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83.深層区画


「やっぱり中は暗いね……」


「足元には気をつけろよ。ちょっと足場が悪いみたいだから」


 俺たちは予定通り、南の門から深層区画へと入っていた。

 で、ここまでかなり順調なペース。


 特に障害もなく進むことが出来ていた。


「にしても、案外すんなりと入れたな。見張りの一人や二人いると思ってたのに」


「でも警戒はしておいた方がいい。外に見張りがいないということは中に仕掛けている可能性があるからな」


「なか……? トラップとかのことか?」


「ああ、そういうことだ」


「トラップ……まさに迷宮(ダンジョン)って感じ」


「なんかドキドキしてきたぁ~」


 緊張感のない雰囲気が漂う。

 ちなみに俺とユーグ以外、迷宮(ダンジョン)攻略は初めてらしい。


 ユーグは経験者といえど一回しかないとのこと。


 俺はまぁ自慢できるほどじゃないが、それなりに色んな迷宮を見てきたからこの中では一番の経験者になる。


 よって、詳しい指揮は主に俺が執ることになった。


「目的地はこの深層区画の最深部だったか?」


「ああ。そこに例のドラゴンたちがいるらしい」


「なら結構先の長い旅になるなぁ……」


 気だるげに溜息をつくユーグ。

 俺はそんなユーグに「もっと気合いを入れろ」と発破をかける。


 そして歩くこと約15分ほどたったところで、


「おっと、分かれ道だ」


 分岐点に到着。

 見事に二方向に道が分かれていた。


「分かれ道……リーフレットはどっちだと思う?」


「う~ん、どっちなんだろう……」


「ユーグさんはどっちだと思います?」


「うむ、これは右だな!」


「ユーグさん、分かるんですか?」


「いいや、勘だけど?」


 そういいながらドヤるユーグ。

 するとリィナが「はぁ」を溜息を漏らしながら、


「ユーグさん()()()に聞いたわたしがバカでした」


「なんかって酷くない!?」


 と一蹴する。

 そんな和気あいあいとしている脇で俺はじっと分かれ道を見つめていた。


「おい、シオン。さっきから何を見ているんだ?」


「足跡だ」


「足跡?」


「そっか! 魔物や人が入り込んだ形跡を探れば、正しい道が分かるってことだね」


「そういうことだ。流石はリーフだな」


「えへへ」


 照れるリーフレット。

 対してユーグはポカンとバカ面を見せていた。


 てかお前、一応経験者だろ?


 ……っとそんなツッコミは後にして、俺が見ていたのはさっきリーフレットが言った通り、形跡だった。

 

 迷宮攻略において一番重要なのは人や魔物の形跡や痕跡を辿ることにある。

 行く先の分からない迷宮内ではその形跡や痕跡をどれだけ見つけ、正確に分析することが攻略のカギといえよう。


 だからまず、俺が迷宮に入ってすることは形跡探しから始まる。


「で、シオンよ。答えは分かったのか?」


「ああ、正しい道は恐らくこっちだ」


 と言って指差したのは左の道。

 かなりうすーくなっていたが魔物が歩いた痕跡があった。


「さっすが、シオン! 迷宮経験者はやっぱり違うな!」


「いや、お前も経験者だろ」


 ニヤニヤと緩んだ表情を向けてくるユーグ。

 少しは緊張感を持ってくれ、マジで。


「んじゃ、そうと決まれば左の道だな。早く行こうぜ!」


「お、おいっ!」


 ユーグはスキップしながら左の道へ進んでいく。

 

 さっきまで眠たそうにしていたのに……妙な変わり様。


 やる気があるのか、ないのやら。


(よく分からんヤツだ)


 もしかして例の薬の副作用が出ているのかもしれない。

 確かあの薬は一時的にコンバット・ハイにさせる副作用があった気がする。


「俺たちも先を急ごう」


「うんっ!」


「分かった!」


 と、いうことで俺たちもユーグの後を追って左の道に進んでいった。



 ♦


 

 分かれ道から歩いてさらに15分くらいが経過。

 今のところ大きな変化は無し。


 あるとすれば暗さがより際立ったということくらい。

 最深部に近づいている証拠だ。


「なぁ、シオン。あとどれくらいで最深部に着くか分かるか?」


「さぁな。そればっかりは俺にも分からない」


 でも少しずつ近づいているのは間違いないだろう。

 でもまだまだ奥は深いようだ。


「魔物にも会わないし、このまま行けばいいだけどなぁ~」


「そうですね。わたしも極力戦闘は避けたいです」


「同意」


 俺も避けられるものなら避けたい。


 が、そうもいかないのが迷宮攻略。


 そろそろ何かが出てきても――と思っていたその時だ。


「……待ってくれ、みんな」


 俺は急に皆を止める。

 先ほどと空気が変わったのだ。


「おい、どうしたんだ? なにか――」


「しっ! 静かに!」


 黙るように皆に伝える。

 そして俺は頼りなく火の揺れる松明を持ちながら、ここで待機するように告げ、少し先の様子を見てくることに。


(この感じ、恐らくは……)


 そう思った時だ。

 やはり俺の予想は的中していた。


「やっぱりいたか……」


 俺たちが進む道の少し先。

 ちょっとした広い道に出たところでとうとう第一関門が。


 それは緑色の身体を持ち、子どもくらいの背丈の魔物。

 手には鈍器を持ち、複数の群れを作ってそこにいた。


「第一関門は、ゴブリンか……」

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