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67.謎の光


「防衛ねぇ……なんか思わぬ障害にぶつかっちまったな」


「仕方ない。その代わりにとっておきの情報が手に入ったんだ。俺たちからすればメリットある交渉だったよ」


 あれから時間が経過してざっと2時間余りというところ。

 俺たちは交渉の通り、明日の早朝までルーノ近衛騎士団保有のベースキャンプを護衛することになった。


「まぁな。でもな~んか、とんでもないこと聞いちまったな」


「ああ……でもどちらにせよこれで余計野放しにはできなくなったから、ある意味スッキリしたよ」


「だな。上手く事が運べばいいんだが……」


「しーちゃん、ユーグさん! こっちには魔物はいませんでしたよ~」


 駆け寄って来るリーフレットとリィナ。

 二人には周辺の巡回に行ってもらっていた。


「ありがとうな。リーフ、リィナ」


「うん! でもおかしいな……」


「どうした?」


「この辺って魔物がいっぱいいるんだよね? なのに気配すらなかったよ」


「魔物もそうだけど、そこまで大きな魔力も感じなかった。あまりにも静かで逆に不自然だった」


「マジ? 一体どうなってんだよシオン」


「分からない。でもいないというのはまずあり得ないだろう。実際にもう既に被害は出ているんだ。どこかに息を潜めているってこともある」


 活動時間外……というのは多分あり得ないな。

 アルバイトじゃあるまいし。


 それに前にも言った通り、魔物は強い魔力に惹かれる習性がある。

 多分その魔力が発せられてないから魔物たちも表立って活動していないのだろう。


 とはいっても警戒を怠ることはあまり良くない。


「引き続き警戒を……ってあれ? ユーグは?」


 忽然と姿を消すユーグ。

 すると近くにいたリーフがある方向へ指を指しながら、


「ユーグさんならあそこだよ、しーちゃん」


「え?」


「あっ、お姉さん。今一人~? もしよければ少しお話しない?」


「あ、あいついつの間に……」


 リーフの指さす先にはユーグと一人の女性騎士の姿が。

 何やら一方的にユーグが話しているようで女性騎士の方は困惑していた。


「目を離した隙にこれか……」


 相変わらず呑気なやつだ。

 どこ行こうが隙あらばナンパを仕掛ける。


 良い風に言えば、ある意味鋼の精神だ。


 俺だったらやれと言われても絶対に――


「ねぇ、しーちゃん」


「どうしたリーフ?」


「しーちゃんも昔は()()()感じだったの?」


「えっ、あんな感じとは?」


「その……ユーグさんみたいに女の子をよく口説いていたのかなぁ~なんて思って」


「は、はぁ!? そんなわけ――」


「あっ、それわたしも気になる。教えてシオン」


「いや、お前らな……」


 ナンパ? んなこと生まれてこのかた一度もしたことがない。

 というかユーグ自体がまず特殊な男だから比べるだけナンセンスだ。


 まぁそんな鉄の心を持っていたが故に、昔は人気者ではあったけど。

 

 ……もちろん、男にな。


「あんな奴と一緒にしないでくれ。俺は至って健全な勇者ライフを送っていた」


「ホント……?」


「怪しい……」


 ユーグのせいで疑いの眼差しが一斉に俺の方へ。

 対してユーグは未だ呑気にナンパ行為を続けていた。


「ほ、本当なんだって二人とも……信じてくれ!」


 と、必死の弁解。

 それを続けている内にとりあえず俺への疑いは晴れた。


「はぁ……なんでそう疑い深いんだよ」


「だって男はみんな狂犬、暇さえあれば女を狙ってるって父上が言ってた」


「わたしもお父さんが似たようなことを言ってたよ」


「なるほど、よく分かった」


 あれだ。俗に言う親バカってやつ。

 特に一人娘の家庭を持った父親に多い現象だ。


「どこの馬の骨かも分からんヤツにうちの娘は渡せん!」みたいな感じ。


「ごめんね、しーちゃん。疑うつもりはなかったんだけど、気になっちゃって」


「まぁ仕方ない。目の前にあんなやつがいるんだからな」


 と、思うとユーグが何だか気の毒になってくる。

 

 多分、そういったご家庭で育った異性の子に恋して素性を知られたらぶっ殺されるんだろうな。


 ……その子の父親に。


「なんか今後が心配になってくるな……」


「ん、どうしたの? しーちゃん」


「いや、こっちの話だ。気にしないでくれ」


 するとユーグが事を終えて戻ってきた。

 あの様子だと……失敗したみたいだ。


「くそ~! あともうちょいで落とせそうだったのにぃ! ……って、どうしたシオン。まるで残念な人でも見ているかのような顔して」

 

 察しの良さもこいつの欠点でもあり、利点でもある。

 でも今はあえて余計なことは言わない。


 俺はユーグの肩にポンと手を乗せる。


「……強く生きろよ、ユーグ」


「はぁ? 一体何の話だ?」


 そんな他愛もないやり取りをしている最中だった。

 

「……ん? なんだろう、あれ」


 リィナがボソッと呟きながら、一点を見つめる。

 

「どうした? 何か見つけたのか?」


「ほら、あそこ……!」


「あそこ……?」


 リィナが指を指す方向。

 何やら黄色い光の粒みたいなものがプカプカと浮いていた。

 

 しかも……なんか動いている?


「ありゃ、なんの光だ?」


「分からない。でも一応確認はしておこう。もしかしたら魔物かもしれないし」


「だな。んじゃ、誰が行く? 一応全員でここを離れるわけにもいかないだろ?」


「なら俺が行くよ。ちょうど森の様子も見ておきたかったしな」


「じゃあ、わたしも行きたい。ちょっと気になるし……」


「ってことは居残り組は俺とリィナちゃんになるね」


「え~ユーグさんとですかぁ?」


「そんな露骨に嫌がらなくてもよくない!?」


 ということで話は決まった。


 居残り組はユーグとリィナ。

 確認組は俺とリーフだ。


「じゃ、早速行ってくるから二人とも頼んだぞ」


「分かった。気を付けてね」


「あいよ。できるだけ早く帰って来いよ」


「分かってる。それじゃ、行くかリーフ」


「うん!」


 一応、万が一の時のためを想定してテントに置いておいたグランを腰に据える。

 俺たちは一旦キャンプを離れると、その謎の光の正体を確認するべく、足を動かすのであった。

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