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56.ぎこちない二人


「……」


「……」

 

 噴水広場に座る二人の若者。

 周りは休息日で盛り上がっている中で、俺たちだけは異様な雰囲気に包まれていた。


「あの……リーフレットさん?」


「はい」


「いつまで俺たちはここに?」


「わ、分かりません」


「分かりませんって……」


 衝撃の事実を知ってから早数十分。

 俺たちの動向は変わらず、噴水広場にいた。


 どうやらリーフも今回の事は唐突にリィナからここへ来るよう言われたらしい。

 しかし決定的な違いは予めここに俺が来ることを知っていたということ。


 要はリーフも俺と同じ被害者なわけで……


「ど、どうしよっか……これから」


「そ、そうだな。どうするか」


 互いに牽制し合い、話が一向に進まない。


(何故だ? 普段はこんな感じにはならないのに……)


 今、確実に言えること。

 それは普段のような感じで接することができていないということ。


 いつも通りだったら他愛のない話で問題なく会話のキャッチボールができる。

 だが今回はその話すら出てこない。


 この美少女はリーフ……と思い込んでもやはり色々と意識してしまう。


 久々にリーフと会ったあの時と似た感覚だった。


 そして向こうも何故か話しかけてこない。

 いつもなら明るい笑顔で色んな話をしてくれるのに、今回は別人のように様子が違った。


「な、なんか今日はやたらと人が多いな」


「そ、そうだね。いつものよりも活気がある気がする」


「や、やっぱそう思うか?」


「う、うん……」


 ……マズイ。このままじゃ一日がベンチに座って終わることになる。


(何か、何か話題は……)


 知識の乏しい脳をフル回転させる。

 と、その時、咄嗟にある話題を一つ、思いついた。


「そ、そういえば貴族街の近くに新しいカフェが出来たみたいだぞ」


「あっ、そのお店知ってる。何でもオープン初日から長蛇の列が出来たとか」


「あ、ああ。だから俺も少し気になっててな。その……もしよかったらだが、そのカフェに行ってみないか?」


「う、うん……! いいよ。わたしも行きたいなって思ってたから」


「よ、よし……! じゃあ決まりだな!」

 

 ようやく次の流れが決まる。

 ここまで来るのにざっと1時間。


 周りの人から見ればアホみたいなことかもしれないが、ふざけているわけじゃない。

 本当にまともな会話すら出てこなかったのである。


「い、行くぞリーフ」


「う、うんっ!」


 俺たちは同時にベンチから立ち上がると、そのカフェへと足を運ぶ。

 

 そして俺はこの時、深く思い知った。


 いくら仲が良く、知り尽くした人間でも驚異的な変化を遂げられると、ここまで何もできなくなってしまうのか……ということを。



 ♦



 同時刻。

 そんなきごちない会話を続けている俺たちの影でひっそりと潜む者たちがいた。


「……リィナちゃん。ストーキングするには全然いいんだけど、なんで俺まで一緒にいかないといけないんだい?」


「二人に何かあった時のために身代わりになってもらうためです」


「み、身代わりですと!?」


 これまた影で潜む二人の若者。

 名をユーグ・フリードマンとリィナ・フローズン。

 

 二人は遠くからシオンとリーフレットを監視……見守っていた。


「それにしても、二人はなにやってんだ? お互い違う方向ばかり見て話すどころか目すら合わせる気配がないんだが」


「動揺している証拠です。特にシオンは普段と違うリーフレットの姿に心臓バクバクでしょう」


「えっ、あの隣のめっちゃ可愛い女の子ってリーフレットちゃんなの!?」


「今更ですか……さっきも言いましたよ」


「マジか! こりゃたまげたな。お化粧と髪型と服装で超絶美人が爆絶美人に進化を遂げてしまうとは……」


 数多くの女性と関係を築いてきたユーグにすらリーフレットはとんでもない美人として映っていた。

 と、同時にユーグの嫉妬の牙がシオンの方へと向けられる。


「あのヤロー、あんな可愛い子を目の前にしてあの態度とは……後で説教が必要なようだな」


「シオンはユーグ先輩と違ってピュアなんですよ。先輩みたいに心が汚れていないんです」


「あ、あのリィナちゃん。最近思ってたんだけど、俺へのあたり強くなってない?」


「気のせいです」


 あの一件以来、この二人の仲は不仲……というかリィナが一方的に敵意を示している状態にあった。

 今回もユーグが駆り出されたのは例の覗き事件の影響によるもの。

 

 これは裏話だが、最初は真犯人のユーグだけムショ送りの予定だった。


 もちろん、あそこにいるシオンとリーフレット(ふたり)は知らないが。


「あっ、ようやく動き出しましたね」


「やっとか……なんだかんだ言って1時間も――ってリィナちゃん、何で俺の手を引っ張るのさ!」


「早くいかないと、見失ってしまいます。そうなっては意味がありません」


「ほ、本当に俺も行かないと――」


「覗きの処罰、今からでもリベルカさんに変更することだって可能なんですよ」


 クリッとした目を見開き、ユーグを睨む。

 そのたった1秒で危険を察知したのか、


「わ、分かりました……御供させていただきます」


 素直に言うことを聞くことに。

 

「では行きましょう。見つからないように気をつけてください」


「う、うっす……」


 普段はアゲアゲでお調子者なユーグも流石にテンションが急降下。

 二人はシオンとリーフレットが歩いていくのを確認すると、後ろからそっと尾行するのであった。

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