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79.白衣の魔女


「この辺でいいか。えーっと周りに人は……いないな」


 辺りを念入りに確認する。

 

 時間は空が暗くなる少し前。

 俺は森の中で一人、あることをしようとしていた。


『おい、シオンよ。一体何をするつもりなのだ?』


「転移だよ」


 俺は自分の聖威剣、グランにそう一言言う。

 

『転移だと? 一体どこへいくつもりだ?」


「ちょっと魔女のお家に。お前も会ったことはあるはずだが……」


『魔女って……まさかあの女か?」


「そ、あの女だ」


 グランはそれを聞くと黙り始める。


「あまりいい思い出がないって感じだな」


『当たり前だ。我がかつてあの女になにをされたか覚えているだろう?』


「ま、まぁ……」


 確かにグランにとっては天敵かもしれない。

 正直、俺も少し苦手なタイプの人間である。


「でも頼れるヤツであることは間違いないだろう?」


『……』


「ま、長居するつもりはないさ。要件が済んだらすぐに帰るよ」


()()()()()()()()の話だがな』


「うっ……」


 痛いところを突いてくるなぁ……。

 グランの言うことはごもっともではあるんだけど。

 

「……よし、描けたぞ」


 辺り一面に描いた巨大な魔法陣。

 もう転移魔法の術式は施してある。

 

 後はこの魔法陣に自分の魔力を流し込むことで、術式を発動させることができるってわけだ。


『我は別に留守番でも構わなかったのだが……』


「一応護身用だよ。万が一のためのね」


『だ、だとしてもわざわざ我を持っていく必要は――』


「よし、行くぞ!」


『お、おいっ!』


 嫌がるグランに俺は強行突破。

 即座に魔法陣に魔力を流し込み、術式を発動させた。


「転移するぞ……!」


 輝く魔法陣の光が身体へと伝播。 

 そして一瞬だけ閃光を放つと、俺たちはとある場所へと転移したのであった。



 ♦



 ――ルードリヒ大帝国、帝城。地下研究室



「……着いたぞ」


『はぁ……来てしまったか』


 なんとも力のない声で呟くグラン。

 相当来ることに嫌悪感を抱いていたのだろう。


 珍しく溜息を漏らしていた。


 物凄く嫌そうにするので仕方なく、グランには一旦異空間の中へ潜ってもらうことに。

 前にリーフから貰ったマジックボックスの中にグランを入れる。


「相変わらずだな。この薄暗さといい不気味さといい」


 まるで禁書庫のような場所だ。

 いくつもの棚が置かれ、そこに陳列されているのは不気味な生物の標本だったり、分厚い書物だったり。


 中には王国で持っていたら即刻検挙ものの良からぬ薬品の入った瓶なども置かれていた。


「やっぱあんまり空気のいいところじゃないな。ここは……」


 そう呟きながら、奥に進んでいく。

 

 ……と、その時だ。


「誰かしら? 私のお庭にノックもなしに入って来る不届き者さんは……」


 広々とした空間に響く女の声。

 俺は立ち止まり、ただ一言だけ発した。


「……俺だ。用があってきた」


「ん、その声……まさか」


 途端に。

 目の前に謎の光が現れる。

 

 その光は徐々に人型に形を変えていくと――白衣に身を纏った一人の女性が姿を現した。


「久しぶりだな、ロゼッ――」


「やっぱりシオンちゃんだったのね! 久しぶり~!」


「うぐっ……!?」

 

 姿を見せた途端に抱き着かれる。

 

 その凄まじい抱擁力に身体は完全固定。おまけに豊満なお胸が俺の顔面に突き刺さり、呼吸することすら許されない状況に。


「本当に久しぶりだねぇ~あれからもう3年以上が経つのかな?」


「※※※※※!!」


「え? なに? 何ていったの?」


「※※※!!」


 呼吸もできなければ当然言葉など発せるわけもなく、もぞもぞと悶えることしかできない。

 だが当の本人に自覚は無し。


 俺は力を振り絞り、彼女の肩をバシバシと叩く。


 ……と、流石に気がついたのか、


「あっ、ごめんごめん! つい……」


「ぷはっーーーーーー!」


 ようやく悪夢から解放。

 首を抑えながらも、息を整える。


「ぜぇ……ぜぇ……この怪力女が」


「ひっどーい! ちょっとだけ抱き癖があるだけで、力は普通の女の子だよ?」


 いや、それだけは嘘である。

 

 これでも俺は過酷な鍛錬に耐え、身体を鍛え続けてきた人間。

 力だってそれなりにあるし、拘束されようが抜けられるほどの体術も会得している。


 だが彼女はそんなことなどおかまいなしにハグ一つで行動すらも無効化させる。


 そんな輩が普通なわけがない。


(しかも自分の事を女の子って……自分がおいくつなのかご存じなのか?)


「あーなんか今、良くないこと考えてたでしょう?」


「いや、別に」


 とりあえず真顔で返答。

 やたらと勘のいいところも厄介なところ。


 俺がさっき苦手だって言った理由の一つだ。

 

「まぁ~それは一旦置いといて。ホントに久しぶりだねぇ~」


「ああ。お前も元気そうだな」


「ま、私はぼちぼちってところかな~」


 乱れた白衣をビシッと着直し、ロゼッタはそう言う。

 そして緩んだ表情を戻すと、


「……んで、わざわざ私の根城に無断で忍び込んでまで何をしにきたのかな?」


 目を細め、圧をかけるように聞いてくる。

 さっきまでの緩んだニヤケ顔はもうそこにはなかった。


「無断で忍び込んだのはすまなかった。でも、緊急でお前に頼みたいことがあってな」


「頼みたいこと?」


 う~ん? 首を傾げる彼女に俺はコクリと頷いた。


「ああ……いきなりで悪いが、少し時間を貰えるか?」

明日も更新予定です!

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