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第九節 二項 異変

「......輩? 先......輩っ.....」

「う〜ん。」


誰かに揺らされている様だ。眠い。もうちょっと寝させてくれ。


「起きてくださいってば、先輩! もう着いちゃいますよ!」

「うへぇ?」


俺は重い瞼を上げた。すると、目の前に岬の顔があった。


「うわぁ!? なんで俺の部屋にいるんだ!?」

「何寝ぼけた事言ってるんですか? ここは電車の中ですよ。先輩は私と一緒に学校に向かってる途中じゃないですか。」

「あ〜〜そうだったな......何を言ってるんだ......俺は。」


そうだった。いつも通り岬が俺の家に来て、一緒に家を出たんだ。そして、桐真駅で絶対に乗り遅れちゃいけない電車に乗るために駅構内を走ったんだった......何を忘れてんだ......俺は......

俺は、朝からここまでの記憶を思い出していると、電車は学校の最寄り駅である、学園都市前を告げるアナウンスが流れた。


「ご乗車ありがとうございました。まもなく、学園都市前に到着します。お出口は左側です。左側のドアが開きますと、すぐに右側のドアも開きますのでご注意ください。学生の皆様、今日もどうぞお気をつけていってらっしゃいませ。」


学園都市前は、文字通りに駅の周辺に多くの学校が存在する。その学校は、小中高大と様々で全校人数が2000人を軽く越すマンモス校だらけだ。その学校に通う学び人が一斉に駅に来ると、駅がパンクしてしまう。だから各学校は登校時間をずらして、電車のダイヤに影響が出ない様に調整をしているのだ。俺の通う学校も例外にもれず、時間調整を行っている。そのため、駅に着くのが8時45分と少し遅めな時間になっているのだ。

すると、俺はここで違和感を覚えた。それは、もう駅が近づいているのに電車は減速するどころか加速しているのだ。この車両に乗っているのは、全員ウチの学校の生徒だから学園都市前で降りなければならない。その降りなければならない駅を、電車は通過しようとしているのだか生徒は皆不安な表情を浮かべる。

そして、電車は学園都市前を躊躇無く通過した。通過した瞬間、生徒から響めきの声(どよめきのこえ)が広がった。

それは、俺達二人も例外ではない。


「えっ!? 先輩、駅を通過してしまいましたよ!?」

「だな......普通ならオーバーランをした場合、列車を自動的に停車させるATSが作動するはずなんだが......」

「止まる気配がないですね......」

「......」


二人の間に沈黙が走る。わからない。一体この電車に何が起きているんだ......

すると、隣の車両から同じ制服を着た生徒が移ってきて、俺達に話しかけてきた。。


「お〜ユキもこの電車に乗ってたのか。おっは〜。相変わらずギリギリの電車に乗るよな、お前は。」

「そういうお前もギリギリの電車に乗ってるじゃないか、ヒロ。」

「今日は寝坊したんだよ。仕方ないだろぉ。」

「それ、毎日言ってませんか?」

「おっ、岬ちゃんも一緒だったのか。おっは〜。毎日飽きないモンだね〜たまには俺と行かないかい?」

「いえ、私には先輩しか興味ありませんから。」


そう言うと、岬は俺に抱きついてきた。


「おいっ岬! ここは電車の中だぞ! 公然の前で抱きつくな!」

「ははっ、相変わらずラブラブだねぇ〜俺が入り込む隙もないや。」

「大丈夫です、先輩。私は先輩以外とは誰とも付き合いませんから。私には先輩しかないですから!」

「愛が重いな! たまには、他のヤツとも接しろ! というか今はそんな場合じゃないだろ!」


この妙にノリの軽いこの男は、俺の幼馴染、岸波綋士(きしなみひろし)だ。金髪がトレードマーク。小中高と同じ学校で、クラスも別になったことがない。いわゆる腐れ縁というやつだ。見た目はかなりチャラいが、根はしっかりとしたいいやつだ。


すると、ヒロは今までとは全く違う雰囲気で話しを続けた。


「しかし、この状態はどうなってるんだ?」

「わからん。現状だけで言えると事としたら、この列車の乗務員に何かしらの異変があったという事だな。」

「なぜそう思う?」

「学園都市前を通過してから、およそ3分が経過したが車掌からの放送が何一つない。普通なら何かしらの放送を掛けるだろ?」

「確かに。不自然と言えば不自然ですね。」

「じゃあ、どうする? このまま座って何もしないでいるか?」

「そんな事する訳がないだろ。運転士か車掌のどちらかに事情を聞きに行くさ。」

「だよな。じゃあ、俺はケツの方に行ってみるからユキはアタマの方を頼むぜ。」

「あぁ、わかった。 岬はどうする?」

「私は、先輩について行きます。」

「よし、そうとなれば決まりだな。じゃあ、またこの車両で合流しよう。」

「了解。」


俺たちはそう言って、ヒロは車掌の方に。俺と岬は運転士の方に向かった。


 





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