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66.新たな情報


「まず最初に言うておくが、峡谷にいるドラゴンはそこらのドラゴンとはワケが違う。一言で言えば、ドラゴンの皮を被ったバケモノだ」


 クゼルは少しだけ震えた声で話を切り出した。

 そして、この話に最初に反応したのはユーグだった。


「バケモノって……どういう意味ですか?」


「そのままの意味だ。我々騎士や冒険者の間では”侵食種”と呼んでいる個体でな」


「侵食種って……シオン!」


「ああ、どうやら例の情報は正しかったみたいだな」


「なんだ、お主ら知っていたのか?」


「はい。実はここに来る前に勇者軍の団長からある程度の情報提供は受けてまして。ただ、情報元は数日前にここへ調査に出ていた冒険者たちの証言によるものですが」


「冒険者……? あっ、もしやあの報告は……」


 クゼルは何かを思い出したのか、身体をピンっと起き上がらせる。

 

「どうかしたんですか?」


 気になったので聞いてみる。

 するとクゼルは、


「いや、数日前に調査隊から峡谷付近で逃げ帰るように去っていく冒険者たちを見たという報告があってな。我々討伐隊は昨日から現地入りしたものだから詳しいことは知らないのだが……」


「その調査隊の人たちが情報を?」


「そうだ。彼らは1週間前から現地入りしていてな。そのドラゴンや峡谷近辺を調査せよと上から直々に命令が下ったんだ。多分、この辺で異常なほどの魔力数値が検知されたからだと思うが」


 異常な魔力数値か。

 それと魔物の大量発生もセットで起こっている。


 後は謎の魔人の出現。

 これはあくまで冒険者たちの証言だが、これだけの規模で問題が起こっているのならいてもおかしくはない。


 少なくとも何か裏があるのは間違いない。


「あの、クゼルさん。一つ質問いいですか?」


「ん、なんだ嬢ちゃん?」


 ここでリーフが手を上げる。

 クゼルはコクリと頷くと、リーフは質問をする。


「そのドラゴンは確か2体いるんですよね? もしかして2体とも侵食種なんですか?」


「ああ、そうだ。確認できた2体のドラゴンはどちらとも侵食種だった。ただ、まだ完全に侵食させられたわけじゃないみたいだったがな」


「どういうことですか?」


「まだ完全体にはなっていないということだ。ほら、人間も風邪をひいた時に薬を投与するが、すぐに効き目が表れるわけじゃないだろう? それとおんなじことだ」


「……ってことは、まだ薬物を投与されてからそこまで時間が経っていないということか」


「そういうことになるな。しかも問題なのはそれだけじゃない」


「……?」


 一同に首を傾げる俺たちにクゼルは語り始める。


「……奴らは()()だったんだ。調査隊の報告によれば、それを示す魔法陣が額にあったらしい」


「い、異種だって……!?」


 俺はその言葉にピンと来た。

 ただ、ユーグたちは知らなかったようで……


「お、おいシオン……異種ってなんだ?」


「生命の誕生……いわば孵化前から特殊魔法を施すことによって強制的に創り出された上位種のことだ」


「強制的にって……そんなことができるのか?」


「できる。ただ……そんなことができる奴は本当にごくわずかだ。異種を創りだすにはそれこそ膨大な魔力を必要とする。俗に賢者だの魔道王だの伝説になるレベルの魔力を持ってないと、到底不可能な所業だ」


「その通りだ。我々もそれを知った時は驚きを隠せなかった」


「う、ウソだろ……そんなもんを創りだせる奴がこの世にいるのかよ……」


 侵食種と異種。

 どちらも人為的な強化を施された種のことだ。


 これでもうバックに誰かがいるということは完全証明された。

 

 これはあくまで推測だが、魔物の大量発生もこのドラゴンたちを育て上げるための盾役として疑似的に膨大な魔力を発生させ、呼び寄せた。

 

 そして、そのドラゴンたちを使って何か大きいことをしようと目論んでいる。


 もし、この推測が正しければとんでもないことになるのは明白。

 ここまで極限にまで強化を施されたドラゴンが世に解き放たれれば、その先に待っているのは破壊と殺戮だ。


 それだけは何としてでも避けなくてはいけない。


 じゃないと、例の事件のように大量の血が流れることになる。

 

 いや、多分あの時とは比べ物にならないほどの命が失われることになるだろう。


「マズイな……早く何とかしないと」


「我々も本当は討伐に行きたいと考えているのだが、いかんせん魔物たちが厄介でな。それに下手に刺激してしまうとかえって良くないことになりかねないということで今は様子見をしているってわけだ」


「なるほど……」

 

 でもどちらにせよ野放しにはできない。

 後戻りが出来なくなる前にどうにか討伐できればいいのだが……


「一応、ここまでが我々が知っている主な情報だ。また何かあれば連絡するが、あまり期待はしないでくれ」


「いえ、おかげですごくありがたい情報を聞くことができました」


「そういってもらえると助かる。あ、あとお主らが此処にいる間は食事と寝床も提供しよう。たいしたもてなしはできないが……」


「ありがとうございます。今日は野宿になりそうだったので、凄く助かります」


「改めて、一日という短い間だが宜しく頼む。シオン殿、ユーグ殿、リーフレット殿、リィナ殿」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 俺たちは互いに握手を交わし、ここで一旦話にピリオドを打つ。


 それにしても、まさかの異種か。

 前に戦ったことがあるが、確かにそこらのドラゴンとは別格の強さだった。


 これは、できるだけ早急に対応をしなくてはいけないな。


 一応、リベルカさんには報告しておこう。

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