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21話 姉の研究シリーズ『一度は使ってみたい台詞・前編』

 寒いですね。どうも12月です。

 俺は姉とともに、こたつで暖まりつつポリスアクション映画のDVDを鑑賞していました。

 アクション映画の山場といえばやはり戦闘シーンですね。派手で格好いいアクションは何か男心をくすぐるものがあります。


『おっとそこまでだジョンソン。今から三つ数えるから大人しく銃を置くんだ。いいな? ワン、トゥー……よーし良い子だ。ゆっくり後ろを向いて両手を頭の後ろに回せ』


 おぉ、なんとありきたりな台詞。


「なぁ弟よ。悪役のこういう台詞って、大抵負けフラグだよな。状況にもよるが」


 ふと、姉がそうぼやきました。


「確かにそうだな。こういうとき主人公は大概奥の手を持ってたり、もしくは……」


『レ、レイチェル! 戻ってきたのか!』


『あんたばっかにいい格好させないわよ!』


 おや、これは仲間が助けにくるパターンだったか。

 すると、姉が感慨深そうなうなりを上げました。


「なるほど王道……だがそれがいい」


「何だ、何か思うところがあるのか姉よ」


「弟よ、王道とはなかなかどうして侮れないものだな。分かりきった展開ではあるのに、こうスカッとするというか」


「まぁな。言い換えれば映画において視聴者のアドレナリンを刺激される黄金のパターンだからな」


「でも現実にはなかなか無いものだよな。こういう燃える展開とか、台詞とかさ」


「むしろこういうドラマ的な台詞はリアルで使うと違和感だよな。漫画や映画の見過ぎだろって思ってしまう」


「そうなのか? 私はどんと来い派だが。話す相手弟以外いないけど。使いたい言葉も使う機会がない」


「……」


「というわけで私が使いたくても使えなくて、普段からもんもんとしていた台詞集をノートにまとめてみた」


 いつから入れていたのか、姉はこたつの下から一冊のキャンパスノートを取り出しました。タイトルに『使ってみたい台詞集』。


「分かりきったことかもしれんが、お前ホントやることないんだな」


「かもしれないことじゃない。私にやることがなくて暇すぎることなんて、ガチで分かりきったことだ。いいから見るんだ私の傑作選」


「それに関してはもはや何も言うまい……」


 どれどれ、と姉からノートを受け取りました。見ると、夥しい数の台詞が記されています。姉は授業中の暇つぶしには困らないタイプなのだろうなぁと、どうでもいいことをしみじみ思いました。


「まずは青春・友情編。ちゃんと使いたい台詞をジャンル分けしている私に死角はない」


◆◆◆


 青春・友情編。

①「このわからず屋!」

②「オレの代わりにアイツのこと幸せにしねーと、ぜってぇ許さねぇからな」

③「オレのことは何とでも言え。けどな、アイツのことを悪く言うのだけは我慢ならねぇ」

④「ば、馬鹿! こいつとはただの幼なじみだっての!」

⑤「気にすんな、困ったときはお互い様だろ」

⑥「大人になんかなりたくねぇよなぁ」

⑦「そいつ、今から一緒に殴りにいくぞ」

⑧「なぁなぁ、○○ってクラスに好きな女子いる?」

⑨「卒業しても一緒だよ!」

⑩「なぁ知ってるか? 好きって漢字はさ、女の子って書いて好きって読むんだぜ(土手に寝転がりながら)」


◆◆◆


「待て。一番最後が意味分からんし、何となく気持ち悪い」


「青春だろ。金八先生に看過されて意味もなく漢字の作りを考えてみるあたり」


「……お前の青春の解釈はどうなってるんだ」


「いいな、青春。大人になろうとしてなりきれていないこの初々しさ」


「大人になりきれていないという意味でなら姉は現在進行形で青春真っただ中だな」


「むしろ大人になんかなりたくねぇよなぁ」


「ここぞとばかりに使ってくるな。しかもそれ姉が言うと初々しさとは違う意味になってくるわ」


「黙れ、揚げ足を取るな。次恋愛編行くぞ」


◆◆◆


 恋愛編。

①「最近4番目の女がうるさくってさぁ」

②「悪いけど、アンタと私じゃ釣り合わないわ」

③「ホントに寂しい女。そろそろ男でも作ったら?」

④「この泥棒猫!」

⑤「私と仕事どっちが大事なの!?」

⑥「金の切れ目は縁の切れ目ね。さようなら」

⑦「何勘違いしてんの? お前とは遊びだから」

⑧「それホントにオレの子供?」

⑨「靴の裏舐めたら考えてあげる」


◆◆◆


「お前の恋愛どんだけドロドロなんだよ」


「憧れるんだ、昼ドラ的な愛憎模様。でも爽やかのもあるぞ」


「……とりあえず言ってみろ」


「あんたなんて大嫌い! ……なんて嘘、大好き……」


「キモい」


「おい、ちょっとそこ動くな弟」


 みかんの皮を握って汁を俺に飛ばしてくる姉。


「目にみかん汁がっ」


「弟の意見など聞いていない。あくまで私の使ってみたい台詞なのだからな。これ以上生意気な口を聞くと今度は瞼にレモン押し込んでやる」


「何故執拗に目ばかり狙ってくるのか……。まぁいい次行くか。ええと」


◆◆◆


 成金編。

①「この棚の商品を全て頂こうか」

②「あぁ釣りはいらん。とっておけ」

③「小切手に好きな金額を書きたまえ」

④「パパー、なんであのひとたちはボロ切れみたいな服着てるのー?」

⑤「すまないな。普段カードで支払うため、キャッシュは持ち合わせていないんだ」

⑥「拾え」

⑦「諭吉サラダ食べ飽きたー!」

⑧「嘘ついたら一億円って子供の頃言ってたよなお前。お待たせ」

⑨「大したことないよ、48カラットくらいかな?」

⑩「そろそろビルの上から万札ばらまく遊びにも飽きた」

⑪「え、別荘無いのお前……?」


◆◆◆


「なんというか……納得できるなこれは。諭吉サラダ以外」


「だろう。でもビルの上から万札は小規模でも実現できると思うんだ。ちょっと預金通帳貸してくれ」


「はり倒すぞ愚姉。あと6番の『拾え』っていうのがよく分からんのだが」


「こう……跪く庶民の足元に金ばらまいて……」


「最低だな」


「あとお札燃やして『どうだ、明るくなったろう』って」


「暗くてお靴が分からない……ってやかましいわ。次は何だ」


「さっき重圧をかけたせいか若干弟がのってくれた……。次はバトル・戦争編だな。これは多すぎて300は超えたので特に使いたいものを」


「ぶっちゃけ姉ならそのジャンルで100は超えるだろうと思ったがここまでとは……」

ドトールで使ってみたい台詞をひたすら考えてたら3時間が過ぎていました。

僕も相当暇です。

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