奴隷として
できるだけ毎日投稿を目指して頑張ります。
おかしい。絶対におかしい。不公平だ。
転生ものではお姫様に生まれ変わったり、乙女ゲームの悪役令嬢になったり、聖女だったり・・・
とにかくチート級に魔法が強かったりするのがテンプレなのに、なぜ私は今奴隷として働いているのだろう・・・・。
日差しが照りつける中、必死に鉱石を運びながら、頭に浮かぶ転生前の自分の姿、生活。
好んで読み漁ったライトノベルのストーリーとはかけ離れた今の私。
----こんなのおかしい、もしかして転生前のあの記憶は、この辛すぎる状況に耐えられないが故に生まれた妄想??
ニホンという国で必死にパソコンを叩いて、お茶くみコピー、上司の機嫌取り、無駄な噂話にニコニコ笑顔を張り付けながら、家に帰っての楽しみが愛猫との時間。おいしいご飯、ベランダにちっちゃな家庭菜園。
そんな中で最後の記憶が目の前に突っ込んできたトラックの映像。
ここで転生前の記憶はプッツリ切れている。
転生前の自分を思い出したのは、借金のかたとして売り飛ばされることが決まったショックから。
女の私が行きつく先を案じた両親がせめてもと、私を男として相手に伝えていたのが、幸か不幸か……。
そのお蔭か、そのせいなのか、今はドロドロになりながらこうやって土を掘り返し、鉱石を掘り出しているわけなんだけど。
「 おい!!そこの白髪野郎!! 」
これは白髪ではなく銀なのに。日の光に照らされて確かに透き通って見えるかもしれないけれど。それに立派な名前だって両親につけて貰えた。
タチアナ これが今の私の名前。
「 聞いているのか?!お前だ、お前!はやく穴へ入って採掘の続きをしてこい!! 」
なんとも大きな声で、太い鞭をバンバンと手に叩きつけながら叫んでいる見張り番。
黙って頭を下げる。こんな時には会社員時代を思いだす。
やっている作業は違えど、確かにあの時も奴隷だったかもしれない。なんだ、転生前と同じじゃん。
それならそれでしっくりくるかもしれない。
ははっと心の中で苦笑いしながら、またあの真っ暗で土煙がたちこめる穴へと戻っていく。
ムワっとした空気、足元に少しの光があるだけ。
道はもちろん舗装なんてされていない、むき出しの土と石。
売り物にならないような屑の鉱石が転がっていて足の裏は傷だらけだ。
トンネルはもちろん手で掘り進めるが、壁の補強は一切無い。
崩れてしまおうが、なんだろうが構わないのだろうな。
ヨロヨロとトロッコを押しながら一番奥まで進んでいく。
苦しい……酸素が薄いんだと思う。
そんな中での肉体労働は本当に辛い。
何も考えずに無心で手を動かすしかなかった。
そんな時外で大きな声が聞こえてきた。
あの見張り番の声と、もう数名。もみ合っている様な叫び声が小さく聞こえる。
気になって入口へと歩きだすと
「「「 いけません!!!!そちらは危険です!!! 」」」
そんな叫び声を背に誰かがこっちへ走ってくる。
キラキラとした金色の髪を揺らしながら、必死にこちらへ手を伸ばしている。
まるでゲームの王子様みたい・・・。なんて考えていた。
もう少しだ、というところで今度はトンネルが大きく揺れだした。
限界だったのかもしれない。支えもなくただ闇雲に横穴を掘っていただけだ。
このままでは生き埋めになってしまう。そんなのは嫌だ。
汗が垂れてくる。
このまま生きているのは辛いけど死ぬなんてもっと嫌だ。
どんどん壁が崩れてくる。
嫌だ!!死にたくない!!
そう思った瞬間体から、感じたことのない力が湧いてきた。
もしかして…これは…
お読みいただきありがとうございました。