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ゲラゲラコンテスト

作者: 芳田文之介





「いやあ、どうもどうも。東海道中膝栗毛のヤジで―す」「キタで-す」


ボケのヤジ「それにしても、キタさん、久しぶりですね」


ツッコミのキタ「あ、そう言われればそうですね。ここんとこ新型コロナの影響で、あんまり仕事がありませんでしたからね。ヤジさんの顔、久しぶりに見ました」


ヤ「実は、ぼくたちコンビ組んでるんですけど、めっちゃ仲が悪いんですよ。なんで、プライベートでは全然顔を合わせないんですね」


キ「めっちゃ仲が悪いってなんですか。人聞きの悪い」


ヤ「けど、こうして仕事がないと、まったく顔を合わせないっていうのは本当でしょ」


キ「まあ、たしかにそうですけどね。でも、他の芸人さんなんかもそうらしいですよ。営業で地方なんかに行くと、それこそ四六時中顔を合わせてますからね。プライベートまで顔を合わせてるのは、ちょっとねえって感じで」


ヤ「たしかにそれはありますが、ぼくなんかは、あれですけどね」


キ「なんですか」


ヤ「本当は、仕事でも会いたくないんですよ、キタさんとは」


キ「な、なんてこと言うんですか。そもそも、ヤジさんの方から、わたしとコンビを組みたいって言ってきたんですからね。もう忘れたなんて言わせませんよ」


ヤ「あ、みなさん、本当なんですよ、これ。あの時は、魔が差してしまいましてね。ついコンビを組ませてくださいって、ぼくの方から」


キ「魔が差して、ついって、あなた」


ヤ「いやあ、ぼく、そういうことがしょっちゅうあるんですよ。それがぼくの悪い癖でして。嫁さんなんかもね、そうなんですよ。魔が差してしまいましてね、それで、ついコンビを組みましょなんて言っちゃってね」


キ「あのねえ、嫁さんとはコンビを組むとは言いませんけどね。それに、魔が差して、ついプロポーズしちゃったなんて言ったら、奥さんに叱られますよ」


ヤ「あ、うちの嫁さんおっかないんだった。みなさん、これは聞かなかったことにしておいてくださいね。つい口がすべっちゃったんで」


キ「それにしても、あなたは、ついの多い人ですね。けど、聞かなかったことにって言われましてもねえ。みなさんだって、つい口が滑って誰かに言っちゃうかもしれませんよねえ」


ヤ「あ、人のついを取った」


キ「はは、取ったってなんですか」


ヤ「コンビだけに、『つい』取った。なんちゃって、ヤジっちで-す」


キ「あのねえ、それこそ人のを取ってますからね。怒られますよ」


ヤ「あ、そこのお客さん、首かしげていらっしゃいますけど、大丈夫ですか。ついてこれてます」


キ「こら、そういう失礼なこと言わないの。わかっていらっしゃるんですよ、ねえ。コンビを訳すと対だからでしょ」


ヤ「まあ、そういうことですけどね。それはともかくとして、あれですね」


キ「今度は、なんですか」


ヤ「その点、ぼくの兄貴なんて、嫁さんと一緒に理髪店やってるんで、まさに四六時中顔を合わせてるんですよ」


キ「ああ、そういう方いらっしゃいますよね。夫婦で一緒に仕事していて、職場でも、家庭でもいつも一緒にいるって方が。それにしても、あれは、あきないんですかね」


ヤ「え、そりゃ、あきないでしょ」


キ「そりゃまた、どうして」


ヤ「だって、ぼくの兄貴は夫婦で理髪店を営んでいるわけでしょ」


キ「そうですね。あ、わかった、わたしたちみたいにコンビで仕事してるから、あきるわけにもいかないと」


ヤ「違いますよ。そうじゃなくて、商売してるんですよ。なんで、商売だけに、あきないって。ヤジっちで-す」


キ「あ、今度は、いろんな意味で取った。もうやめさせてもらいます」



おしまい

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