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42話 姉弟を怒らせる方法part3

~姉弟を怒らせる方法11~

『知ったかぶり』


 こんにちは、弟です。押し入れの中を掃除していると、昔旅行用で買った1000円のマグネット将棋が出てきました。

 姉がそれを見て「ほう将棋か。いやぁ学生時代は私も将棋で腕をならしたなぁ」と言うので、俺は姉に将棋を一局相手にしてもらうことにしました。

 姉が一瞬気まずそうな顔をして言います。


「え、あぁでもそろそろ飯の用意しなくていいのか弟よ。ほら、もうこんな時間」


「まだ4時じゃないか。一局だけだから。な、頼むよ姉。昔は強かったんだろう?」


「……あぁうん、まぁね。いやでもさ、私強すぎるから弟がベソかくかもしれんぞ?」


「いい歳こいてベソなんかかくか。それに俺も結構強いぞ、もしかしたらいい勝負するかもしれないし」


「えー……」


「なんだ、何が不服なんだ姉よ。そうだ、何か賭けしないか? その方が燃えるだろ」


「え……じゃあ私が勝ったら弟のモミアゲを全部引っこ抜く。そんで私が負けたら弟の眉毛を全部引っこ抜く。これでどうだろうか」


「どっちに転んでも俺の毛が消失するじゃねーか。簡単にデコピン3回とかでいいだろ」


「デコピンとか、弟もガキだな。あっ、そうだ。私用事思い出した。早く部屋に戻らなくては」


「引きこもりの用事ってなんだよ。どうせネトゲとかだろ? ゲームなら後でできるんだから、将棋やろうじゃないか姉よ」


「し、しつこいなぁ。将棋も後でできるだろ。それに今は将棋やる気起きないんだよ。また今度相手してやるから、な?」


「……まさか姉よ」


「な、なんだ」


「お前、俺に負けるのが怖いんだな?」


「……は?」


「さっきは大口叩いといて、実はあんまり強くないんじゃないか? ははっ、全く姉の悪い癖だな。引きこもりやニートってのはどうしてこう妄言ばかり吐くんだろうな。自分はやればできると思ってるが、実際はやれない、やることが出来ないんだ。だからいつまでもヒキニートなんだ。違うか姉よ?」


