62話 悟り
地の文なしのリハビリ更新。更新停滞すみませんです。
「今こうしてる間にも、地球では何ヘクタールもの緑が消え、南極や北極の氷は融け、地球は傷を深くしていく……」
「やぶから棒にどうした姉よ」
「弟よ。環境問題について人間はすぐに『地球を守ろう』とか『地球が泣いている』などとのたまわるじゃないか。実際のところどうだ、地球の平均気温の変化など今に始まったことではないし、環境のためのエコ活動やなにやらは結局、『地球のため』ではなく『人間のため』にやっているじゃないか。違うか? こんなものは偽善でしかない。私は悲しい。今、私たちにできることとは、いったい何なのだろうか」
「非常に高尚なお悩みだが、地球うんぬんの前にまず自分のことをどうにかしてみてはどうだろう姉よ」
「ちっぽけだ、弟よ。実姉の世間体がどうした。そんなちっぽけなことで何を悩む必要がどこにある。そこまで苦しんで貯金を溜めて、その先に何がある? 今を楽しんで生きればそれでいいじゃないか、人間だもの」
「姉はすでに十分後先見ずに生きていると思うが」
「ははは。まぁまぁ、そう目くじら立てなさんな。怒るとその分シアワセが逃げていきますよ? ん?」
「なにそれ、なにお前、なんかいつもより反応が鬱陶しいんだけど」
「なんだか最近心が清らかになってきてな。弟よ、もはやわたしに怒るという感情はない。どんなものだったか思い出せないくらいなのだ」
「よし鬱蔵、そろそろ飯にするか」
「シカトしてくれるな弟よ。まぁそう慌てるな。人はいつかは死ぬんだ。飯の一つくらいで焦ることはない。おぉ鬱蔵よ。こんな狭い檻の中に閉じこめられてさぞ辛かったろう。だがもう大丈夫。さぁ、広い空へと羽ばたいてギャー!!」
「とりあえずお茶飲むか姉よ……」
「死ぬところだっ……いや、いい。水で充分だ。あぁっ……美味いっ! 『何が東京の水は不味い』だ。アフリカの子供たちが聞いたら目ん玉ひんむいて怒り出すぞ。清潔で美味しい水が蛇口をひねるだけで湧き出てくる。これほど恵まれた国がどこにあるだろうか!」
「じゃあ姉の飲み物は水だけでいいんじゃないか。飲料代一人分浮くし」
「弟よ、この世に生きる限り、いつかは死ぬものだな。全生物には必ず死期というものがあり、常に瞬間瞬間に生きている。見てみたまえ、そこでペタンコになっている哀れな黒い生物を。彼も生きるのに必死だったが、こうしてあっけなく死んでいく。悲しいけどコレ現実なのよね。あの黒い生物の分も、私たちはもっと生きているということに感謝しなければならない……」
「一時間前に姉が絶叫しながら叩き潰したゴキブリじゃねーか」
「あぁ、なんか悟ってきた。こうして座禅を組むと自然と一体になった気分になれる。邪念が塊となって消え、煩悩がすうっと頭の先から抜けていくようだ」
「よかったな、じゃあこのテーブルの上に堂々と置かれているエロゲは廃棄しても後悔はなさそうだな」
「弟よ、無機物であろうと全ての物には魂が宿る。弟が捨てると言ったその瞬間、そのエロゲの魂が捨てられたくないと泣いて喚き始めたぞ。わかったら捨てるな。ぶっ殺すぞ」
「未練たらたらじゃねーか」
「ふと思ったんだが弟よ、私が今まで振りかざした正義というのは、己を正当化するための道具に過ぎなかったのではないか……?」
「脈絡なくなってきた……」
「なんだか悟り過ぎて浮けそうな気がしてきたぞ弟よ」
「ついに姉が麻原○晃みたいなこと言い出した」
「いやまじでまじで、ほらちょっと浮いてね?」
「浮くか馬鹿。アホなこと言ってないでさっさと寝……あれ?」
「ねえ弟マジで見てって、浮いてね? 5cmほど浮いてね? 今目閉じてるから自分じゃわかんないの! ねえ恐い! 浮いてる!? ちゃんと見てえええ!」
「5cmどころか……50cmは浮かんでいるような……え……?」
「あっ! なんか飛べそう! ホラホラ! 謎の壁に押しやられて自動シフトしていくマリオのごとく動いてる! ねえちょっとこのまま出かけてきていい!?」
「あ、うん……あまり遅くならないようにな……」
「ひゃっほい! じゃあちょっと行ってきまーす!」
「疲れてんのかな俺……」
みたいな感じの夢を一昨日見ました。作者が。
次回から長めのネタ用意してきます。