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91.勝利への策


「奴らの精気を吸い取れだと?」


「はい。それも彼らが力を開放するその時を狙うのです」


 シオンたちが最深部へと到着する数十分前。

 ベルモットはバルガにある命令をしていた。


「奴らの精気を吸い取ってどうするつもりだ?」  


「さぁ? そこまでは私も認知していません。ですが、これはガルーシャ様からのご命令なのです」


「ガルーシャ様の……だと?」


「はい。というかむしろ都市制圧よりもこちらの方が重要なのです」


 今回の計画は主に二重展開となっていた。

 まずは最深部(ここ)に眠るドラゴンを用いて人界の主要都市を制圧すること。


 しかしそれはあくまで二の次。

 魔王ガルーシャの真の狙いは勇者たちのような人界で有力な者たちの精気を奪うこと。


 ガルーシャにとってドラゴンたちはそれらの者たちを呼び寄せるためのガジェットに過ぎなかったのである。


 だが表向きは人界の制圧。

 他の幹部たちにもそう伝えてあったためか、真の目的は計画の主導者のベルモットだけに伝えられた。


「ガルーシャ様には何かお考えがあると思われます。そうでなければこのような命令は下さないでしょう」


「本当にガルーシャ様の命令なんだな? 貴様の独断専行じゃないだろうな?」


「まさか。私はガルーシャ様の忠実な下僕です。主に背くような真似は決してしませんよ」


「胡散臭いな……」


 バルガは半信半疑だった。

 しかし証拠がない限り、言うことを信じるしかない。


「バルガ。私は貴方にドラゴンたちを任せた以上、計画の命運は貴方にかかっていると言っても過言ではありません。しっかり頼みますよ」


「ちっ……」


 バルガは舌打ちしながらも、


「……奴らの精気を奪えばいいんだな?」  


「はい。特に彼の精気はたっぷりと頂いてきてください」


「……シオン・ハルバードだな?」


 バルガの問いにベルモットは微笑すると、


「ええ。頼みますよ」


 不気味に笑い、そう言った。


 

 ◆ 



 時は開戦直後に戻る。


「くっ……!」


 ドラゴンたちの硬い甲殻に剣撃を弾かれるユーグたち。

 開戦から数分経つが、早速俺たちは苦戦を強いられていた。


「なんて硬さだ。ビクともしねぇ……」


「それに通常のドラゴンと比べて動きも鋭い。前みたものとは別次元の強さ……」


「相手は異種の上に侵食させられている。もうあれはドラゴンと呼べるか怪しい存在だ」


「確かに見た目はドラゴンだけど、力はそれを遥かに上回っている……生半可の攻撃じゃ倒せそうにないね」


「でも勝てない相手じゃない。頃合いを見つつ魔力を一気に解放してダメージを与えていこう」


「「「「「了解!」」」」」


 でもこうして戦ってみてよく分かった。

 これでは人間がどう足掻こうとも歯が立たないということを。


 現役のS級勇者と元S級勇者でも通常攻撃を跳ね返されるのだ。

 国家騎士だの近衛騎士などでは恐らく束になっても勝てる相手じゃない。


(まさか異種と侵食種の融合でここまで力を高めさせることができるなんてな……)


 この技術をもし仮に他へと応用させたらマズイことになりそうだ。


 だが今はとにかく二頭の巨竜(こいつら)を世に放たないために止めないといけない。


「グラン……!」


『やるのか?』


「ああ。みんな魔力をもう一段階解放させるぞ。全員で一頭を仕留めにいく!」


 個人個人ではやはりあと一歩及ばないので一頭集中狙いの策を取る。

 と言っても全力ではない。


 まだ魔人戦も残っている。

 ここで力を使い果たしては意味がないのだ。


(幸いにもあのバルガとかいう魔人は手を出してこないみたいだからな……)


 だが、逆に警戒すべきだとも思っている。

 あの表情は何かを企んでいる顔だ。


 攻撃してこないのも何か理由があるのだろう。


 しかし今俺たちがすべきことはこのドラゴンたちを世に放たれることを阻止すること。

 それを済ませないとここまで来た意味がない。


 俺たちは一度態勢を立て直し、聖威剣を強く握りしめる。

 そして精神を集中させ、魔力を高めていく。


「みんな、まずは白い方からやるぞ。俺が先行するからユーグは左方向、リィナは右方向、リーフは背後から回って一斉攻撃。俺は正面から攻撃を仕掛け、弱ったところで弱点を狙う」


「弱点? あいつに弱点があるのか?」


「俺の記憶が正しければ、奴らの弱点は額にある」


「額……?」


「額に魔法陣が刻まれているだろう? あそこには特殊な術式が刻み込まれている。そして同時にあのドラゴンを強化する源である魔力があそこから流れ出ているんだ」


「ってことは、あの額を攻撃して……」


「魔力を流し込んで逆流させれば、とてつもないレベルの魔力負荷が起こって内部爆散させることができるはずだ。俺とグランの力を使えばそれができる」


「なるほど。確かにそのやり方なら確実に仕留められる。でも問題はそこまでを……」


「そう。初手の攻撃でどれだけ弱らせられるかにかかっている。通常時にやっても額から溢れ出る邪悪な魔力が俺たちを寄せ付けないだろう」


「じゃあ、わたしたちの力が運命を左右するってことだね」


「面白れぇ! やってやろうじゃねぇか!」

 

「決まったな。タイミングは俺が指示するから付いてきてほしい」


「分かったよ」


「了解」


「おう!」


 作戦は決まった。


 だがそのためには攻撃のできる環境を整えないといけない。

 もう一頭のドラゴンも俺たちを見ているわけだからな。


(とりあえず、白い奴との距離が遠すぎる)


 もっと距離を縮めなくては。


 俺たち四人は聖威剣を構え、魔力をもうワンステップ解放。

 自分の魔力を聖威剣へと流し込み、攻撃を避けながらも白の巨竜との距離を縮めていく。


 これが成功すれば、一気に俺たち側が優勢になる。

 

 できるなら一発で仕留めたいところ。


(だいぶ距離が縮まってきたな。よし……)


 俺はもう一頭の巨竜と魔人の動きも視野に入れつつ頃合いを見る。

 

 そして少しの間だけ二頭の距離が遠ざかったところで――俺は皆に指示を出した。


「今だみんな! やるぞ!」

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