冒険者ギルドに報告する話。
誕生日の翌日。今日は、アラン達と一緒に、昨日のブラックウルフマスターの死体を売却しに行くことになっている。冒険者ギルドのすいている時間であるお昼過ぎに集合し、ギルドの受付に話しかける。今日の担当は、メイの登録ときとは違う人だった。というか、毎回違う人なので、もうあまり覚えていないのだが。
「いらっしゃい。今日はどんな用事ですか?」
「僕たち3人は、昨日受けていた依頼の報告と、帰りにブラックウルフマスターに出会ってしまって、彼女を含めた4人で倒したので、その売却をしに来ました。」
受付の問いかけに、アランが応答する。
「はい?ブラックウルフマスターですか?」
「はい。なぜか東の森の入り口近くにいたので。」
「本当ですか?しかも、売却?」
「はい。運よく倒すことができたので。」
「…わかりました。では、確認のためこちらに出していただけますか?」
「え?いいんですか?結構大きいですが。」
「かまいません。確認が必要となりますので。」
「わかりました。」
受付の目の前で出す必要性は感じられないが、アランは言われた通りに、マジックバックからブラックウルフマスターの死体を取り出した。
「うわ!」「なんだあれ!」
受付にいきなり、大きなモンスターの死体が現れたので、周りにいた冒険者たちが驚きの声を上げる。
一方、受付の女性はというと、同じくびっくりしてフリーズしていた。アランが話しかける。
「すみません。大丈夫ですか?」
「はっ、はい!?」
「ちょっとちょっと!なんでこんな場所に出してるの!?」
すると、受付カウンターの奥から、メイの登録の担当をしてくれた女性が飛び出してきた。
「ティ、ティアさん!?」
「あなたなんで、こんな場所に出させたの?」
「いや、この方たちが嘘をついていないかの確認をするために…。」
「はぁ。まったく。…とりあえずあなたは後ろに下がっていなさい。あとで説教だからね。」
「は、はいっっ!?」
その受付の女性は、アラン達の報告を疑っていたらしい。それで、嘘をついてブラックウルフマスターなんて強いモンスターを倒したということを二度としないようにしていたらしい。
そのような言い訳というか事情聴取のようなものが終わり、受付の女性は後ろに下がっていった。
そして、ティアと呼ばれた女性は、こちらに振り向いて頭を下げた。
「先ほどは、受付の者がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。とりあえず、このモンスターをしまっていただいてよろしいですか?」
「は、はい。」
「ありがとうございます。では、さすがにブラックウルフマスターの出現というのは、一種の危機的状況かと思いますので、詳しく状況をお聞きしてもいいですか?」
という確認があった後、アランとティアで受け答えをし始めた。
「…つまり、アランさんとマシューさんウォルトさんの三人が初めにマスターに対峙し、そこにメイさんがあとから合流し、協力して倒したということでよろしいですか?」
「はい。おおむねそんな感じです。」
「なるほど。かしこまりました。では、一応こちらのほうで、マスターが森の入り口付近に現れた原因を探っておきます。それと、素材はすべてこちらで買い取るということでよろしいのでしょうか?」
「はい。それを4等分でそれぞれに分けていただきたいです。」
「かしこまりました。他になにかありますでしょうか?」
「えっと、僕たち三人は元々受けていた依頼の報告もしたいです。それと、メイはなんかある?」
「…昨日倒したモンスターを、売りたい。」
「なるほど、ではアランさんたちは私が対応いたします。メイさんのモンスター買取は、隣のカウンターでお願いします。」
「わかりました。」「…わかったです。」
その後、それぞれの売却や報告を終え、ブラックウルフマスターの売却も完了した。メイは、42000コインを手に入れた。
「改めて、今回はご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。それと、今回ブラックウルフマスターを討伐したことで、皆さんのランクを1つ上げ、アランさんたちはEランクに、メイさんはFランクに昇格としたいと思います。」
「待ってくれ!」
ティアからの提案に対して、ウォルトが待てを掛けた。
「俺と兄貴は正直、ブラックウルフマスターの討伐にはほとんど関われてない。なのに昇格でいいのか?」
「そうですね。その場の状況がこちらから測りかねる以上、ブラックウルフマスターと対峙しても生き残っていたという点を評価させていただいております。それに、お二人の熱心な活動と成果は、以前から確認しておりますので、Eランクでも問題ありません。」
「そうか。だが、悔しいが実力はメイのほうが上なのに、メイはFランクなのか?」
「はい。冒険者のランクというのは一概に実力だけで決まるものではありません。それに、メイさんはいまだにギルドの依頼をお受けいただいたこともありませんので、Eランクにはまだ上げることはできません。」
「なるほど。わかった。」
「メイさんもそれでよろしいでしょうか?」
「…だいじょぶです。」
「では、今後もよろしくお願いします。」
そんなことがあり、全員1ランク昇格し、それなりの大金を手に入れることで、今回の件は終了した。