第九節 一項 ダレカノキオク
「......作戦の進行は予定通りか?」
「あぁ、問題なく進行している。奴らにも勘付かれてはいない様だ。」
「ならいい。奴らは敵と見なした者には容赦なく襲いかかってくるからな。お前達も用心しろよ。この作戦がバレたら、全面戦争がすぐに勃発してしまう。今、奴らと全面戦争になったらこっちに勝ち目はないからな。」
リーダー格の男が他の男達に脅しをかけると、男達は無言で頷く。
コンクリートが剥き出しになっている壁。1つのランタンによって照らされた部屋。部屋の真ん中には1つの会議室用のデスクが置いてあり、その周りに数人の男が立っている。部屋に窓はあるが外からの音は全く聞こえない。
すると部屋の奥から、白い装束の服を着た男がやってきて男達に向かって言葉を紡ぎ始めた。男達は装いを正し、言葉を受ける。
「これから行われる作戦は、我々の未来を大きく左右するほどの作戦です。双方ともに多くの犠牲を払うことになるであろう。しかし、我々は犠牲を払ってでもこの作戦を成功させなければならないのだ! 我々の神が遺した道標に従うために。」
男は、聖書の様な本を胸の前に持ち言葉を紡いでいる。それは周りにいる男達も同じだ。男達の姿はまるで、私達は神に従う従順な信徒であることを改めて宣言しているようだ。
「奴らが我々から奪っていったのは、神の生まれ変わりである巫女だ! 神の生まれ変わりである巫女を失うことは神の意思とは反している。あってはならない現実を修正するためには、我々から巫女を奪っていった奴らに、神の制裁を下さなければならない。」
男の紡ぐ言葉に、力がこもっていく。
「さぁ今こそ、我々の神への忠誠心を示す時です! この不届き者達への神の制裁を。作戦は、6月2日の8時45分より開始とする。皆心して掛かるように。神の加護があらんこと。アイシュエント。」
「アイシュエント。」
白装束を着た男が放った最後の言葉を、他の男達も繰り返す。
この作戦が、この先に待ち受ける地獄の始まりであった......




