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65.ベースキャンプ


「着いたぞ。ここが我々のキャンプだ」


 馬車から降りて約15分と言ったところか。

 俺たちは討伐隊長のボンの導きのもとで彼らが拠点するベースキャンプへと足を運んでいた。


 ベースキャンプはスノア峡谷の少し手前にある森林地帯に構えられ、昼でも少し薄暗い森の中に複数のテントが点在していた。


「これからお前たちには部隊統括に会ってもらう」


「部隊統括?」


「討伐部隊の全面指揮を任された我々の指揮官(コマンダー)のことだ」


 要は近衛騎士団のお偉いさんってことか。

 俺たちは早速その指揮官とやらがいるテントへと案内される。


「……討伐隊隊長のボンです。クゼル=バーン・レントナー司令閣下にご報告があります。入室の許可を」


「……入れ」


「はっ!」


 ボンとテント内にいる何者かとのやり取りが行われる。

 会話を聞いたところどうやら入室の許可を頂けたみたいで、ボンは目で付いてこいと俺たちに伝えると、いち早くテント内へと入っていく。


 俺たちもその後を追い、テント内へと入った。


「お忙しいところ失礼致します、クゼル司令閣下」


「うむ。状況はどうかね?」


「今のところ変化はございません。追加の情報は調査隊の帰還次第だと……」


「そうか。……で、そこにいる者たちは一体何者かな?」


 一連の報告作業を終えた後、その司令官とやらの視線は俺たちの方へとシフトする。

 ボンはすぐさま答えた。


「はい。彼らはルーベリック王国にある勇者軍本部より来た勇者たちです。勇者軍団長の命令で例のドラゴン討伐をしにここまで来たとのことで……」


「なるほど、分かった。後はワシに任せてくれ。お前は引き続き、任務を遂行するんだ」


「承知いたしました。では、自分はこれで失礼させていただきます」


「うむ」


 ボンはそのクゼルと呼ぶ老人に頭を下げると、一旦俺たちの方を向いた。


「後はクゼル司令閣下の言う通りに従ってくれ。それじゃ……」


 ボンは俺たちにそれだけ言い残すと、テントから出て行った。


「すまぬな。いきなりのことで驚いたことだろう」


「いえ……」


「まぁ立ち話もあれだ。むさ苦しい場所で申し訳ないが、好きなところに腰をかけてくれ」


「お気遣いありがとうございます、司令閣下。ですが、俺たちならここで大丈夫です。一応通行の許可を貰いにきただけなので……」


 長居は無用。

 今は少しでも早く峡谷へ向かい、真実をこの目で確かめることが最優先だ。


 こうして優しく接してくれているところ心苦しいが、ここで足止めをくらうわけにはいかない。


「まぁまぁそう言わずに。我々は例のドラゴンについての情報を持っておる。恐らくまだ出回っていないものだ。これから討伐に行くというのならきっと役に立つだろう」


「情報……」


 確かに自分の目で見た方が手っ取り早い。

 

 だが、冒険に危険はつきもの。

 道中何があるか分からない。


 それに俺たちは今のところ最低限の情報しか持っていない。

 情報というものは時として自分たちの身を守り、窮地からの形勢逆転に一役買うこともある。


(先を急がずに聞いてみるのもありか……)


「……分かりました。よろしければその情報を聞かせてはもらえませんか?」


 一応三人にも視線を送る。

 三人ともコクリと頷き、俺の判断を肯定してくれた。


「よかろう。まぁとりあえず座ってくれ。たいしたおもてなしはできぬが……」


「いえ、お構いなく」


 ……ということで俺たちは情報収集のために暫くの間、キャンプに滞在することになった。



 ♦



「改めて……ようこそ我がベースキャンプへ。ワシはルーノ公国近衛騎士団、第二師団所属のクゼルというものだ。今はこのスノア峡谷および付近調査の任務で調査隊と討伐隊の指揮を任されている」


 クゼルは簡単に自身の自己紹介をしてくる。

 俺たちもそれに準じて順番に自己紹介を終えた。


「それで、ドラゴンについて……だったな?」


「はい。知っている情報だけでいいので教えていただけると嬉しいです」


「うむ、分かった。ただその前に一つだけお主らにお願いがある」


「お願いですか?」


「別に大したことではない。情報提供の対価と考えてくれればそれでよいのだ」


 なるほど。流石にただでは情報を提供しないと。

 

 まぁでもごく普通なことだ。


 何かを得るには自分たちも相手に何かを差し出さなければいけない。


 それが世の摂理というか、交渉の際の基本体と言えよう。


 俺たちは情報を得るべく、そのお願いとやらを聞くことに。


「すまぬな。聞いてくれて感謝する」

 

「いえ。それで……そのお願いとは何ですか?」


「ああ。お主たちももう知っているかもしれぬがここ最近、ここら一帯での魔物たちの行動が活発になっておる。それも異常なくらいにな」


「大量発生……のことですね?」


「そうだ。我々も随時対処しているが、魔物たちは増えていく一方だ。現に数に押されて何人か奴らの餌食になってしまった。そこでだ。お主たちには一日の間だけ、このベースキャンプと付近の防衛をしてほしいのだ」


「そ、そんなことでいいのですか?」


「もちろんだ。正直なことを言えば人手不足でな。今、団の本部に増援申請をしているところなのだ。ただ、到着まで丸一日かかるらしくてな。その間はこのベースキャンプの守りが薄くなってしまうのが難点になっているというわけだ。ここも決して安全とは限らないのでな」


「なるほど。それに今は団員の殆どが出先でここを守るほどの兵力がない……ということですね?」


「ほう、流石は勇者様だ。鋭い洞察力をお持ちで」


 話は以上だった。

 纏めると、丸一日だけここの守り役をしてほしいということか。


「どうだろう? 別に無理にとは言わないが……」


 無理にとは……と言ってももし俺たちが承諾しなければ情報は得らない。

 それにたった一日、ここを守るという約束を交わすだけで情報が手に入るのならこれほど楽なことはない。


 一応討伐任務にはこれといって期限は設けられてないし、ここは快く受託するのが最適解だろう。


「分かりました。ここの防衛をするだけでいいんですね?」


「うむ。引き受けてくれるか?」


「はい、喜んで」


「すまぬな……恩に着る」

 

 ……こうして、俺たちは明後日の増援到着までこのベースキャンプの護衛をすることになった。


 そして話題はいよいよ例のドラゴンのことへと変わる。


「じゃあ、約束通り我々の知る情報の全てを提供しよう」


 クゼルはコホンと咳払いをすると、そのドラゴンの情報について語り始めた。

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