11話 姉の研究シリーズ『人間観察・中』
気を取り直して三日目を読んでいくとしましょう。
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九月三日(木)
今日は朝からお腹が痛い。
この痛みを弟にうったえてみると、弟はニヤニヤしながら「どうせ便意と勘違いしてるんだろ?」とか言って来た。下品だ。セクハラだ。
女の子が○んことかするわけないだろうが。出すのはうん○じゃなくてマシュマロだ。
まて、それはそれでなんか気味が悪い。逆にそのマシュマロを食べてみたらなんて考えてみると微妙な心境だ。
いや、何考えてるんだ私。落ち着け落ち着け。
ともかく私はひとまず弟の言葉を信じ、便……もといお花を摘みに行った。
戻ってみれば案の定、弟は例の下衆なにやけ面を晒し、「どうだ、腹痛も治っただろ」とか言ってきた。やはりこの顔、セクハラだ。
こんなんで彼女がいるというんだから驚きだ。
まさに天地がひっくり返る。明日は雷でも降るんじゃないだろうか。きっと大地も割れ、死傷者は数万人を超すだろう。そして国会議事堂は崩壊。ゴジラが暴れ出し、東京タワーを壊したり造り直したりという意味のない行為を繰り返すのだ。世界はどんどん崩壊の一途を辿っていく。そして200X年、世界は核の炎に包まれた。おかしな肩当ての付いたライダースーツを着たモヒカンの男共が「ヒャッハー」とか言いながら市民の生活を脅かす。もちろん背中に北斗七星を刻んだ男は現れない。なにもかも全部弟が彼女なんか作ったのが原因だ。死ねばいいのに。
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「お前どんだけ彼女が出来たことが気に食わないんだ」
「ぶっちゃけ死んで欲しいとさえ思っている」
「わざわざぶっちゃけんでもおもっくそノートに書いてあるわボケ」
やっと人間観察らしくなってきたと思ったらこの有様。俺ニヤニヤしてただけじゃねーか。というかニヤニヤした覚えは断じてないです。なんにしても人間観察じゃない。
三日目はひたすら俺の彼女についての妬みと嫉妬。読み飛ばしましょう。
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九月四日(金)
鬱だ。
鬱なんて言葉を軽々しく使いたくはないが、でもどうしても言っちゃうくらい鬱だ。
何に対してもやる気が出ない。何だろうこの全身の倦怠感は。
ネトゲも今日は六時間くらいしか出来なかった。
今日はこれで終わり。
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完全に姉の日記です本当にありがとうございました。
気持ちいいくらいに姉の日記です。俺の観察など微塵もする気はありません。ブログでやってろ。
「その日は鬱過ぎて人間観察など頭になかった。とにかく何もする気が起こらなかったのだ」
「とか言ってちゃっかりネトゲ六時間もやってんじゃねーか」
「ネトゲは別腹だ」
「デザートみたいに言うな愚姉」
……さぁ五日目。もはや読み進める作業です。姉は最後までちゃんと読めオーラ出してるし。だれか時給出してくれ。
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九月五日(土)
弟が誕生日を祝ってくれた。嬉しい。にしてもあれは焦らし過ぎだ。
しかし弟がツンデレだということが発覚した。プレゼントを渡すときなんて頬を赤らめていたではないか。きっとクラスの女子から「カワイー」とか言われて大激怒しちゃうタイプだ。
そうだ、ツンデレの黄金比は9:1というではないか。何気に弟は完璧だ。
む、なんとなく人間観察っぽくなってきたな。
よし、あとは弟が私のエルボーで失神したときの様子でも書くか。
そうそう、失神した直後、弟は泡を吹き出した。あんなの漫画かアニメでしか見たことがない。ガチでビビった。
救急車を呼ぼうかとも考えたが、やめておいた。
そもそも私は人見知りなので救急隊にこの状況を上手く説明できないだろう。それに弟のことだ。この程度で死ぬ男ではない。多分。
しばらく眺めていると、突然「ふーじこちゃーん」とか寝言言い出した。
お前はプールの飛び込みさながら服を脱ぎつつ美女にとびかかるモミアゲ猿頭か。
気色悪かったので二、三回ド突いてやった。ついでに鼻つまんだ。
泡で口がつまっているのか、弟は息苦しそうに痙攣を始めたが、私はお構いなく口も完全に
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「お前は鬼か!」
「お前が誕生日を焦らし過ぎたのが悪いんだろ」
「そんなことで生死の淵を彷徨う俺の身にもなってみろ。夢に見た三途の川はエルボーだけのせいじゃなかったというわけか……」
「天国の両親は見えたか?」
「黙れ。もう六日目に移るぞ」
切りが悪くてすみません。関係ないけど歯医者怖いです。歯茎いじられまくりました。切りが悪いのも歯医者さんのせいです。
嘘です自分のせいです。