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曹操、連合と距離を取る

本作では胡毋班は王匡の妹婿とします

 曹操が洛陽に帰還して数日が経った。

 董卓を追撃した時に手に入れた財宝を使って洛陽市内の復興をさせた。

 だが、その奪った財宝だけでは宮殿の修復には足りなかったので、仕方が無く市内の修繕だけとなった。

 市内には瓦礫などを取り除いたり家を新しく建てたりする者達が行き交っていた。

 人手に関しては董卓に無理矢理連れて行かれた人達が曹操の追撃時に救われ、そのまま洛陽に戻って来たので、その人達を動員する事になった。

 皆、我が家や馴染みの店が燃えているのを見て悄然としていたが、修復する金を貰えたので顔を明るくした。

 そんな中でも都の象徴とも言うべき宮殿だけ修復されないのは、何処か人々の顔に暗い影を落としていた。

 

 その時、連合軍はと言うと。

 焼けた宮殿の跡地に陣地を張り日夜董卓についての軍議を行っていると言われているが、実際は。

「ぷっは~、董卓め。無様に長安に逃げおって。私がもう少し早く洛陽に到着していたら、その首を刎ねてやったものを……」

「いや、全くですなっ」

「所詮は涼州の田舎豪族だ。我らに敵わないと分かると、自分の故郷の近くまで逃げ出しおったわっ」

「はっはっは、であれば、我等が長安に進めば、董卓は降伏するかもしれませんな」

「違いないっ」

 洛陽から遷都という名目で長安に向かった董卓を肴にして、諸侯達は酒を飲んでいた。

 諸侯達は軍議という名の酒宴を行っていた。

 曹操は礼儀として参加していたが、その軍議に参加し馬鹿騒ぎをする者達に腹が立っていた。

(こんな無駄な事をして兵糧を消費するぐらいなら、さっさと長安に攻め込めばいいものをっ)

