53.処罰
「さて、処罰を行う前にまずはこんなことをした理由を聞きましょうか」
「「……」」
場所は変わり、団長室。
俺たちは広い団長室の中の中央でポツンと正座をさせられていた。
あの後、俺たちは当然の如く捕縛され、連行。
特にリィナがこのことに憤怒し、聖威剣を俺たちの首元に突き付けたが、それに対してリーフレットが介入。
まずは理由を知るために団長室に連れていこうということとなり、今に至るというわけだ。
「どちらからでも構いません。理由を述べてください」
リベルカは丁寧ながら少し低いトーンで圧力をかけてくる。
当然ながら、今の俺たちは犯罪者も同義。
特に近くにいたリィナの凍えるような冷たい視線が俺たちを襲った。
「す、すみ――」
俺はとにかく謝らなければと思い、頭を下げ謝罪をしようとした……その時だ。
「す、すみませんでした団長! このせんにゅ……覗き計画は俺が考えたものなんです!」
沈黙の中、俺の言葉を遮って先に言葉を発したのは真犯人のユーグだった。
ユーグは先に謝罪を述べると、頭を深々と下げた。
「やっぱり、貴方だったのね。なんでこういうことをしたの?」
ため息をつくリベルカ。
やっぱりってことはイメージ的にそういうレッテルが張られているということ。
もし俺が団長の立場だったら何も聞かずに納得するだろう。
昔からイケイケな感じだったし。
「それは……」
ユーグは少し間をあけると、事の経緯を細かく話し始めた。
中身は先ほど俺にも言ったような内容だった。
純粋に自分の限界を感じていたこと。
そしてより強くなるための布石として、今回のような危険極まりない行動を犯したこと。
ユーグは何一つ紛い事は言わず、吐露した。
その時のユーグの顔は至って真剣そのものだった。
もはや最初から隠したり、ごまかしたりしようなんて考えはなかったのだろう。
ただ淡々とらしくない敬語を使いながら、説明をしていた。
「……なるほど。自分の限界を超えるための行為だったと……そうおっしゃるのですね?」
「は、はい……」
依然として緊迫した空気は続く。
しかし、ユーグの言っていることは正真正銘本当のこと。
後は団長がそれを信じてくれるかどうかだが……
「分かりました。その話、信じましょう」
「ほ、本当ですか!?」
深く下げた顔を勢いよく上げるユーグ。
表情や態度で嘘をついていないだろうと判断されたのか、リベルカはその話を信じてくれた。
「ですが……貴方のやったことは決して許される行為ではありません。シオンも半ば強引な誘いだったとはいえ、計画に同行したのなら貴方も同罪です」
「はい……すみませんでした」
再び頭を下げ、謝罪する。
リベルカの言っていることは正論もいいところだった。
故に自分が先ほどまでしていた行為がどれだけのものかを再認識させられ、罪悪感だけが募っていく。
「実際、貴方方二人の行為は歴とした犯罪行為です。本来ならば拘束され、そのまま拘置所送りになるのですが、二人の要望によって他のやり方で処罰をするという結論に至りました」
「え? 二人って……」
「そこにいるリーフレットとリィナですよ」
ユーグはリーフレットたちの方を向く。
「わたしは反対だった。でもリーフレットがどうしてもって言うから」
「り、リーフレットちゃん……そ、それで許してくれるの?」
ユーグの視線はリーフレットの方へ。
するとリーフレットは、
「本当はされるべき罰を受けるのが、妥当だとわたしも思います。ですが、わたしは任務の度に色々なユーグさんを見てきました。だから思ったんです……ユーグさんは意味もなく”あんな行為”には及ばないって」
「り、リーフレットちゃん……」
身体を震わせながらユーグはリーフレットを見る。
リーフレットの意見は最初俺が抱いていたものとほぼ同じようなものだった。
彼女も又、Sランク勇者として先輩であるユーグの姿を沢山見てきたのだろう。
俺がかつてそうだったように……。
「と、いうわけです。なので二人には別の形で償いをしてもらうことにしました」
「別の形……?」
「はい。これから貴方たち二人にはある場所に行ってあることをしてもらいます」
と、同時にリベルカはスタスタと俺たちの元へ寄ると、そのあることに関係する書類をドンと目の前に置く。
そして作業用でかけていた赤フレームの眼鏡をクイッと上げると、リベルカは口を開いた。
「……今日から二日後の明朝、二人にはある二体の竜を無償で討伐をしに行ってもらいます」




