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第四節 家にてその二

着替えが終わった父さんが降りて来たので夕飯を食べ始めた。


「あぁ、やっぱりレイちゃんの手料理はうまいなぁ。」

「ふふっ。ありがとう。ユウちゃん。」


相変わらずのラブラブっぷりに辟易していると、父さんが聞いてきた。


「そうだ。最近岬ちゃんと仲良くやってるのか?」

「ん? あぁ仲良くやってるよ。放課後、毎日飽きもせずに俺の所に来てるよ。」

「そうか、それならいいんだが。」

「あっそうだ。母さん、明日岬にファミレスで勉強を教える事になったから晩飯はいらないよ。」

「そう? わかったわ。じゃあ、明日出るときにご飯代渡しておくわね。」

「ん。ありがとう。」


明日の事を母さんに伝えて、飯代を貰う事も確約出来たから明日の事は安心だ。

そう思っていると、母さんがとんでもないことを言ってきた。


「明日は岬ちゃんと一緒にいるんでしょ? だったら遅くなってもいいわよ。何なら朝帰りでも全然大丈夫だからね? あっそうだわ、明日お金を渡す時にご飯代だけじゃなくて休憩代も渡しておこうかしら?」

「......は?」


満面の笑みを浮かべながら、いったい何を言ってるんだこの人は? 自分の子供になんてことをさせようとしているんだ。はぁ......父さん......あんたの嫁をなんとしてくれ......

助けを乞う目線で父さんを見ると、そこには札を持った父さんの姿が......


「いやその金は俺が出そう。ユキ? そのときが来たらちゃんと、岬ちゃんの同意を得ろよ。」

「.........は?」

「そうよ? ユキちゃん。岬ちゃんの意志も尊重しないとダメよ」

「......」


あぁ、俺が父さんに助けを求めるのは間違ってた。そうだった、父さんもこの手の話が大好物だってことを忘れてた...... そもそもなんでこんな話になったんだ? 俺は明日晩飯はいらないって言っただけだよな? なぜだ...... あぁ俺がバカ正直に岬といるって言ったからか......誤魔化して友達といるとか言ってればよかったのか......悔やまれる。

でもなんで、母さん達は俺が好きだと思ったんだ? 気になるのなら聞いてみるしかない。


「ねぇ? なんで俺が岬の事を好きだと思ったの?」

「そりゃあ、いつもユキが岬ちゃんと一緒にいる時の顔を見ればわかるよ。」

「そうそう。ユキちゃんたら私達といる時よりも幸せそうな顔してるのよ。私達が嫉妬しちゃうくらい。」

「......」


隣を見ると父さんもうんうんと頷いている。そうなのか? 俺は岬といる時間が好きなのか? 確かに俺は岬といると落ち着くし、岬にもっと何かしてあげたいという気持ちはある。でもそれが好きと言うのに繋がるわけが......


「それが好きということなんじゃない?」


母さんは俺を見透かした様に言った。


「なんで......わかったの?」

「それは、顔を見ればわかるわよ。」


うんうんと、また父さんが隣で頷いてる。そんなにも俺は顔に出るタイプなのか? でも俺が考えてた事に対して、返すように話したことを見るとそうなのだろう。認めるしかない。俺は顔に出るタイプらしい。

そんなことを考えていると、母さん達が言葉を続けた。


「ユキちゃんが1年前に、旅行先から連れて来た岬ちゃんを見て私達はびっくりした。だって体も服も髪もなにもかもがボロボロの女の子を連れて来たんだもの。でもびっくりしたと同時に、この子はユキちゃんを大きく変えてくれる存在になるって思った。」

「ユキが岬ちゃんの事を説明している時の顔を俺は今でも覚えてるよ。なぜかって? ユキが一度も見せた事のない真剣な顔で俺たちに話していたからだ。」

「......そんなに真剣に話してた?」

「そうよ! 旅の事以外何も興味を示さなかったユキちゃんが、旅の事以上に真剣に話してたもの。」

「......」


確かにあの時、俺は岬の事を助けるために躍起になっていた。それは、岬が置かれていた環境があまりにも見ていられなかったからだ。でもやろうと思ったらもっと早く助けることは出来たはずだ。俺がもっと早く助けられたら岬は苦しむことはなく、岬に傷跡を残すことにはならなかった。岬がこの先苦しむことなく、楽しく生活できるようにする。言わば罪滅ぼしみたいなものだ。たとえ俺が岬を好きだとしてもそれは、思ってはいけないことなんだ。


「......岬ちゃんがあんな状態になってしまった事は、ユキのせいだと思っているかもしれない。でも悪いのは、あんな状態にまで追い込んだあの連中が悪いんだ。だから、ユキが責任を感じることはない。むしろあの時のユキはよくやったんだ。だから胸を張って岬ちゃんと向き合っていいんだぞ。」


バン! と俺の背中を父さんが叩いた。ガタイのいい父さんが叩いたからかなりいい音が響いた。俺はうれしいわけでもなんでもないのに、なぜだか目から涙が零れ落ちた。

母さんは優しく抱きしめ、頭を撫でながらこう言った。


「責任感が強くて、優しいユキちゃん。でも、優しすぎて背負込まなくていいことまで背負い込んじゃう。だからユキちゃんは自分を責める。捨ててもいい責任を捨てられない。捨てられないなら私達にも背負わせて? 1人で持つと重い物も3人で持てば軽く持てるよ。」


母さんの言葉に俺は耐えきれず声を出して泣いた。小さい子供が泣くように大きな声で。

涙を枯らすまで泣いた俺は、疲れて眠ってしまった。












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