2話 パジャマ・パジャマ
静かな午後。
俺は優雅にコーヒーを飲みつつ昼ドラを鑑賞しておりました。
『行かないで! 行かないで広志さん!』
『俺の事は忘れてくれ。今日から俺は変わるんだ』
「あーあ。全く最低だな広志のやつ。由美子もさっさとこんな男見限れっての……」
いよいよドラマは佳境に入ります。俺はすっかり画面に見入っていたのでした。
『もう、終わりなのね……』
『辛いけど、お別れだ由美子』
『待って広志さん! 最後に、最後にこれだけ言わせて。私これまで生きてきて、思うの……わ「我が生涯にいっっっぺんの悔いなし!!」……だったから……』
思わずコーヒーを吹き出す俺。なんというシンクロ率。今の金切り声は……。
まぁ、言うまでもなく姉なのですが。
おもむろに二階に上がり、姉の部屋のドアを開けてみます。
「おう、弟か。何か用か……って汚っ! お前シャツが糞まみれだぞ」
「糞ではなくコーヒーだ愚姉よ。お前こそなんだ、その高らかに上げた拳は」
「ラオウの最期」
「俺の昼ドラが一気にユアッシャーだ馬鹿野郎、オラァー」
「待て弟。発情期なのはわかるが今は抱きつくな。私の青パジャマが茶パジャマに」
それから姉との押し問答の一悶着の大乱闘。
約二分半後。
「あー、どうしてくれる弟よ。私の青パジャマがすっかり茶パジャマだ」
「茶パジャマ、茶パジャマ、茶パジャマ」
「茶パジャマ、茶パジャマ、パ茶ジャ……パジャ、茶、マジャ……」
「やはり外に出ないと舌が衰えるようだな、姉よ」
「しょのようだな」
「弟して情けない……!!」
「今本気で自分が嫌になった」