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90.開戦


「――さぁ、目覚めなさい! 眷属たちを! 我らの主に完美なる栄光を与えるのだ!」


 ベルモットの命令と共に激しい地鳴りが。

 そして開眼し、目覚めるは二頭の巨竜(ドラゴン)


 二つの脅威はゆっくりと立ち上がると、翼をバッと力強く広げ――


「「――――――!!!!!!!」」


 激しい咆哮を奏でる。

 

「ようやくこの時か来たか……上等だぜ」


「すごい気迫……相手に不足なし」


「で、でも今まで見てきたドラゴンとは格が違うよ……」


 ユーグとリィナの心はもう既に戦闘態勢に入っていた。

 反対にリーフレットは少し不安そうに二頭のドラゴンたちを見つめていた。


「さぁ、ショータイムの始まりですよ!」


 ベルモットはそういうと、もう一人の魔人バルガに駆け寄る。

 

「……いいですか、バルガ。先ほどお話した通りにお願いしますよ」


「……」


 無言を貫くバルガ。

 耳打ちで話していたから内容までは聞こえなかった。


(なんだ? 何を話している?)


 だがすぐにコソコソ話を終えると、ベルモットはニヤリと笑みを浮かべ、


「では、私はこれにて失礼させていただきます。健闘をお祈り申しあげますよ」


「お、おい待てっ……!」


 ユーグの叫び声は虚しく、ベルモットは不気味に笑うと、取り巻きの配下たちと共に影の如く姿を消した。

 そして残ったのはもう一人の魔人バルガだった。


「ちっ、逃がしたか」


「でももう一人の方はやる気みたいですよ」


 ベルモットが消えた後、そのバルガという魔人は少しも表情を変えずにスタスタと俺たちの方へと歩み寄って来る。

 

 ユーグとリィナは警戒し、抜刀。

 俺とリーフは鞘に手を添え、身構える。


 と、距離からして数十メートルのところでバルガは立ち止まる。

 そして静かに口を開くと、


「改めて名を名乗ってやる。俺様は魔王軍六魔の一人、バルガ・シュトローム。これから貴様らを殺す相手だ」


 低くくも聞き取りやすい声で荒く挨拶を。

 そして軽く煽りまで入れてくるという高等テクニックまで披露してくる。


「殺す相手だと? 舐めたこといいやがって……」


「簡単に殺せると思ったら大間違い。貴方一人じゃ、尚更」


「いや、殺せるさ。貴様たちなどいとも簡単にな」


「なにっ……?」


「多少実力を持つ者なら分かるだろう? 実力の差ってやつを。それに……」


 バルガは少しだけ口元を歪めると、続けた。


「俺様はゴルドよりも強いぞ。そして、あいつほど甘くはない」


「「……ッ!!」」


 冷徹なる一言。

 だが奴は決してハッタリを言っているわけではないということはすぐに分かった。


 多分、ユーグたちもそれは分かっている。


 何故ならこいつから溢れ出る霊気や覇気が尋常ではなかったからだ。

 それはもう、ゴルドの時とは比にならないくらい。


 でもゴルドの時のようにひたすら魔力で圧をかけてくるような感じではなく、じんわりと伝わってくるような感覚だった。

 言葉に表せば静かなる闘志というべきか。


 ただ、その冷静さを遥かに超える力を持っていることだけは間違いない。


 一瞬の油断が死へと繋がる。


 だからこそ、コンマ一秒たりとも気を抜くことは許されない。


 でも、この感覚……どこかで……


「それに、俺様が一番楽しみにしているのはお前たちじゃない。そこにいる黒髪の坊主だ」


 そう言ってバルガは俺の方へと人差し指を向けてくる。


「し、シオン……?」


「俺……だと?」


「ああ、そうさ。久々にこの俺様を楽しませてくれそうだと期待しているのだ。貴様が俺様の気配に気づいた……あの時からな」


「あの時……? って、まさか」


 ふと蘇る記憶。

 確かに俺はこいつと似た気配を感じた。


 そう……侵食種の襲撃の時のことだ。


「あの襲撃の時の……」


「その通り。あの時は流石の俺も驚いた。こう見えても俺様は隠密行動が得意でな。人間ごときに気配を悟られるとは思ってもいなかった。それに、一瞬だけだったが貴様は俺様の方を見て構えたな?」


「……ああ。姿はなかったからその時は気のせいだと思っていたが……」


 でも普通じゃないということだけは分かっていた。

 魔物の気配でもなく、ゴルドの時のような気配でもない。


 単に魔力が強いだけなら頭にガンガン響いてくるのだが、あの時は違った。

 

 例えるなら一瞬だけ身体がピクっとするような……

 本当に瞬時の出来事。


 五感を張り巡らせていないと分からないほどの感覚だ。


「シオン・ハルバード。俺様は貴様と戦える時を楽しみしていた。本来ならばすぐにでも一戦交えたいところだが……」


 バルガはここで話を止めると、右手を天高く挙げ、


「まずはお手並み拝見といかせてもらう。貴様らの最初の相手は巨竜(こいつら)だ」



 ――GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!


 

 鼓膜が破れるんじゃないかというくらい迫力のある咆哮。

 そして同時に二頭のドラゴンの額に記された異種を表す紋章が紫色に輝きを放った。


「来るぞ、戦闘準備!」


 俺は三人に指示を出し、自らも聖威剣を抜刀。

 魔力を高め、いつでも動けるように準備をしておく。


「覚悟はいいな……? ……やれ!」


 バルガは勢いよく掲げた右手を振り下ろすと、二頭のドラゴンに命令を下す。

 

 瞬間。

 ドラゴンたちは再び、威嚇の咆哮を発すると、俺たちの方へと猛進してくるのであった。

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