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37話 姉の研究シリーズ『イタい人・前編』

 平日の夜。姉とぼうっとテレビを見ている弟です。

 ふと、あるオタクを特集した企画番組が流れ、ソファの上に寝転がっていた姉が飛び起きました。


「出た、久々に見たぞオタク特集」


「何をそんなに食いつくのだ姉よ」


「私は今ある研究をしていてね、研究者の血がうずくのだよ。あれを見たまえ弟よ」


「何故にあからさまなサイエンティスト口調。どれどれ」


 テレビ画面には典型的なオタクファッションが紹介され、そして次にアニメの絵が大きく描かれたオリジナル車が映っていました。

 痛車、という車らしいです。


「姉よ、何故ああいう車を痛車と呼ぶんだ?」


「それはな、ああいう車に対してお前ら一般人が抱く感情をそのまま表現してみれば、おのずと答えは出てくると思うぞ」


「そうだな……あんな車に改造してまともに街中を走れるのだろうか、とかかな」


「弱い。もっとストレートに表現してみるんだ」


「あんな車に乗って恥ずかしくないのか」


「まだ弱い。もっと!」


「……痛い?」


「That's Right! Excellent!!」


「……いつもよりテンション高いな今日の姉は」


 ソファから立ち上がる姉。


「そうだ、痛い車だから痛車なんだ。なんて痛快な名前なのだろう。開き直り過ぎなんだよお前ら! みたいな!? 私はそういった痛々しい存在たちに惹かれたのだよ!!」


「分かったから、分かったから座れ。テンション抑えろお前、うるさいから、今深夜だから、近所迷惑だから。とりあえず深呼吸しよう。な?」


 姉はふーふーと息を荒げていましたが、俺の説得によって深呼吸を敢行し、やがて落ち着いたように咳払いをしながらソファに座りました。


「おほん、私としたことが舞い上がっていた。まぁ待て、本題はここからなんだ」


 姉はソファの間から一冊のノートを取り出しました。

 ノートのタイトル部分には『イタい人研究ノート』と書かれています。


「もはや恒例だな……姉の何かしらのノート制作は」


「暇なときは必ずと言っていいほどこういった物を作っているぞ私は」


「この無駄な努力をどうにか労働意欲に転化できないものか……。大体予想はつくが、今回はどんなコンセプトなんだ?」


「ふむ。タイトルにある通り、日本全国に頒布するイタい奴らの特徴をまとめたものだ」


「まんま過ぎる。姉にしては恐ろしいくらいにそのまんま過ぎる返答だな」


「……お前私を変人か何かと勘違いしてないか。まぁいい。今回もジャンル別にデータをピックアップしてあるからな。さっそく見てみろ」


「まぁ全く興味がない企画ではないからな。どれどれ……」


◆◆◆


 ナルシスト・勘違い女編。

①鏡の前で髪のセットに20分も30分も時間を費やす。

②恋愛遍歴を脚色して語る。

③口癖が「これだったら私の方が~」「俺に言わせれば~」

④携帯の待ち受けが自分の顔アップの写メ。

⑤mixiのアルバムに自撮りのキメ顔がいっぱい。

⑥男で髪短いのに無理してヘアピンをつける。

⑦男をステータス(顔、身長、収入など)で選びたがる。

⑧カラオケで声をイケイケに作り過ぎているorマイクの持ち方がやたらミュージシャンっぽい。

⑨「僕イケメーン!」のネタをリクエストするとブチ切れる。

⑩普段着が色んな意味でヤバい。


◆◆◆


「イタい……これはイタいぞ姉よ」


「イタいだろ!? ナルシ・勘違いジャンルほどイタい人シリーズのトップを走れる人種はいないだろ」


「⑩番の普段着なんて、もう色んなパターンがあり過ぎて選りすぐれないレベルだな……」


「そう、私も困ったんだ。だからあえて読む人の想像にお任せする方向にしてみた」


「姉よ、今回は意外と面白いぞ。次に行くぞ次」


「おう、今日の弟はノリがいいな。次は天然・不思議系少女編だ」


