合わせて醸造して作ったものだから、再現は難しい。
カツは塩で食うのが通だそうですよ。
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