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72.迫る危機


 一方、ベースキャンプに残ったリィナとユーグはというと――

 

「うわぁぁぁぁ! また負けたぁぁぁ! リィナちゃん強すぎでしょ!」


 頭を抱えながら大声で嘆くユーグ。

 その真正面にはふふふと勝利の微笑みを浮かべるリィナの姿があった。


「ユーグさんが弱すぎなんです。これで9連敗ですね」


「ぐぬぬっ……!」


 テント内で呑気にボードゲームを楽しんでいた。

 と、そうは言っても決してサボっているわけなく、休憩時間を使っていての娯楽タイムだ。


 その間は他のチームが巡回に当たっている。

 ベースキャンプ内の護衛と周辺のパトロールは交代制なのだ。


「くそぅ……このゲームなら勝てると思ったのに」


「甘いです。こう見えてもわたし、勇者軍では娯楽女王と呼ばれていたくらいなんですから」


「ご、娯楽王……まさかリィナちゃんがそこまで娯楽を極めていたとは……!」


 ユーグは今のところリィナからは一勝も取れていない。

 リィナの圧勝続きだった。


 まさに圧倒的実力差。

 リィナの巧みなゲームセンスを前にユーグは歯が立たなかった。


「それにしても、あいつら遅いな。いつになったら帰って来るのやら」


「そうですね。あれからもう一時間くらい経ちますし……」


 一ゲームを終えた後、二人の話題はシオンたちのことに。

 リィナの言う通り、シオンたちがベースキャンプを出てから既に一時間が経過していた。


「何かあったのか? まさか魔物に……!」


「あの二人に限ってそれはないと思いますよ」


「だよなぁ……」


「でも、仮に何かあったとして考えられる要因を上げるとすれば――」


 リィナが喋る最中でユーグは察したのか、付け加えるように答える。


「道に迷った……とか?」


「その可能性はあるかと……」


 それを聞くとユーグは首を縦に動かし、納得のいく表情を見せる。


「やっぱりか。でもありそうだよなぁ……それ」


「あくまで可能性の話ですよ? 推論です」


「分かってるよ。でもあの二人、一見マジメそうに見えて抜けてるとこあるからなぁ。推論でも納得でききちゃうよ」


「まぁ……確かにそれは言えてますね」


「お、初めて意見が合致したね俺たち!」


 ウキウキと目を輝かせるユーグにリィナは不満そうに横目で見る。


「あ、すみません。訂正します。”確かにそれは言えていますね、()()()()()()”」


「わざわざ訂正する必要ある!?」


 ユーグに対し嫌悪感があるのはいつものこと。

 

 ユーグは今まで他人にどんなに罵られても、ピンピンしていたほどの変人だが、リィナに言われるのは何故か応えるみたいで、割とマジでショックを受けている……ということは彼のみ知る真実。


 対するリィナはそんなユーグの姿を見て楽しんでいたり、いなかったり……。


「と、とにかくこれ以上帰りが遅くなるようなら探しにいかないと。確率は低くとも万が一ってこともあるし」


「ですね。今回ばかりはユーグさんの意見に賛同です。……()()()()りは」


「そこ強調しなくてもよくない!?」


 でも何だかんだ言って行動を共にする二人。

 実際の話、仲はそれほど悪くなかったり……。


「よし! じゃあ残りの休憩時間でもう一勝負と行こうじゃないか!」


「えぇ……またやるんですか?」


「あたぼうよ! こう見えても俺は結構な負けず嫌いなんでね。このまま引き下がっちゃ男が泣くぜ」


「あ、あた……? ま、まぁ……いいでしょう。そこまで言うなら二度と勝負ができないよう完膚無きにまでに叩きのめしてあげます」


「お、気合い入ってるねぇ! 望むところだ!」


 そんな二人のデッドヒートは休憩時間終了ギリギリまで縺れ込んだ。

 

 あ、ちなみに勝者はリィナ。

 ユーグは結局10連敗でゲーム勝負は幕を閉じました。



 ♦


 

