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13話 姉vs架空請求

「なん……だと……?」


 私の携帯に届いた一件のメール。


『料金未納があります。お支払い頂けない場合は法的手段を――』


 料金請求だ。その請求額に私は身を竦めた。


「ににに、二十万だと? 馬鹿な、私がいつそんなに使ったというのだ……」


 いつぞや使った有料エロサイトか? まずいぞ。二十万なんて弟に知られたらぶち殺される。

 メールには電話番号が添えられていた。ともかく私がなんとかしなければ。

 私は携帯からその番号にかけてみることにした。

 プルルルルル。


『はい、ミラクルガール料金センターです』


「げえっ」


『げえっ?』


 電話越しに太ったような男の声を聞いて、ようやく私は気付く。

 しまった。弟以外の人間と話すのは久しぶりだったことを忘れていた。なんだこの自分でもよく分からん奇声は。


「おほん、失礼。ええと、私の携帯に請求のメールが届いたんですが」


『左様でございますか。ではお名前の方頂けますか?』


 名前? 名前だと?

 こいつ、私に名前を名乗らせるつもりか。なんとなく私のポリシーに反する気がする。さて、どうすべきか……。


「……ご、剛田ジャイ子です」


『じゃ、ジャイ子? ジャイ子様ですか?』


 とりあえず偽名使ってみたが。何だこの失礼極まりない反応は。


「なんだ、人の名前を馬鹿にするのか」


『い、いえ失礼しました。ジャイ子様ですね』


 はっ、いかん。この態度では本気で法的手段とやらに出られかねん。


「あのう、私、何かサイトの登録したんですかね」


『ええ、ですからメールを送らせて頂きました』


「えと、じゃあ何ていうサイトですか」


『ミラクルガールです』


「ミラクルガール?」


『はい、ミラクルなガールです』


「どういうサイトでしたっけ」


『アダルト画像サイトです』


「二次元ですか?」


『は?』


「私は三次元のエロには興味ないはずなんだが」


『二次元とか三次元とかってなんですか』


「え、マジか。えっとな、例えばアスカっているだろ」


『アスカ?』


「すまん、エヴァのだ」


『あぁ、式波』


「式波? 惣流だろ」


『あ、もしかして劇場版観てないですか。劇場版では式波ですよ』


「マジですか」


『マジです。映画館行ったみたらどうですか』


「無理だ」


『どうして?』


「引きこもりだから」


『あぁ……』


 なんだその哀れむような声は。


「そうだ、二次元と三次元についてだが」


『つまりアニメが二次元?』


「物分かりがいいな。そう、つまりエヴァだと私はアスカのエロにしか興味がない」


『あなた女性ですよね?』


「そうだが」


『アスカは女子中学生ですよね』


「うむ」


『おかしくないですか?』


「私はバイセクシャルだ」


『あぁ……』


 だからなんだその哀れむような声は。


「というかエヴァ知ってて二次元三次元知らないってどういうことだ」


『知りませんよ。アニメなんかドラえもんとエヴァくらいしか見ませんし』


「ふーん。おたく名前は?」


『高木です』


「高木? 高木ブー?」


『なんでそうなるんですか。いやそりゃ太ってますけどさ』


「お前学生時代のあだ名ブーだろ」


『……』


「ほら図星」


『……ジャイ子に言われたくないです』


「誰がジャイ子だ!」


『え、でもさっきジャイ子って』


「偽名使ったに決まってるだろう。本名は源しずかだ」


『それも偽名でしょ。実際しずかっていうよりジャイ子でしょあなた』


「黙れ、しずかだ」


『やーいジャイ子ジャイ子』


「ちょ、お前住所教えろ。フルボッコにしてやんよ、このブーが」


『フルボッコってなんですか? もしかして2ch用語ですか? あなたオタクですよね。ねぇ、オタクなジャイ子さんですよね』


「は? お前オタク馬鹿にしてるのか。許さん、マジで許さん」


『またそんな強がっちゃって。どうせ引きこもりだから住所教えても来ないでしょ?』


「む、確かに。じゃあ私の住所教えるから来い。私の弟発案のデスゲームで心臓ぐっさりだコラ」


『はいはい、どうせデタラメな住所言うんでしょ』


「は、言うし。ガチ住所言うし。よく聞いとけ。東京都練馬区――」


―――

――


「というわけで今度請求業者とマジバトルすることになった。投げやすい包丁買ってきてくれ弟よ」


「お前ら馬鹿だろ」

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