東の森でモンスターを倒す話。
冒険者の登録を済ませたメイは、ギルドを出たあと、街の東門から外へ出ていた。
「まずは、当面のお金を手に入れるために、モンスターを倒しに行かなくちゃ。」
メイは、そんなことをつぶやきながら、東の方で広がっている森へ向かっていった。
その森は、特に名前のついていない森で、強いて言えば「東の森」とイースタンに住んでる人たちは呼んでいる。東の森は、周辺の平原や森と比べると、モンスターの存在頻度が高いため、戦闘力に自信のあるものでない限りめったに入ることはない場所である。
冒険者が東の森にかかわる仕事としては、森から出てきてしまっているモンスターを討伐するような依頼がほとんどで、中に入っていく人は、ほとんどいない。
そんなことを知ってか知らずか、特に緊張する様子もなくメイは、森の中に入っていくのだった。
この世界には魔法というものが存在している。魔法とは、この世に生まれている生物のほとんどが所持している魔力を放出して、いろいろな現象を引き起こすものである。
人間がいつから、どんな原因で魔法を使えるようになったのかというのは、いまだ解明されていないし、才能によって能力に差は存在しているが、今では、ほとんどの人間が何かしらの魔法を使えることができると言えるだろう。
だが、先ほど冒険者になったばかりのメイ・ドーラは、いまだ魔法が使えない。
正確には、一般的に広まっている、戦闘に関する魔法を使用することができない。
メイができることと言えば、体内の魔力を循環させることで身体能力を向上させる、俗に言う《身体強化》くらいである。
そんなメイは、今4匹のオオカミに囲われていた。
メイは、すぐさま自分の体の中の魔力をコントロールすることで、体の反応速度や力を上昇させる。そして、準備が整うとメイの右後ろにいた、メイからの距離が最も近かったオオカミに接近する。オオカミは、メイの接近には反応できず、横腹に蹴りを入れられふっとばされる。メイは、蹴っ飛ばした後、腰にある小袋から小剣を取り出し、残りのオオカミに向かっていき、次々と首をはねることで、ほんの数秒で、4匹のオオカミを葬った。
メイは、剣についた血をパパっと払った後、また小袋にしまった。どう見てもさっきまでの剣がその袋に入りきるわけがないことから、その小袋がマジックバックであることがわかる。ちなみに、マジックバックとは、袋の中が時空間魔法で拡張されていることにより、袋の見た目に比べてたくさんの物が入るようになっている袋である。
メイのような、みすぼらしい格好の子供がマジックバックを持っていることは、少し違和感を覚えるが、ある程度お金を持っている者であれば買うことができるので、深く考えなければ、子供が持っていてもおかしくはないのだろう。
メイは、倒したオオカミたちも袋にしまうと、さらに森の奥へと進んでいく。その後メイは、マジックバックが満杯になるまで、ひたすら森の中でモンスターを倒していくのだった。