 その頃、シオンたちは――



「布石を作ろうとしているって……その話、本当なんですか?」


「いえ。これはあくまでわたくしの予想です。が、どうも嫌な予感がするのです」


「嫌な予感……?」


「ええ。実は以前にも似たような状況がありました。遡ること500年前のことです」


 ルシアたち精霊は人と違って長く生きることができる。

 見た目こそ若々しい彼女だが、実際は数百年この世界を生きているらしい。


 そして、ルシアの話によれば500年前にも同じ状況があったというのだ。


「500年前に何があったですか?」


 俺はルシアにそう聞いてみると、彼女はすぐに答えてくれた。


「竜たちによる人界制圧作戦です」


「人界制圧作戦?」


「前魔王アルバーンが編み出した人類掃討作戦の名称です。大多数の竜たちを使役することで各国の主要都市を次々と襲撃し、反撃するための国家的機能を奪うというのが主な目的でした。当時の人類にとって、竜という存在は神にも近しい存在でしたから人々は恐怖で震えあがり、結果的には大量の人が亡くなり、沢山の国が滅びました」


「それを、魔王はやろうとしているというのですか?」


「恐らく。当時の魔王の策略は完璧でしたから。……彼らが現れるまでは」


「彼ら?」


「貴方がたと深い御縁のある方々です。当時は神託によって選ばれた異端の存在として人々に祀り上げられてました」


「神託? まさか……その彼らって」


「……勇者です。魔王の生み出したこの作戦は、当時突如として現れた5人の勇者たちによって阻止されました。魔王自らも彼らの持つ聖剣の力によって封印させられ、世界に再び平和がもたらされた。実際、その偉業から彼ら五人は勇者と呼ばれるようになったのですが……」


 そんな過去があったのか。

 でもこの話……どこかで聞いたことがあるような。


「……その話って五勇志のことかな?」


 隣でボソッとリーフレットが呟いた。

 俺はその言葉にすぐに反応した。

 

「五勇志?」


「かつて存在したとされる5人の英雄のお話だよ。滅亡寸前の危機から世界を救ったとされる5人の猛者。今では童話や小説の題材になったりしてるけど……」


「そうです。その五人のことですよ」


 ルシアもその話を聞くと即答。

 俺も昔読んでいた書物でそんな話があったことを思い出した。


(あの話か……まさか実話だったとは)


 でももしルシアの予想が当たっているとしたらそれは人類にとって悪夢の再来を意味する。

 もし仮にここで俺たちが止められなかったとして例の竜を世に解き放てば、どうなるだろう。


 多分、何の抵抗なくして次々と被害を受けていくことになる。


 それは勇者も同様だ。

 今の衰退した勇者たちでは(あいつ)らに対してまともな抵抗をすることすらできないだろう。


(でもこれで、どうしてもここで止めなくてはいけなくなったな……)


 そうでないと後のことが目に見えている。

 ルシアも同様にそれを危惧していた。

 

「今の世でも恐らくあの二体の竜に対して抵抗する術を持っているかと言われれば怪しいところです。それに貴方がた勇者も昔と比べてだいぶ変わってしまった」


 変わってしまったというか、弱くなったというか。


 ルシアはだいぶオブラートに包んだ言い方をしているが、遠回しに雑魚くなったと言っているようなもの。


 でも残念ながら正論だ。

 

 金に飢えた今の勇者じゃ、守るべきものすら守れない。

 無駄に死人を増やしてしまうだけだ。


「と、いうことはやるなら今しかないってわけですね」


「そういうことです。今、例の二体の竜はその時を待つようにして力を溜め込んでいます。阻止するなら――」


『ルシア様! ルシア様! 大変です!』


 ……と、会話の最中に慌てふためく誰かの声が聞こえてくる。

 来た道を振り返ってみると、一つの小さな光が物凄いスピードで俺たちの方へと飛んできているのが分かった。


 あれは……ルルか?


 ルルは俺たちの目の前で急停止すると、ソワソワとし始める。


『た、大変ですルシア様! 奴らが……!』


「どうしたのですかルル。何があったのですか?」

 

 対してルシア冷静にルルに問う。

 ルルは慌てすぎて呂律が回らない中、簡潔に事件の詳細を話した。


『や、奴らが……魔物が、結界を壊してこの精霊園に侵入してきました!』

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