6話 デスゲーム
今日も職務を全うしました。こんばんは、弟です。今晩は風呂に入って早く布団に潜りたい気分です。
玄関を開け、リビングに行ってみると、姉がTVゲームに没頭していました。
悲しいことに、この光景にももう見慣れてしまいました。
「ただいま」
「お帰り弟。今日も社会の荒波に揉まれてクッタクタだな」
「あぁどうも」
「ようし。姉ちゃんと格ゲーで対戦だ、対戦。今日こそお前を破れそうな気がするんだ」
「今日は止めておかないか。弟は前文通りのクタクタっぷりなんだ」
「軟弱者めが。それでも現代を生きる侍か。仕事が終わったら仕事だぜ」
「どこの仕事人だ俺たちは。それより、姉も今日はちゃんと自宅警備の職を全うしていたのか?」
「問題ない。今日も自宅に異常はなかった。ただ一つ、弟のドナルドダック貯金箱が完全破壊を遂げたことを除けばな」
「ドナルドダックも無念だっただろうな。で? ドナルドダックの中身はどうなったのだ」
「三万ちょい入っていたのでな。有り難く私のプーさん貯金箱に納金させてもらった」
「ドナルドダックも浮かばれる……と言いたい所だが、どうしてだろう。何か弟の胸中には怒りにも似た、そう、殺意のようなものがふつふつと芽生えつつあるのだ。姉よ、この事象を貴様はどう捉える?」
「資本主義の運命だな。大人しく我が血肉となるがいい」
「寝言は寝て言うものだぞ姉よ。寝付けないなら俺が寝かしつけてやってもいいが、二度と朝日を拝めなくなることは言うまでもないな」
「何をそんなに苛立っているのだ弟よ。私は弟とゲームがしたいだけなのに」
「あぁ、なら始めようか。弟がたった今考案した生殺与奪を賭けたデスゲーム。包丁を投げ合って先に脳天に命中したほうがwinnerだ」
「……狂ってきたな弟よ」
弟の狂った言動でたじろぐ姉はこれが最初で最後かもしれません。