5月6日の話。
気を失っていたメイが目を覚ますと、誰かに背負われて移動していた。
「お?気が付いたか?」
「……オオカミは?」
「お前のおかげでなんとか倒すことができたよ。ありがとう。」
「……どういたしまして。」
「もうすぐ街に着くけど、家まで送っていくな。」
「……よろしく。」
メイは、魔力を使いすぎた影響で体がだるかったので、今背負ってくれてる冒険者の提案に甘えることにした。
すると、隣を歩いていた、残り二人の冒険者が声を掛けてきた。
「先ほどは、あなたのおかげで危機を乗り越えることができたと聞きました。僕は気を失ってましたが、今生きていられるのはあなたのおかげです。ありがとうございました。」
「助かったぜ。ありがとな。」
メイは、お礼の言葉を聞きつつも、この二人の顔がそっくりなことに気を取られ、二人の顔を見比べてしまっていた。メイの、見比べるような目線に、片方の男が気づいた。
「ああ、僕たち双子なんですよ。僕はマシュー。盾を使ってる方って覚えてください。」
「俺は、ウォルト。弓を持ってる方だ。よろしくな。」
「……メイ、です。よろしく。」
双子とあいさつを交わすと、メイを背負っている男も自己紹介を始める。
「おいおい、二人して先に挨拶するのはずるいぜ。僕はアランだ。改めてさっきはありがとう。お前も冒険者だろ?これからも何かあればよろしくな。」
「……うん、よろしく。」
「それで、さっき倒したブラックウルフマスターだけど、今日はいったんみんな家に帰って、明日4人で報告に行くのがいいと思うんだけど、それでいいか?」
「いいですよ。」
「いいぜ。」
「……うん。」
「了解。それじゃあ、僕はメイを送っていくから、マシュー達はまた明日な。」
そして、別れの挨拶を交わし、マシュー達双子は、家に帰っていった。
その後、メイがハナの家の方向を伝え、アランに送ってもらう。
しばらく無言が続いていたが、メイが言葉を発する。
「……あの時、声が聞こえた。…アランは、何か、知ってる?」
メイは、あの時の助けを求める声について、気になっていたのだ。
「…なるほど。あの時はそういうことだったのか。…そうだなぁ、あれは、僕の特殊能力の1つって感じで納得しておいてほしい。」
「……わかった。」
そんな話をしていると、二人の前に、荷物を抱えたハナが歩いていた。
「ハナさん!」
メイが叫ぶと、声に気づいたハナが振り返る。
「メイ?あなたどうしたの?」
「こんにちは。メイさんのお姉さんですか?」
「まぁそんなところかしら。それと、メイが迷惑をかけたわね。」
「いえいえ、むしろ迷惑をかけたのはこちらの方です。メイさんには大変なところを助けていただきました。その時に、メイさんは魔力を使い切ってしまったようで、ここまで送らせてもらいました。」
「そうなのね。ともかく、メイを送ってくれてありがとね。お礼に夕飯でも一緒にどうかしら?」
「ありがたいお誘いですが、家で食事の準備はできてると思いますので、遠慮させていただきます。」
「わかったわ。改めてメイを送ってくれてありがとね。今後もメイと仲良くしてくれるとうれしいわ。」
「ええ、こちらこそお願いしたいくらいです。では。」
「……アラン。ありがとう。」
「こちらこそありがとう。また明日。」
そう言って、アランは去っていった。
「メイ?あなたどうせ秘術を使えるのがうれしくて、アラン君たちと合流する前に、魔力ほとんどからしてたんでしょ?」
「…ぎくっ」
「まぁいいわ、アラン君たちとの件がなくても、どうせへとへとだっただろうし。いろいろ言いたいこともあるけど、今日はメイの誕生日だから、ご馳走食べてゆっくり寝なさい。」
「え!?」
「シンゾーから聞いてたのよ。だから今日は自由にしてたってわけ。じゃあ帰りましょうか。」
「…はい。」
その日は家に帰り、いつもより豪華な食事を食べてゆっくり寝たのであった。