43.国家騎士マクドエル
「はんっ……(もぐもぐ)」
「……美味しい、流石は流行のグルメ!」
中心街でひときわ目立つ巨大噴水。
その傍にあった長ベンチに俺たち三人は座っていた。
「まったく……今日は遊びにきたんじゃないんだぞ」
「(もぐもぐ)分かってる。でも衝動が抑えきれなかったの」
「(もぐもぐ)右に同じく!」
「……バレたらリベルカさんに怒られるぞ。まだ時間に余裕があるからいいものの」
二人はお目当てのルーブ焼きとかいうものを買い、幸せそうに頬張っている。
彼女ら曰く、この辺では大変人気のグルメらしい(よく知らんけど)。
「しーちゃんも食べる? すっごく美味しいよ」
「いや、俺は……」
「別に遠慮しなくていい。食べるのが面倒ならわたしが食べさせてあげる」
リィナは自分のルーブ焼きを俺の口元に寄せてくる。
するとその様子を見たリーフは、
「あ~っ! リィナズルい! じゃあわたしもしーちゃんに……」
「いや、だから……」
話は食べるか否かの流れからどっちが俺に食べさせるかという話題に転換。
二人してそのルーブ焼きを俺の口元へと近づけてくる。
「ほら、シオン。食べて」
「しーちゃん、わたしのも!」
「お、おい……お前らいくら何でもごうい――むふっ!?」
……結局、この後俺は二人の怒涛の攻め合いで残りのルーブ焼き(二人分)を全て食すことになったのであった。
♦
勇者軍本部のあるルーベリック王国。その中心に城は聳え立っている。
王城への道は中心街を抜けて一本道。
王城前の道には豪勢な装飾で彩られた街灯が両サイドに並んでいるのですぐに分かる。
王城周りは庭園となっており、ひとたび足を踏み入れると街の中にいるということを忘れさせるほど。
そんな道を俺たちは談笑しながら歩いていた。
「そういえば、二人ってどういう間柄なんだ? お互い面識があるようだが……」
さっきから仲良く話してたから少し気になっていた。
すると、この質問に対して先に口を開いたのはリーフレットだった。
「リィナとは勇者軍に入った時からの友達なの。えーっと……同期ってやつ?」
リーフレットの一言にリィナも続けて説明する。
「そう。わたしたちはライバルであり、同期。もうかれこれ2年以上の付き合い」
「そうだったのか」
どうりでやたらと仲が良いわけだ。
さっきも屋台の話でだいぶ盛り上がってたし。
(ってことは関係的に俺とユーグみたいなものか)
まぁ最初の方は一言も会話とかしなかったけど。
会った時から変人だったしな、あいつは。
となると、前にリィナが言っていた同期で憧れの人ってもしや……
……と、そんな思考をしているうちに王城の門前に到着。
門前には複数の門番兵がギロリと目を光らせ、監視していた。
やはり一国の要人が住まう重要拠点。
警備は万全だった。
「行くぞ、二人とも」
護衛を二人を引き連れ、俺たちは堂々と門の方へ。
「おい、待て!」
と、案の定門前で門番兵に行く手を阻まれる。
「何者だ、お前たち」
もう一人の門番兵に理由を問われる。
俺は事情を大まかに説明し、通してほしいと言う。
しかし、
「陛下と面会予定? お前、名前は?」
「シオン・ハルバードです。一応殿下とは話がついているはずですが……」
「シオン・ハルバード……? お前、聞いてるか?」
理由を問うように言ってきた門番兵がもう一人の門番兵に聞く。
「いや、面会の予定があるなんて聞いてないな」
聞いてない? どういうことだ?
確かにリベルカから女王陛下へと話はいっているはずなんだが……。
一応確認を取りに一人の門番兵が城の中へ。
だがすぐに帰ってくると、
「調べてみたが、やはり面会の予定は入ってない。日にち違いとかではないか?」
「いえ、そのはずは……」
他にも書類やら証拠を見せろと言われたが、そんなものはないため、何も出すことができなかった。
「まぁどちらにせよ、証拠となるものがない限り、入城は認められない。悪いが今日はお引き取り――」
「――入れてあげなさい、彼らはお客様ですよ」
門番兵が俺たちを追い返そうとしたその時、スタスタとこちらに歩いてくる若い男の姿が。
豪勢な鎧を身にまとい、腰にはたいそう立派な大剣が据えられていた。
「「せ、戦士長!」」
その姿をみるなり、二人の門番兵は口をそろえてそう言った。
そして男は俺たちの前へと来ると、
「貴方が、シオン・ハルバード様ですか?」
「は、はい……」
男は俺の名を知っていた。
どうやらこの人には面会の話が伝わっているようで、
「クラリス様からお話は聞いています。申し訳ありません、うちの下っ端がご迷惑をおかけしたようで」
「い、いえ。ところで大変失礼なのですが、あなたは……?」
名前を聞くと、男は「おっとこれはこれは失礼しました」と額を手で押さえると、丁寧に頭を下げながら自己紹介をしてきた。
「私はルーベリック王国第一戦士大隊戦士長のマクドエルという者です。以後……お見知りおきを」




