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31.現れしもの


 三人は自らの持つ魔力を全解放させ、聖威剣に魔力を流し込む。

 同時に三点の輝きが付近を光輝かせ、魔力が集中していく。


「ユーグは範囲攻撃の準備をしておいて。私とリーフレットで何とか隙を作るからそこを狙って」


 二人の指揮は団長のリベルカが執ることに。

 そして簡単に作戦会議をした結果、ユーグが後衛でリベルカとリーフレットが前衛ということになった。


「任せておいてください! 一発特大なのをあの髭ヅラに叩きこんでやりますよ!」


「任せるわ。リーフレット、貴方は私と一緒に前衛を」


「は、はいっ!」


 大まかな動きは決まった。

 後はもう、己の力を信じるのみ。


「作戦会議は終わったか?」


「ええ、終わったわ。律儀に待っていてくれてありがとう」


「礼などいい。お前たちがどう向かってこようが、俺には関係ない。ただ叩き潰せばいいだけだ」


「……随分と余裕なのね」


「ふん、今に分かるさ。お前たちでは決して俺には勝てないということを」


 ゴルドは一瞬たりとも表情を変えない。

 ただ真顔でリベルカたちにそう告げる。


「なら、遠慮なく行かせてもらうわ! 行きますよ、リーフレット!」


「はい!」



 二人は剣を構えながら猛進。

 瞬間にゴルドの懐へと潜り込み、挟むように前と後ろを取る。


 だが――


「甘い……甘すぎる!」


 ゴルドは切りかかろうとする二人を体内に溜め込んでいた魔力を衝撃波へと変換させ、吹き飛ばす。


「うっ、魔力を衝撃波に変換させただけでここまでの威力なの……?」


 リーフレットはゴルドの攻撃を受けて確信する。

 ゴルドの力は桁違いであると。

 

 でも二人は怯まない。

 

 二撃目、三撃目と攻撃のチャンスを作ると、ありったけの力をゴルドにぶつける。

 だが攻撃は悉く跳ね返され、一瞬の隙すら作ることが出来ない。


 反してゴルドは反撃すらせず、ただ退屈そうに二人を見るばかりだった。


「どうした、この程度か? 数が増えればあるいは……と思ったが、どうやら俺の思い違いだったようだな」


「はぁ……はぁ……わたしの全力の攻撃が掠りもしないなんて……」


「くっ……!」


 疲れが出てきたのか二人の息は先ほどよりも荒くなる。

 動きも少しずつ鈍り、最初のようなキレのある動きは失われつつあった。


「お前たちでは話にならん。おい、そこの坊主」


 と、ここでゴルドの目線はユーグへとシフトする。


「ぼ、坊主って……俺のことか?」


「ああ、そうだ。お前の実力はまだ確かめていなかったな」


「そ、それがなんだ?」


 聖威剣を両手で握りしめるユーグにゴルドはニヤリと笑みを浮かべ、


「何分でも待ってやる。構わず撃って来るがいい」


「なっ……んだと?」


「お前が何かアクションを起こそうとしていたことは察知していた。それが何かまでは分からなかったがな」


「……!」


 ゴルドは戦闘の最中も周りをよく見ていた。

 いや、むしろ周りを見る余裕すらあったと言える。


 それほど二人の攻撃はゴルドへは届いていなかったのだ。


「どうした? 魔力を溜め込むのに時間がかかるのであれば俺は待つと言っているのだ。もちろん、その間はこちらからの攻撃は一切しないと誓おう」


「ふ、ふざけるなっ! 俺はそんな――」


「撃ちなさい、ユーグ!」


「……ッ!?」


 ここで一人、ユーグの言葉を遮り、叫ぶものがいる。

 団長のリベルカだ。


「り、リベルカ団長……」


「撃ちなさいユーグ。相手がそういうのであればこれは私たちにとって数少ないチャンスとなる。貴方が持つあの力を叩き込めれば、きっと……」


「団長……分かりました。団長の指示であるなら俺はそれに従うまで!」


「やる気になったか? ならば早速打ち込んでくるがいい。お前の力を……見せてみろ」


「言われなくても……! はぁぁッ!」


 ユーグは体内に残る魔力のほとんどを聖威剣へと流し込む。

 聖威剣と共に身体全体に光を帯び、そして大量の魔力がユーグから溢れ出る。


「ほう、中々の魔力量だ」


 バチバチと雷のようなオーラがユーグを包み込む。

 

 そして魔力が十二分に溜まると――


「くらえ……! これが俺の……全力だぁぁぁ!」


 ユーグは聖威剣を思いっきり地面に突き刺し、その魔力の全てを外へと解き放った。

 

 瞬間。

 地を這って無数の光がゴルドの元へと襲い掛かる。


 そして……

 

