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06.変わり果てた組織


「おお、ここが今の勇者軍の本部か」


「そ! 結構立派なもんでしょ!」


 俺はリーフレットの案内で王都にある勇者軍本部の門前まで足を運んでいた。

 しかも前の本部よりもかなり立派な造りになっており、相当金をかけたのだと伺える。


(まさか、また勇者軍(ここ)へ戻って来ることになるとはな……)


 もう組織とは二度と関わらないだろうと思っていた。


 恨み?

 

 もちろん、完全に無いとは言えない。

 それに俺の恨みは組織に対するものじゃない。

 あくまで当時の団長であったゴルドとそれを支持していた一部の無能な幹部たちだけだ。

 

 軍での生活はむしろ好きな方だった。

 

(今もあの男はノウノウと組織の頂点(トップ)の座に居座っているのだろうか?)


 だったら一発くらい食らわせてやりたいところだが――


「おーい、しーちゃん! どうしたのーーー?」


 考えごとをしている中、リーフレットの声が脳内を過ぎる。

 気がつけば門のその先へと歩いている彼女の姿があった。


「わ、悪い! すぐ行く!」


 大声で返答し、後を追う。

 

(ま、そん時はそん時だな)


 今は何も考えず部外者のフリでもしておこう。

 

 俺はそう思いながら、かつて属していた組織の門を再び潜るのであった。


 ♦


「へぇ、中も立派なもんだな」


「でしょー! 宿泊施設も充実してるし、娯楽施設もあってわたしたち勇者にとっては最高の環境だよ!」


「ほう……その感じだと訓練そっちのけで遊んでばっかのようだな」


「そ、そそそんなことないもん! わたしだって訓練くらい……」


「はははは! 冗談だよ、冗談。ま、そんなことばかりじゃSランク勇者にはなれないしな」


「そ、そうだよ! わたしはしっかりと訓練して実力でSランクまで上り詰めたんだから!」


 動揺しながらも必死に訴えるリーフレット。

 でもその様子を見るとSランクになってからは随分お気楽な生活をしていたんだなということが分かる。


 Sランク勇者はとにかく待遇がいいからな。

 仕事だって上手いことやればサボることもできる。


 仕事さえなければその辺の富豪以上の生活ができるから、Sランク以下の勇者たちの中にはそれ目当てで頑張る奴も当時はいた。


 まぁ……見つかったら一発でアウトなんだけど。


「てかリーフ。今更なんだが、俺みたいな部外者が当たり前のように入ってもいいのか? 門番の奴らも見て見ぬ振りだったが……」


「あ、それなら大丈夫! しーちゃんが来ることは団長にもう伝えてあるから」


「だ、団長にだって?」


「うん! すっごくいい人だからそんなに身構えなくても大丈夫だよ」


 リーフレットは無垢な笑顔でそう話す。

 

(すっごくいい人……か)


 もしかしたら今の団長はゴルドではないのかしれない。

 

 あの男は目的の為ならば手段を選ばない奴だった。

 普段の態度を見ていてもお世辞にもいい人だなんて言えないほど冷淡な男だったしな。


 と、そんなことを考えている間に案内されたのは……

 

「お、おい。いきなり団長室ってか」


 団長室だった。

 しかもかなり豪勢な佇まいで、入る前から圧倒される。


「ごめんねしーちゃん。一応、客人はここへ一回通すようにって団長に言われてるんだ。でも大丈夫。さっきも言った通り、すっごくいい人だから!」


「あ、ああ。まぁ別にそれは構わないんだが、団長には俺のことをどう伝えてあるんだ?」


「ん? 普通に昔の幼馴染で元勇者軍だった人をここへ連れてきたいって言っただけだけど……」


「え、それだけで許可が通ったのか?」


「う、うん。そうだよ」


 う、嘘だろ。ガバガバセキュリティーにも程があるだろ。

 昔は関係者以外、一般人禁制だった程なのに緩くなったもんだ。


(やはり、団長が変わったのか……?)


「……しーちゃん、大丈夫? 何か心配なことでも?」


「い、いや大丈夫だ。気にするな」


「そう? んじゃ、中へ案内するね!」


 リーフレットはドア前に立ち、コンコンとノックすると、


「団長! 連れてきましたーー!」


 ……と、軽い感じでそう叫ぶ。

 すると中から団長であろうと思われる人物から「どうぞー」という返答が。


「入りますね~」


 そう言ってリーフレットはドアノブに手をかけ、そっと扉を開扉。

 中へと入る。


 すると、部屋の奥には窓ガラスから外の眺めを見ている人の後ろ姿があった。

 部屋の中に入って来る日の光が眩しくて鮮明に見えない。


 だが徐々に目が慣れてきて、その姿がはっきりと俺の目に映し出される。

 

「ようこそ、勇者軍へ。歓迎いたし――」


 その人物は振り返りながら、挨拶をしてくる。

 が、その動きは突然ピタリと止まる。


 俺もその姿を見た途端に過去の記憶がじわじわと蘇ってきた。


 そしてほんの数秒間だけ沈黙が続いだが、先に口を開いたのは向こうからだった。


「し、シオン……なの?」


「貴方は……リベルカさん?」


 俺はこの人に見覚えがあった。

 3年前、俺が勇者軍に属していた時の元上官。


 間違いない。

 この人は当時、勇者軍幹部の一人だった人物。


 リベルカ=フォン・フィールドだ。

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