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61.出発の日

第3章の内容に入ります。

これからも当作品を宜しくお願い致します!


 時は経ち、とある日の明朝。

 俺たちは勇者軍本部の門前にいた。


「全員、揃ったな? んじゃ、早速行きますか!」


「なんでユーグさんが仕切ってるんですか。罰を受ける側なのに」


「細かいことはいいんだよリィナちゃん。俺たちは任務達成の間までは一緒の部隊(パーティー)なんだからさ!」


「本当は嫌ですけどね……」


「あ、相変わらず直球だねぇ……リィナちゃんは」


 ドラゴン討伐出発初日。

 今日から数日ほど、俺たちはしばらく王都を離れることになる。


 メンバーは俺とユーグ、そして付き添い兼監視役としてリィナとリーフレットが同行することになった。

 一時的ではあるが、男女混合の部隊結成ってわけだ。


「シオン、少しいいですか?」


 話しかけてきたのは御見送りに来た団長のリベルカだ。

 リベルカは俺の方を向き、手招きをしてくる。


「何ですか、リベルカさん」


 駆け寄る俺にリベルカは、


「討伐に行く前に一言言っておきたいことがありまして」


「言っておきたいこと?」


「実は昨日、その峡谷にいるドラゴンについての書類がギルドから送られてきまして――」


 そう前置きを添え、リベルカは事の結論から話し始めた。

 

「様子がおかしい?」


「はい。ギルドの方も峡谷にいる二体のドラゴンについての調査をしていたようで、ちょうどその調査依頼を出していた冒険者が帰ってきたらしいのですが……」


「何かあったんですか?」


「……はい。その依頼を出していた冒険者パーティーの一人が、何者かの襲撃によって殺されたらしいのです」


「殺された? そのドラゴンに……じゃないんですか?」


「いえ。相手は間違いなく魔人だったと同パーティーのメンバーが言っていたみたいです。他のメンバーはその冒険者の犠牲で何とか逃げ延びてこられたとのことで……」


 他にも気になる情報がいくつかあった。

 

 一つはその峡谷付近での魔物の大量発生。

 二つ目がその付近からとんでもないほどの魔力量が検知されたということだ。


「偶然……ってわけではなさそうな感じですね」


「私もそう思います。ギルドではこの前の事件に通ずるものがあるのではないかと、踏んでいるようで」


 ギルドによればこの前の事件以来、各地では魔獣による被害が急増したらしく、今回の一件も近くの街からギルド宛てに被害届が送られてきたらしい。


 前にグランが言っていた通り、あの一連の出来事は未来で起こる大事件の出発点だったのかもしれない。

 そして今回の事件もまた、それに通ずる過程の一部……という可能性もあり得る。


「とにかく何かあるのは間違いありません。しかも冒険者たちが集めてきた情報の中にはドラゴンが”侵食種”である可能性があるとの報告もあったようです」


「侵食種?」


「毒物などで強制的な行動を強いられている種のことです。魔人による襲撃があったため、あくまで予想の範疇とのことですが……」


 仮にそうだとしたらその毒物をドラゴンに盛り込んだ犯人は容易に想像がつく。

 

 まだそれによる暴走と被害が出ていないのが幸いだ。


 でも……何か嫌な予感がする。


「一応名目上では処罰の代わりとして今回の任務にあたってもらいますが、本来はギルドからの依頼で討伐願いが出ているものです。ちなみにあの三人にはもう伝えてあります」


 リベルカは続ける。


「なので何かあったらすぐに軍に連絡をお願いします。場合によっては調査隊と討伐隊の同時派遣もあり得る話なので」


「分かりました。でも対処可能なら俺たちの判断で行動させてもらいますよ」


「構いません。一応報告だけしてもらえればそれで大丈夫です」


「お~い、シオン! そろそろ行くぞ~!」


 馬車に乗り込もうとするユーグから声がかかる。

 俺は「すぐ行く」とだけ大声で伝えると、再度リベルカの方を向く。

 

「では、行ってきます」


「道中、気をつけてくださいね。ご武運を祈っています」


「はい」


 俺はリベルカに一言述べて一礼し、馬車の方へと戻る。

 リベルカも首を縦に振ると、去っていく俺たちの姿を見送った。

 

 ……こうして。


 俺たち一行はドラゴン討伐の任務を果たすべく、王都を出発したのだった。

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