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57.カフェにて


「うわぁ……やっぱりすごい人だね」


「予想はしていたけど、まさかここまでとは……」


 昼下がりの王都。

 俺とリーフレットは貴族街に新しく出来たカフェへと足を運んでいた。


 カフェの前はかなりの人。

 やはり注目度が高いのか平民、貴族問わず沢山の人で賑わいを見せていた。


「とりあえず、並ぶか」


「うん!」


 俺たちは列の最後尾まで戻る。

 距離から推測して列の長さは数十メートルほど。


 まだまだ先は長い。

 

「あ、そうだ。しーちゃんに言っておくことがあるんだった」


 列に並んで早々、リーフレットの口が動く。


「言っておくこと?」


「うん。今度のドラゴン討伐、わたしたちも行くことになったの」


「わたしたちってことはもしかしてリィナもか?」


「そうだよ。リベルカ団長にあの二人だけじゃ心配だから監視役として付いていってほしいって言われて」


「そ、そうだったのか……」


 単純に心配されているのか、単に信用がないのか。

 

(いや、あの一件からして信用があるという方がおかしな話か)


「そういうわけでわたしたちも同行することになったから宜しくね」


「あ、ああ……分かった」


 ドラゴン討伐の出発予定日は明後日の明朝。

 場所は王都から数十キロほど離れたスノア峡谷という場所に討伐対象が潜んでいるらしい。


 しかも親方の話によればその峡谷では稀にとんでもないほどの魔力純度を持つ鉱石が採掘できるとのこと。


 ドラゴン討伐がメインではあるが、どちらかというとそっちの方に興味がある。

 

 どちらにせよ、王女殿下の剣を作るには普通の素材では無理な話。

 

 それにタイムリミットは三か月しかない。

 余裕がないわけじゃないが、試作品を作って試す期間もほしい。

 

(今回の依頼者はとにかく大物だからな)


 もし期限を守れなかったからどうなることやら。


「いらっしゃいませ。2名様でよろしいでしょうか?」


 と、色々と考えている内に順番が回って来る。

 俺たちは頷くと、ウエイターに導かれ、二階のバルコニー席へと案内される。


「本日のおすすめメニューはこちらになります。どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ」


 ウエイターは丁寧な挨拶を添えると、一礼して去っていく。

 

「なんか、すごい空間だな」


「う、うん……無駄な音が一切しない」


 店内はかなり落ち着いた雰囲気で、貴族街というのもあってか周りは貴族っぽい人たちばかり。

 こういうのを品があるっていうのだろう。


 俺が勇者軍にいた頃に行った平民街にある大衆酒場とは大違いだ。


「さて、何を頼むか……」


 メニューを開き、一通り中身を見てみるが……


(さっぱり分からん……)


 カフェなので基本的にメニューはコーヒーや紅茶といった飲み物がメイン。

 だが問題なのは……

 

(エレガントコーヒー……なんだこれ、普通のコーヒーじゃないのか?)


 他にも色々と複雑さ極まる名がついたメニューが書かれていた。


「リーフは何を頼むんだ?」


 メニューを見ながらチラッと聞いてみる。

 

「う~ん。わたしもあまりこういうところ来ないから、少し迷ってる」


 リーフも俺と同様に頭を悩ませていた。

 ならば……


「あの、すみませ~ん」


 俺は手を高く挙げ、近くにいたウエイターを呼ぶ。


「ご注文でしょうか?」


「ああいや……そうではなくて、何かおすすめのメニューがあれば教えていただきたいなって」


 迷った時はウエイターさんに聞くのが一番だ。

 ウエイターは「そうですね……」と言いながら、机の上に置いてあったメニューの最終ページを開いた。


「今ならこの季節のパンケーキがおすすめメニューとなっております」


「おっ、これ美味そうだな。リーフはどう思う?」


「わたしも食べてみたいな。カフェのパンケーキって食べたことないから」


「んじゃ、決まりだな。すみません、これを二つください」


「かしこまりました。お飲み物はどうなさいますか?」


「飲み物か……どうする?」


「う、う~ん……」


 再び悩みの迷宮に迷い込む。

 するとウエイターさんは腕に挟んでいた別メニューを机の上に置き、


「もしよろしければこちらの期間限定メニューはいかがでしょうか? 一応こちらのメニューはカップル様限定で――」


「「か、カップルっ!?」」


 ウエイターさんの説明途中で互いにそのワンフレーズに反応。

 声が大きすぎたのか周りの客の視線を一挙に浴びる。


((ま、マズイ……!))


 二人の心中に焦りが生じる。

 まさに視線の集中砲火といったところだ。

 

「あ、あの……お客様?」


「あっ、すみません! あの、普通のコーヒーをお願いします!」


「わ、わたしは普通の紅茶で……!」


「か、かしこまりました。では、少々お待ちください」


 少し困惑しつつも、ウエイターは注文を取り、去っていく。

 

「な、なんか変な注目を浴びちゃったね。あはは……」


「だ、だな……」


 リーフレットは頬を赤く染め、少し苦笑いをする。


「や、やっぱり周りからはそう見えるのかな?」


「なにが?」


「そ、その……わたしたちがか、カップルに……」


「ど、どうだろう……」


 目線を反らし、曖昧な答えを返す。


(ダメだ! あまりその言葉に反応するな、オレ!)


 こう念じるのも下手な意識をしないため。

 とりあえず他の話題を……と思ったその時だった。


「し、しーちゃん。この際だから一つ聞きたいことがあるんだけど……」


「聞きたいこと?」


「うん。ちょっと言いにくいことなんだけど……」


 リーフレットは言葉通り、言いにくそうにモジモジとする。

 しかし数秒後、彼女の顔は一転して真剣な顔つきに。


 覚悟を決めたのか、リーフレットは俺の目をしっかりと見ると――そっと口を開いた。


「その……しーちゃんは、わたしのこと……どう思ってる?」

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