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54話 姉弟を怒らせる方法part4

~姉弟を怒らせる方法16~

『便乗』


「弟よ。私、ヒッキーを引退して作家を目指そうと思うのだが」


「まさか。お前がか、姉がか。マジかよ、ついに姉にも夢が出来たんだな。ちょっと待ってろ、赤飯炊いてくる」


「わざわざそんな大仰なことはしなくて結構。それより私の夢を語らせてくれ」


「おぉ、語れ語れ。是非聞いてみたい」


「うむ。今の私ならば、処女作で新人賞を獲得できる気がするくらいだからな」


「……どんだけの自信だ。そこまで言うなら、まず何か書いてみてくれ」


「言うに及ばず。実はもう書き上げているんだ。私は天の道を行き、総てを司る女だからな」


「どうしてだろう、嫌な予感がしてきた」


「タイトルは『UTSUZOU』。鬱蔵をモデルにした正統派わいせつ冒険ファンタジーだ」


「……」


「鬱蔵は40代の中年という設定で、彼には猥褻願望がある反面、オヤジギャグをガンガン飛ばしてくるというお茶目な一面も持っている。物語はどっかのなんか高い場所で謎のおばちゃんと出会うところで始まる。将来は映画化を視野に入れた渾身の一作だ。なんとなくだが、児童文学で有名そうな出版社あたりで賞を取れそうな気がするのだが……どうだろう弟よ」


「そのネタはまだ敏感な時期だからやめてくれ……」




~姉弟を怒らせる方法17~

『ツイッター脳』


「弟よ。お茶葉なくなった」


「そうか、待ってろ、茶葉は何がいい?」


「煎茶を希望なう」


「オーケー、わかった」


「弟が茶葉を持ってくるの遅い。腹が立つ」


「いちいちそんなこと呟かなくていいから」


「弟の到着遅延中なう」


「うるさい。ほら持ってきたぞ」


「サンクス。つーかアマツマガツチ狩りなう。強すぎワロタ。それよりアマツマガツチって早口言葉っぽくね?」


「どうでもいいわ」


「小腹空いたなう。でも夕飯までは余裕で頑張れそうだ」


「黙れ姉よ。いちいち口に出さなくていいから」


「今、お茶ないしコーヒー飲んでるやつ挙手!」


「そんな無意味な調査対象募ってどうしたいんだよ」


「ていうかこの前髪切ってもらったらパッツンみたいになってしまった。恥ずかしい。あー、しかしトイレ行きたい」


「俺が切ったから知ってるし、トイレ行きたいならさっさと行ってこい」


「髪型変えたあとに人と会うと極端に消極的になるのは私だけ?」


「知るか馬鹿」


「暇なう。寝たいけど昨日10時間寝たから眠くない」


「姉よ」


「暇なう。暇だからもっかい言うけど、暇なう」


「おい姉よ」


「なう?」


「お前それわざと言ってるだろ!」




~姉弟を怒らせる方法18~

『声援』


「どうしよう弟! ブログの日記、ほぼ8割方書き上げたのに間違ってブラウザ閉じて消えてしまったぁ! どうしようどうしよう! また書くの面倒臭いよぉぉぉ!」


「ふーん……頑張れば?」


「いや、うん。そうなんだけどさ」


「また書けばいい話だろ? だったら書けばいいじゃん。頑張れ、姉」


「……なんだこのやり場のない怒りは」




~姉弟を怒らせる方法19~

『お土産』


「姉よ。今日出張に行ってきたんだが、お土産にイナゴの形したお菓子買ってきたぞ。面白いだろ。食べてみろ」


「うわっ……うん、ちょっと頂いてみるかな」


「どうだ、美味いだろ」


「……なにこれまず……あ、いや美味いな、うん」


「ん? あぁ、そりゃよかった。全部食べていいんだぞ」


「え、うん。あー、でもこれ明日食べるわ。ポテチない?」


「ポテチ? いや今はないな」


「ないの? じゃあ今日のおやつは? 今日はおやつ抜き?」


「いや、だからこのお菓子をさ、ほら、おやつにさ」


「これを!? この妙にパサパサしてて見た目キモくて味薄くて薬みたいな風味でおまけにイナゴに刺さった串の部分がやけに邪魔な――」


「……」


「邪魔な……いや、一見邪魔なように見えて実は食べやすいこの素敵なお菓子をさ、ほら、ね?」


「……」


「素敵なね……んー、いや、うんんん……いやつまりさ、もう! 素敵過ぎて私には食えないから弟にあげるよバカやろうっ!」


「不味いなら不味いってはっきり言ってくれ……」




~姉弟を怒らせる方法20~

『過剰賛美』


「ただいま姉よ」


「お帰り弟よ。こんなに早く帰ってくるとは、まさか私が超お腹減ってことを予測していたな!? テレパス能力でもあるのか? 予知能力的な何か? 将来は大物かな?」


「あ、うん。腹減ってるのか。すぐに飯作るから待ってろ。今日はハンバーグだから」


「さすが弟。私ちょうど今日ハンバーグ食べたいと思ってたんだよね。よく姉のことを理解していらっしゃる。よっ、全国の弟の鏡! 日本一!」


「ていうか今日ハンバーグ食べたいってメールしてきたろお前」


「そんな些細なメールを覚えているなんてさすが弟! 流れるに石と書いて流石弟! もう流石弟者にするか? ってくらい流石弟!」


「意味が分からんけどそれは色々とマズい気がする。ていうかすぐ作るから大人しく待ってろ」


「フライパンを扱う手つきも超一流だね! 将来はシェフですか? 行列の出来るお店の料理長さんなんですか? その料理で彼女も落としちゃった口なんですか? ん? あ? んん?」


「うぜぇ」


「うざがる弟の横顔も格好いいですねぇ様になってますねぇ。よっ日本一!」


「愚姉よ」


「弟日本一!」


「おい何が目的だ愚姉よ」


「来月から小遣い上げろ日本一」


「嫌だ」


「チクショウ日本一」

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