銀の髪
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コンコンコンッ
あと少しで王子の手が届きそうな瞬間、部屋に静かにノックの音が響いた。
助かったー…。
ホッと息をつくと静かにリナさんが部屋へ入ってきた。
「失礼いたします。あら、坊ちゃんいらしていたのですね」
「リナ…殿下だろう、坊ちゃんなんて呼ぶのはリナくらいだぞ」
「まあ、私にとってはいつまでも可愛い坊ちゃんです」
溜息をつきながらどこか嬉しそうに話す王子とリナさんを見て、なんだかほっこりとした気分になった。
「タチアナ様、薬をお持ちししましたので塗らせていただきますね?」
リナさんの手には白いクリームが入っている瓶が握られている。
「あの!ありがとうございます。でも自分で塗れますから…」
他人に薬を塗られるなんて恥ずかしすぎる!!
手を伸ばして薬の便を受け取ろうとすると、笑顔でリナさんは手を引っ込めてしまった。
「いけません。傷が残ってはいけませんので、きっちり私が塗らせていただきます。」
うう…もう着替えを手伝って貰ってるとはいえ、恥ずかしくて耐えられるだろうか。
「薬を塗って傷を保護しましたら、一度お風呂で綺麗に致しましょう。その綺麗な髪をさらに磨かなくては!!」
リナさんが燃えている…まさかお風呂まで入れられるなんて事ないよね!?
そのやり取りを穏やかに見ていた王子をキッと睨んで、リナさんは目で王子に合図をしている。
「坊ちゃん、いつまでそちらで突っ立っていらっしゃるのですか?今から薬を塗るのです。これ以上は言わなくてもわかりますね??」
今にも手でシッシッとやりそうな雰囲気だ。リナさんすごい。
王子は不思議そうな顔で、こちらをうかがっている。
「傷に具合も確認したい、別に恥ずかしがる事だろうか??」
まっすぐな瞳でこっちを見ながらひどく不思議そうな顔をしている。
後ろのルー様が小さくため息をついて、王子へ耳打ちをした。
どんどんと顔が赤くなっていく王子。リナさんとルー様はあきれ顔だ。
「本当に申し訳ない!!私は外へ出ている!!また改めて伺う。失礼する」
バッと勢いよく立ち上がり王子は、ほぼ走って出て行ってしまった。
恥ずかしい思いはしなくて済んだけど、一瞬で女ってバレてしまった。
次に来た時に、家に帰っていいかお願いしてみようかな。
「さ、お嬢様。お薬塗りましょうね。そのあとは湯あみでございます綺麗にしますよーー」
手をニギニギにしながら近づいてくるリナさんから、どう逃げるかが今の問題だ…。
お読みいただきありがとうございました。