 財宝と共に奪った兵糧は連合軍の諸侯達に公平に分配した。

 これで暫くは兵糧に困らないだろうと思い曹操は袁紹に長安に攻め込むべきと進言したが、

「今は時期尚早だ。もう少し待つが良い」

 と言って曹操の進言を却下した。

 追撃して名声を得た事を根に持っているのかと曹操は思った。

 しかし、連合軍の盟主である以上従うしかなかった。

 こんな事であれば自分がなれば良かったかと思ってしまう曹操。

 そんな腹立たしい思いを顔には出さないで酒を飲んだ。

 そんな折、酒宴が開かれている天幕に河内太守の王匡がやって来た。

 暗い顔をしているので、皆気になり酒を飲むのを止めて王匡に目を向けた。

「本初殿。今、私の陣に執金吾の胡毋班がやって来た。董卓から我等に書状を携えてきたそうだ」

「なに? そうか。その使者を此処に通すが良い」

「はっ」

 王匡は後ろを向いて手で来るように合図した。

 すると、天幕に官服を着た者が入って来た。

「私は執金吾の胡毋班と申します。前触れも無く訪れた無礼は平にご容赦を」

「別に構わん。それで董卓めはどの様な事を書いたというのだ?」

「私は書状の内容までは知りません。詳しくは書状の中に書かれております」

 恭しく跪き書状を掲げる胡毋班。

 袁紹は顎をしゃくると護衛に立っている兵が胡毋班に近付き書状を受け取る。

 その書状を袁紹に渡した。

 書状を広げた袁紹は端から読んで行くと、顔が酒を飲んだ事による赤らみではなく怒りにより赤らんできた。

「……ふざけた事をっ」

 書状を読み終えた袁紹は読み終えた書状を怒りで破った。

 これは相当怒っていると袁紹を見ている者達は思った。そして、袁紹をこんなに怒らせるとは書状には何と書かれていたのか気になった。

「胡毋班。貴様っ。漢室の臣下である貴様が、漢室復興を掲げる我ら連合軍に逆賊との和議を結ぶ使者になるとは、恥を知れ!」

 袁紹は胡毋班を叱責した。胡毋班は何も言わず黙っていた。

「本初殿。書状には何と書かれていたのですか?」

 諸侯の一人がここまで怒る袁紹を見て書状にどんな事を書かれていたのか訊ねた。

 袁紹は荒く息を吐きながら答えた。

「董卓め。我等がこれ以上争うのは天下に良くない。此処は和睦して連合軍を解散しようと書いてきたのだっ」

 それを訊いて皆、何故袁紹がこんなに怒ったかが分かった。

 董卓を討つために集まったのに、その董卓に連合軍を解散する様に言われては怒るのも無理はなかった。

「胡毋班。貴様、董卓に魂を売ったのか?」

「……御怒りは御尤もですが。相国は無用な乱で民を傷付けるのは本心ではないと仰せでして」

 黙っていた胡毋班が口を開くと袁紹を宥めようとした。

「喧しいわ! 貴様の様な表向きは忠臣を装い本心では董卓に媚びるような奴の言葉など聞く耳を持たんわっ。王匡!」

「はっ。何でしょうか?」

「こやつを斬れ‼ そうしたら、この者を私の面前に連れて来た無礼とお主の二心が無い事を信じてやるっ」

「何と、わたしに胡毋班を斬れと⁉」

「そうだ。お主と此奴は同郷だけではなくお主の妹婿であろう。親戚である以上疑うのは不思議ではなかろう?」

 袁紹にそう言われては王匡は何も言えなかった。

 胡毋班もまさか使者として赴いて殺されると思わなかったからか、顔を青くさせていた。

「……御意」

 王匡はそう答えると胡毋班を連れて天幕を出て行った。

 王匡は自軍の陣地に戻ると胡毋班を処刑した。


 そんな事があったので曹操は酒宴の場を出て自軍の陣地に戻った。

 戻るなり曹操は自軍の部将をを呼び集めた。

「皆、揃ったな。呼び集めたのは他でもない。今後の事を話そうと思い皆を呼んだのだ」

 曹操が部将達が集まったのを見て曹操がそう言いだした。

「孟徳。それはつまりまた我等だけで董卓に攻撃をするという事か?」

 夏候惇が恐る恐る訊ねた。

 それを訊いた曹操は手を横に振る。

「違う。流石に長安に籠もってる董卓軍に我が軍だけで攻め込むのは無謀というものだ。流石の私もそんな事はせんよ」

 それを訊いてこの場に集まった者達は安堵の息を漏らした。

 皆はまた無謀な事をする為に呼び集めたのではと思ったからだ。

 その反応を見て曹操は不満そうな顔をした。

「お主ら、私が毎度無謀な事をすると思うのか?」

「違うのか?」

 夏侯淵が思わずそう訊ねた。

「違うわ。こんな所に居たら、兵糧を無駄に消費するだけだから、洛陽を離れて別の地で兵を募ろうと思い、皆を呼んだのだ」

 兵を募ると聞いて、部将達は唸りだした。

「孟徳。洛陽を離れたら連合から離脱したと思われるぞ?」

 曹洪は連合軍の発起人が連合と距離を取るのはどうかと思い言った。

「ふん。軍議を開かないで毎日、酒を飲んでいる奴等と一緒にいるなど御免だ。それなら距離を取って、私は私が為すべき事をする」

 曹操が何かを決意した目をして答えた。

 それを訊いて皆、曹操は何かをするつもりだと分かった。

「この軍の大将は孟徳。お前だ。お前の命令であれば、我等は従うぞ」

 夏候惇が皆を代表して答えた。

「皆には感謝する。それで、兵を募る場所だが。あまり洛陽から離れると袁紹あたりが煩いだろうから。河内の地で兵を募る事にする」

 河内郡は太守の王匡が連合に参加しているので兵を募っても問題は無い。

 それに洛陽とはそれほど離れていないので連合から離脱したと思われる事はないだろう。

「河内か。あそこなら問題無いな」

「では、直ぐに出立の準備を」

「全軍では無く洛陽には一部を残したいと思う」

「何故、そんな事を?」

 皆どうしてそんな事をするのか分からず訊ねた。

 曹昂は少し考えると、何故そんな事をするのか分かり曹操に言う。

「父上。連合から何かしらの連絡を取るかもしくはあったら伝える為の連絡役としておくのですね」

「その通りだ。流石は我が息子だ。褒美にお前が洛陽に残れ」

「えええっ」

 曹操の言葉に不満そうな顔をする曹昂。

「別に良いだろう。それに、親の目を気にする事なく嫁とじゃれあう事が出来るぞ?」

 曹操はニヤニヤしながら言いだした。

 それを訊いて楽進と史渙以外の者達が曹昂を見てニンマリした。

 皆の視線を感じて揶揄われていると察する曹昂。

「ああ、違ったか。貂蝉とじゃれあう方であったか。お前も隅に置けんな。嫁を手に入れるだけではなく、何時の間にか妾も手に入れるのだからな」

 曹操はカラカラと笑いながら言う。

 それを見て夏候惇達も笑い出した。

 曹昂は内心で憤るが何も言えなかった。

 何故ならば、自分の隣には董白が背後には貂蝉が居るのだから。

 ちなみに貂蝉がこの場に居るのは皆に茶を出す為に呼ばれたからだ。

「「……~~~」」

 曹操達に揶揄われて二人は顔を赤らめてチラチラと曹昂を見る。

 そんな二人の視線を浴びて曹昂は何も言えなかった。

「さて、息子を揶揄うのは此処までにして。河内郡に行くのは私と夏候惇、夏侯淵、曹仁、曹洪とする。洛陽には五千の兵と曹昂を将として史渙、楽進を補佐に付けて駐屯し洛陽の復興に尽力しろ」

「……おほん。父上の下に行くのは何時頃がよろしいでしょうか?」

「袁紹達が連合を解散すると言ったらこっちに来い」

「分かりました」

 その後は兵を募る事、兵糧、武具の調達する方法などを話し合って解散となった。


 翌日。

 曹操は袁紹に「先の追撃で兵をかなり失った。補充したいので河内郡に行く事を許可してもらいたい」と言うと袁紹は反対せずに承諾した。

 曹操は即日、兵を整えて曹昂達を洛陽に残して河内郡へと向かった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 修繕にだけ
[一言] この親子、最高!
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