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第八節 登校その二

家を出発した俺達は、15分歩いて駅に着いた。岬の方を見ると、少し汗ばんで見えた。無理もない、今は6月。段々と夏を感じる時期だ。おまけに駅までの道のりは坂、汗をかくなと言う方が酷だ。言っている俺自身も汗をかいてるし。

すると駅の方からアナウンスが流れてきた。

まもなく1番線に急行猿ヶ浦行きがまいります。危ないですから黄色い線の内側までお下がりください。


「ああっ!! 電車が来ちゃう!! 先輩早く行かないと!!」

「あ......あぁ、わかってる。」


少し気が抜けていたせいで反応が遅れた。俺たちは急いで改札を抜けて電車に乗り込んだ。


「はぁ......はぁ......はぁ......、まっ......間に合いましたね.......」

「そっ......そう......だな......ヤバかった......これに間に合わないと......遅刻......するからな......」


駅構内を全力疾走したから、俺達は車内で荒い呼吸を整えていた。改札を抜けた時に、駅員の怒鳴り声が聞こえた気がするが、気のせいだろう。......多分。


「せっ......先輩、さっき改札を通り抜けた時、駅員さんの怒鳴り声が聞こえた気がするんですが......」

「気にするな、空耳だ。」

「そっそうですか......」


そう、空耳だ。気にすることはない......もし聞こえたとしても、あの場では止まれなかった。なぜならば、俺達は遅刻しかけてたからだ。みんななら、どっちを取るか? 立ち止まって駅員の説教を受け、さらに遅刻をして生徒指導に呼ばれて怒られるか、無視して走り抜けて遅刻を回避するか。

そんなの決まってる。走り抜けるに決まってるだろ!! 怒られるより数百倍マシだ。うちの生徒指導に呼び出されて帰ってきた生徒は、まるでこの世の全ての地獄を見てきたかの様な顔をして出てくると、有名だからな......そんなのに絶対呼ばれたくない。

電車はどんどんスピードを上げていく。次第に電車は山岳地帯を走行するようになった。その10分後に車内のスピーカーから、車掌のアナウンスが流れた。


「ご乗車ありがとうございました。まもなく宇海本町、宇海本町です。お降りの際、お足元にお気をつけください。白縫線(しらぬいせん)はお乗り換えです。お出口は左側です。」


いつも通りのアナウンスが流れ、電車は宇海本町駅に停車した。宇海本町駅は2面4線の駅だ。2番線と3番線は、俺達が乗っている五峰線(ごほうせん)。1番線と4番線が白縫線だ。

乗っていた乗客のほとんどが白縫線の方に乗り換えるか、宇海本町駅で降りて行った。俺達は空いた席に座った。


「いや〜やっと座れましたね〜」

「だな。でも乗ってる時間は20分ぐらいのことなんだがな。」

「そうですけど、しょうがないじゃないですか。駅では走るし、電車の中は混んでるからめっちゃ疲れたんですよ。」

「まぁ確かに混んでるのいつも通りだけど、走るのはイレギュラーだったからいつもと比べると疲れたな。」


そう言って俺は少し足を伸ばして座り、岬も少しゆったりとした感じで座った。

俺は、まだ五峰線がここまで混んでいなかった時のことを思い出しながら話を続けた。


「少し前までは、通勤ラッシュでも席に座れるくらいの余裕はあったのになぁ。今や都心の様に鮨詰め状態だ。」

「そうだったんですか? 今の姿を見ると想像もつかないですけど......」

「まぁだろうな。五峰線が混雑路線になったのも、猪田駅周辺で行われてた再開発が終わって、多くの人達が猪田市に移住してきたからな。」

「もしかして、電車の行き先が猪田ばっかりなのも......」

「再開発が終わってからだ。」

「えぇ〜〜! じゃあ諸悪の根源は全て猪田市にあるじゃないですか!」


猪田駅があるのは、俺達が使う桐真駅の二つ前の駅だ。五峰線を走る電車のほとんどが猪田で折り返すため、桐真駅に来る電車は1時間に3本程度しかない。つまり、15分に一本しか来ない。それに対し猪田駅は5分間隔で来る。かなりの差がある。だから俺たちは、1本電車を逃すだけで遅刻をしてしまうのだ。で、乗った先には混雑が待っている。だから岬は、諸悪の根源は猪田市にあると言ったのだ。


「そうかもしれないが、ここは電車の中だ。少しは声のボリュームを下げた方がいいぞ。」

「あっ......」


そう言うと、岬は車内を見渡した。するとそこには、ジロリとこちらを見る乗客の姿が。電車の中で大声を出すのはマナー違反だ。でも直接注意はしない。その代わりに目線でわからせようとしてくる。岬は目線の攻撃を真正面から食らってしまい、何も喋らなくなった。

電車は静かに宇海本町を出発した。





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