「かぁっちーん。あぁーキレたよ今。完っ全にキレたよ私。ちょっ、そこに盤を置け弟。ぶちのめしてやるよ。私のこの鉄拳で」


「何で拳なんだよ。普通に将棋で勝負だろ」


「あぁうるさいうるさい。さっさとやるぞ。ほら駒並べろ」


「よし、やっとやる気になったか」


 俺は久しぶりの将棋にわくわくしながら駒を並べていきました。姉は黙って駒を並べる俺を見つめてきます。


「……姉よ、駒の配置手伝ってくれないか」


「嫌だ」


「何故だ。姉も早く始めたいだろう。手伝え」


「それは……あれだ。そう、私は弟が駒を並べる姿を見ると性的興奮を覚えるんだ。だからこのまま鑑賞させてくれ」


「何だそのとってつけたようなマイナー性癖は。ほら、俺の陣形の駒は並べ終わったぞ。姉の方は姉が並べろ」


「……うぅ」


 姉が小さく呻き、しぶしぶと駒を並べていきます。


「……姉よ、並べ方おかしくないか?」


「これが将棋の新ルールだ。弟はそんなことも知らんのか」


「俺の王将のすぐ前に姉の金将置くとか、初っぱなから王手じゃないか。一体どこのアホが考えた新ルールだよ」


「ええっと……そうだ、かの巨匠・レクイエム貴久が考えた新ルールだ。弟は何も知らないんだな」


「誰だよレクイエム貴久って! どこの新人お笑い芸人だよ! っておいおい、どんどん奇妙な配置していってるし」


「これは将棋界伝統の十八の守りの型、蜘蛛固めだ」


「それらしい名前挙げてるがそんな型ないから。姉よ、お前もしかして将棋のルール知らないのか?」


「そそそそんなわけないだろ弟よ。ほら、私の配置は終わったぞ! さっさと勝負だ!」


 ――十分後。


「……参りました」


 前代未聞の新ルールとやらを加えたマグネット将棋盤を前に、姉が深々と頭を下げていました。


「……参りましたっていうか、これは将棋にすらなっていなかったぞ姉よ」


「いや、ぶっちゃけると将棋のルール忘れてただけなんだ。許してくれ」


「忘れてたってレベルかこれは? いい加減ルールすら知らなかったことを認めたらどうだ姉よ」


「いや認めん。私は学生時代に85段まで上がったことのある超猛者だったのだ」


「将棋界どんだけインフレしてんだよ」


「弟は何も知らないなぁ。今は99段まで階級があるんだぞ? 弟は何も知らないなぁ」


「こいつ認めねぇ……」




~姉弟を怒らせる方法12~

『ノリツッコミ』


「あーしまった。なぁ姉よ。今日スーツを買おうとしたら間違ってレディース物を買ってしまったんだ。しかも6万だぞ6万。姉よ、もったいないからお前が着てみないか?」


「全く仕様がないな弟は。せっかくだから着てやるとするか。んで着たからには働かないと宝の持ち腐れだよな。よーし、じゃあいっちょ明日からハローワーク行ってみっかー、って馬鹿野郎! 行くわけないだろ! くふふ、弟のネタ振りは面白いなぁ。もー、私が働くわけないだろー! ははは!」


「……一瞬でも期待した俺が馬鹿だったか」




~姉弟を怒らせる方法13~

『占い狂』


「弟よ、お前星座なんだったっけ」


「俺か? 俺は獅子座だな」


「そうか。この占いの本によるとな、獅子座の今日の運勢は過去最悪だそうだぞ」


「そうなのか。どんなことが書かれてるんだ?」


「うむ。この本によると獅子座の人間は今日中に確実に死ぬそうだ」


「どんな占いだよ。全国の獅子座の人間が死亡したらえらいことになるだろうが」


「でもこの占いはよく当たるんだ。弟とも今日中にオサラバか。まぁ弟には多額の保険金をかけているから私の生活は当分安泰だな」


「んな占い程度で死んでたまるか……っておい、何だ保険金って。初耳だぞ」


「細かいことを気にするなよ弟よ。A型の悪い癖だぞ」


「もはやこれは血液型云々の話じゃないだろ。保険金がなんとかって話を詳しく聞かせてもらおうか」


「嫌だ。さっきタロット占いしたら『今日一日は絶対に秘密を口外してはいけない』と出たんだ」


「……口外したらどうなるんだ?」


「私が一生職に就くことができなくなるらしい」


「何だその姉にばかり都合がいい占いは。デタラメを言うんじゃない姉よ」


「どうしても真実を知りたくばこの水晶に聞いてみるがいいぞ弟よ。せっかく通販で買ったんだから有効活用してくれ」


「……なんだこの立派過ぎる水晶は。いくらしたんだ?」


「定価で132000円」


「ちょっと待て。どうやってそんなものを買った。まさかまた俺の預金通帳から……」


「安心しろ弟よ。この水晶、期間限定セールで格安購入したんだ。50%オフで66000円だった」


「充分高いわ」


「でな、ちょっと聞いてくれ弟よ。これと同じ水晶、人からの紹介だとなんと――」


「聞かん」


「弟よ、ちょっと話を聞こうか」


「断る」


「ねぇちょっと聞いて?」


「断る」


「ちょっと聞こう!? お願いだから! ちょっとだけだから聞こうか!?」


「……一応聞いてやる」


「この水晶、人からの紹介だと、なんとさらに90%オフで6600円で買えるんだ。しかもなんとなんと! 人を一人紹介するたび、私には一万円がキャッシュバックされるという神システムになっているのだよ!」


