師匠の話。
本屋に泊まることになった日の夜、メイに声を掛けてきた女性、ハナという名前らしいが、そのハナと共に夕食を食べた後、ハナと本題であるシンゾーの話になった。
その会話の中で、ハナとシンゾーは、ずっと東にある国から、ドベリン国含めたここセントラル地方に調査のために派遣されていたらしい。
そして、ある程度の調査が終わり、シンゾーは本国に戻り、ハナはこの街イースタンに残り、すこしずつ情報をシンゾーへ送るということになっていたらしい。
すると、シンゾーの歩き方にそっくりな少女が、ハナの本屋にやってきて、驚きのあまり声を掛けたというのが、今回の顛末である。
「それで、どうしてシンゾーがメイに指導することになっていたの?」
その質問を受け、メイは口下手ながらも、シンゾーを助けたお礼として、シンゾーに修行を付けてもらったということを一生懸命説明した。
「なるほどね…でも、シンゾーにしては修行が中途半端な気がするんだけど。」
「?…師匠は、ある程度形になったから、って言ってた、です。」
「んー、そうなのかな~。まぁいいや、私たちには連絡手段があるから聞いてみることにする。とりあえず、こうして出会ったのも何かの縁だし、今日はゆっくりしていってね。」
「…はい。よろしくお願いします。」
次の日の朝。メイが寝室から出ると、ハナが仁王立ちで待ち構えていた。
「!!おはようございます。」
「おはよう!喜びなさい!私がメイの修行をつけることになったわ!」
「!…本当?」
「ええ、昨夜シンゾーに連絡したら、メイの修行は体づくりまでしかできていないから、続きをよろしくって言われたの。」
「…よろしくお願いします。」
「よろしくね。それでメイは、魔法を覚えてないって本当?」
「…はい。ばーちゃんに、しかるべき時が来るまで、魔法は、覚えないほうが、良いと言われた。その時は、絶対、明確にわかる、から、それまで我慢して、魔力を練る訓練だけ、続けなさいって。」
「ふむふむ、聞いたとおりね。では、そんなメイに1つ朗報よ!魔法とは違うけど、私たちが扱っている秘術を教えてあげるわ!」
「!?…それって、師匠が、つかってたやつ、ですか?」
「そうよ!ちなみに、シンゾーより私のほうが、秘術に関しては得意だから安心しなさい!それに、その秘術は、メイのやって来た、魔力を練る訓練がとても活かせるから、すぐに使えるようになるはず!」
「…なんで、教えてくれる、ですか?」
「んーまあ大人にはいろいろあるのよ!だから、メイは今日からうちで寝泊りしなさいね!」
「…はい。」
「あ!家賃と食費は適当に徴収するから、冒険者の活動は並行して続けなさいよ!」
「…わかった、です。よろしくお願いします。」
「よろしい!」
そんなこんなで、メイはこれからハナに修行を付けてもらう生活が始まるのだった。