「―――――――――!」


 超爆発。

 ゴルドがいた辺りはユーグの攻撃によって吹き飛ぶ。


 凄まじい衝撃と共に砂や土が宙を舞い、発生した砂嵐がゴルドの姿を覆い隠した。


「……はぁ……はぁ……やった……のか?」


 魔力の使いすぎで膝を地につけるユーグ。


 しかし砂嵐の影響で肝心のゴルドの姿が全く見えない。

 近くにいたリーフレットやリベルカも目を凝らしてその場所を注視していた。


 が、その時だった。


「なるほど、中々良い攻撃だ。今まで戦ってきた中では一番だな」


 その声と共に砂嵐の中からはゴルドの姿が。

 しかも傷一つすらなく、余裕の表情で服についた埃をパッパと払いながら出てきた。

 

「な、なにっ!?」


「ユーグさんの攻撃が通用していない……?」


「そ、そんな……攻撃は直撃したはず!」


 だが現にゴルドは二つの足で立っている。

 ゴルドは首に手を当て左右に動かしながら、


「ユーグと言ったな? 中々の攻撃だ。受け止めた時には少しばかり身体に電撃が走った」


「そ、それだけ……なのか?」


「まぁ、期待していたほどではなかったがな。でもこれでよく分かった。俺にとって、もう勇者など脅威ではないということがな」


「「「「「……!」」」」」


 三人は唖然と立ちすくんだ。

 まるで身体を固められかのように三人の動きはピタリと止まる。


 それに対してゴルドは聖威剣を天高くつき上げると、


「さて……そろそろお遊びは終わりにしよう。俺にはお前たちを殺した後もやるべきことがあるのでね」


 黒く邪悪な霊気がゴルドを包み込む。

 同時に膨大な魔力が紫に光り輝く聖威剣に注ぎ込まれていく。


 その姿はまごうことなき魔族のそれで、身の毛もよだつほどの魔力がじわじわと三人を襲った。


「中々良い運動だった。それだけは感謝しておこう」


 ゴルドの聖威剣には着実に魔力が充填されていく。

 

 だがユーグは魔力の欠損で、リベルカは長期的な戦闘による疲れでまともに動くことすらできなかった。

 

 状況的には絶体絶命。

 このままじゃ確実に全員殺される。


 ただ一人、動けるとすれば……


「わたしがやるしか……ない!」


 突然。

 リーフレットは聖威剣を片手に持ちながら、そう言う。


「……リーフレット!?」


「リーフレットちゃん、一体何を……!」


 リーフレットは心の中でこう思っていた。

 いくら圧倒的力を持つ者であっても魔力を溜め込むには相応の時間がかかる。


 それに基本的に魔力を溜め込んでいる間は他の攻撃はできない。

 その隙をつけば、反撃のチャンスが生まれるかもしれないのではないかと。


 それに……


聖威剣(ヴァイオレット)がもたらしてくれる速さがあれば……!」


 リーフレットは自らの聖威剣の能力を最大限に駆使し、瞬間的にゴルドの足元へ。


「……なに!?」


 さすがのゴルドもいきなりの抵抗には驚いたよう。

 しかしその時にはもう既にリーフレットは剣を振ろうと態勢を整えていた。


 流石に魔力を溜め込んでいる間の不意打ちは効果抜群……だと思っていた時だ。


「ふっ、小娘が」


「……はっ!?」

 

 ゴルドは天高く上げた聖威剣とは違う方の手にもう一つの剣を出現させる。

 

 ゴルドはこのことすらも想定済みだったかのように瞬時に剣を手に取ると、


「悪いが、俺には小細工など通じない。三人纏めて殺ろうと思っていたが、まずはお前からだ!」


 振りかざそうとするリーフレットよりも先に剣を彼女の腹部めがけて突き下げる。

 

「マズイ! リーフレットちゃん!」


 ユーグの叫びが森中に響き渡り、リーフレットもまたこの上ない焦りを見せていた。

 

「恨むなら、お前が従ってきたあの(リベルカ)を恨むがいい。死ねぇっ!」


 容赦のない攻撃がリーフレットを襲う。


(や、やられる!)


 そう思い、半ば諦めかけていたその時だ――


 側面から超高速で迫る影が二人の間に入り込む。

 その影は自身の前に出ると漆黒の剣でその一撃を受けとめる。


 チラッと垣間見えた影の正体。

 体格はそれほど大きくはなく、黒く染まった短い髪を持つ青年だった。

 

「ふぅ……どうやら間に合ったようだな」


 青年はそう呟くと、首だけをリーフレットの方へ。

 その顔を見たリーフレットは驚きのあまり目を見開く。


 そして咄嗟に、いつもの愛称が声に出た。


「し、しーちゃん……!?」



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