「……」


「……今ちょっと怪しいと思っただろ弟よ。しかし安心しろ。この水晶の占いによるとな、この方法で稼いでいけば私はいずれ幸せになれるそうだ。だから安心して買ってくれ、頼むから。そしてできれば会社の同僚にもこの水晶を勧めてくれ。一緒に億万長者を目指そうじゃないか」


「頼むからいますぐに返品してきてくれ姉よ……」




~姉弟を怒らせる方法14~

『ヤフーオークション』


「最近な、どうやったらうちの家計が潤うのか私なりに考えてみたんだ」


「ほう、ニートの割には殊勝な考えだな姉よ」


「そこで私が思い至ったのがヤフオクだよ」


「あれか、ネット上で品物をオークションにかけて取引するっていう」


「そう、あれだ。私はあれでどうにか小金を稼げないものかと思案してみた。初回限定版のエロゲやCDを売るか? いや、それは絶対に駄目だ、あれは私の財産だ、絶対に売れない。ならば私の女物の私物をオークションにかけて馬鹿な男共を釣り上げるか?

と、そんな感じで考えを巡らせたわけだよ」


「ふむふむ」


「それで私は思いついた。そうだ、弟の私物をどうにか売れないだろうか!」


「ふむふ……」


「私は急いで弟の部屋に忍び込んだのさ。そして弟の私物を数点横領した」


「……」


「私は一か八かで弟の脱ぎたてのTシャツをヤフオクに出品したのだ。もちろん弟の顔写真を添付してね。そしたらなんと! 腐女子だかホモだかがわらわらと入札してきたのだ!」


「……姉よ」


「かなりの高値で落札されたんだぞ! 喜べ弟よ、お前にもちゃんと山分けしてやるからな!」


「姉よ。お前はどうしても俺の姉なのだ。どんなに嫌がらせを受けようとも戸籍上それは不変するこのない事実なのだ。逆に聞こう。どうすれば俺の姉を辞めてくれる?」


「……どんだけ私のこと嫌うんだよお前」




~姉弟を怒らせる方法15~

『2ちゃんねる脳』


「今日もお茶が美味いな、弟よ」


「そうだな、姉よ」


「おっ、テレビでまたオタク特集か。どうしてこう、テレビは見た目が悪いオタクばっかり映すんだろうな。今どきはイケメンオタクだって大勢いるだろうに。これは印象操作だ。これだからマスゴミってやつは」


「マスゴミって、いくらなんでもあんまりな言い方だな姉よ。報道側もきちんと仕事を全うしてるだろう」


「なんだよ弟。マスゴミなんか擁護するんじゃないよこの情弱め。やつらの報道なんかほとんど嘘で塗り固められた虚構の代物だ。ネットこそが真実だ。本音と本音が飛び交うガチのリアルなんだぞ」


「とことんひねくれてるな姉は。しかしテレビよりネットの方がやる時間が長いから仕方ないのか。姉がそんなに嫌がるならチャンネル変えるぞ。……お、クイズ番組やってるじゃないか」


「あぁこれな。これは自称天然系アイドルや若手芸人がウケ狙いでわざと答えを間違ったりするんだ。クイズ番組のくせに番組で変な曲出したりするし、何がやりたいんだろうなこれ」


「姉よ、分かっててもそれを口にするのはタブーだろう。それをひっくるめて素直に楽しむのがいいんじゃないか」


「何を言うんだお前は。とことんパンピーだな弟は。こんな番組を好んで見るやつは全員ゆとりだ。ゆとり乙」


「お、おつ?」


「テレビはやらせばっかりだ。スポーツの結果と一部のニュース以外、私は信じないね」


「流石にその考え方は病気じみてるぞ姉よ」


「病気なのは目の前の情報に流されるお前ら一般人……お?」


「姉よ、揺れてるな。これは地震か?」


「じ、地震きたぁぁぁ!! さっそく2chを開かなくてはっ!」


「いや普通にNHKだろNHK!」


「だからお前は情弱なんだよ! 災害は祭り! 2ちゃんねらーたるもの、地震のときこそ祭り上げねばいかんのだよ!」


「お前らいつか死ぬぞ!」

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