◆◆◆


 天然・不思議系少女編。

①「私ぃ、よく天然って言われるんですよー。全然そんなことないですよね?」

② アニメの萌えキャラが言いそうな台詞を平気で口にする。

③年中鼻にかかったような猫撫で声。

③天然キャラで通してるはずなのに仕事ではミスをしたくないのか常に完璧にこなす。

④それでも笑って許せるようなミスだけは定期的に行う。

⑤ゴスロリファッションでファーストフード店に我が物顔で入る。

⑥どこで買ったか分からないようなマイナーな謎キャラを神のように信仰している。

⑦オリジナルの神様が脳内にいる。

⑧授業中には自分でも理解していなさそうな電波な詩をノートに書いている。

⑨やがて天然キャラを演じることに疲れる。

⑩歳を取って落ち着くと過去の自分を殺したくなり、布団の中で毎夜悶々とする。


◆◆◆


「これにぴったりの奴が俺の部署に一人いる! まだ⑨と⑩には至ってないがまさにこんな奴いる!」


「少なくとも学校や会社に一人はいるよな。⑩までいけばやっと救いが出てくるよな。むしろ⑩は萌える」


「……まぁ、姉の言いたいことは分からんでもないが」


「よし、そんなことより次だ。次はイタいと言えばこいつらを外せない。イタい人種の金字塔、オタク編だ」


◆◆◆


 オタク編。

①早口+噛み噛みでアニメやゲームを語る。

②仕草がやけにアニメキャラ臭い(話すときに人さし指を立てる、思いついたときに指パッチンなど)。

③漫画的な擬音をわざわざ口に出す(どよーん、カチーンなど)。

④電車の中、仲間と大声でオタ・腐談義。

⑤すぐに相手の好きなカップリングを否定したがる腐女子。

⑥「オタクな俺かっこよくね?」アピール。

⑦普段着でこれみよがしのアニメキャラTシャツ。

⑧エロゲで身につけた異常性癖を一般人にひけらかす。

⑨自分、二次元にしか興味ないんで(三次元に興味があっても相手にされない確率が極めて高い)。

⑩エロゲを持っていることを隠さない。むしろ持っていることを公言する。ていうかもう勧めてくる。


◆◆◆


「姉よ、これは……」


「これは激しく苦悩した。書けば書くほど自分の胸を締め付けられるようだった。段々自分がすごく恥ずかしい奴なんじゃないかと自覚させられるかのようだ。なんというセルフ羞恥プレイ」


「いや、ここまで恥をしのんで自分の存在を研究の材料として捧げられる姉は偉いぞ。まぁ何の得にもならないんだがな」


「言うな、もう何も言ってくれるな弟よ」


「あぁ……次に行こうか」


「くっ……次は思春期編だ……」


◆◆◆


 思春期編。

①校則違反がカッコイイと思って腰パン・長髪・シャツ出しor極端に短いスカート・化粧・茶髪。

②尾崎豊を崇拝し始める。

③不良キャラなのに本物のチンピラを見るとありえなくらい引け腰。

④「クールってモテるんじゃね?」と思い寡黙キャラを演じるも、結局友達を無くしてただの根暗扱い。

⑤悲劇のヒロインを気取りたいのか、毎日友達と不幸自慢大会に明け暮れる。

⑥親に反抗するも父がついにマジギレ、涙目で部屋に籠もる。

⑦自作の小説や漫画を連載、クラス中に配って回る。

⑧友達とのエロ知識競争。

⑨スポ根に感化されたのか、試合で負けたあと壁を殴って「……ちっきしょう」と号泣し始める。

⑩今でも充分イタいのに「昔は若かったなぁ」と物思いにふける。


◆◆◆


「これは誰もが一度は通る道だぞ姉よ……あぁ、なんか俺も苦しくなってきた」


「そうだな。私は二連続だからもう死にそうだ」


「……次に行こうか、姉よ」


「あぁ。次は趣向を変えて、人種ではなく状況でイタい行動をピックアップしてみたぞ」

僕も当てはまる部分が何度もありました。自作4コマ漫画をクラスに公開しまくったのは僕です。微笑ましいですね。

後編に続きます。

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