27.会する二人
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ただ一人、森中を駆ける女勇者がいる。
リベルカ=フォン・フィールド。
勇者軍を率いる団長であり、軍内最強の剣士でもある彼女はある覚悟を抱いていた。
それは彼女が本部から出発する少し前のこと。
彼女の元に一人の伝達兵が報告をしに来た時のことだ。
……
……
「全滅……?」
「はい。森の東側から調査任務にあたっていた伝達兵からの情報です。魔獣討伐の際に突如現れた謎の魔人によってその……例の3部隊が……」
「そ、そんな……」
「それだけではありません。その伝達兵の情報によるとその者は何故か聖威剣のようなものを持っていたとか」
「聖威剣……?」
この時、リベルカの脳裏にはある一つの可能性が過った。
「まさか……」
「どうなさいますか? 現地に派遣している残りの2部隊をそっちの応援に回しますか?」
「いえ、その必要はありません。この私が直々に確認しにいきます」
リベルカは伝達兵にそう伝えると撤退命令を発令。
全部隊に本部へと帰還するよう伝えてほしいと伝達兵に言う。
「かしこまりました。くれぐれもお気をつけて……」
「ええ。ありがとう」
……という会話を起点に、今の状況へと至る。
彼女は責任を強く感じていた。
自分のせいで部隊を全滅させてしまったことだけじゃない。
自分が指導者としていかに無力なのかということを思い知らされたからだ。
そして同時に彼女の中で不穏な予感が渦巻いた。
それはさっき伝達兵が言っていたこと。
その謎の魔人とやらが聖威剣を持っていたということだ。
聖威剣を持っている魔人……。
普通ならあり得ないことだ。
何故なら魔族には勇者として覚醒するための聖魂を持っていないから。
聖魂は古来より人族に限定して与えられる超能力。
専門学者の間では生まれつき身体能力で大幅な差が生じている魔族と対抗するために神々が与えたギフト。
または人類の自覚的進化という説を提唱する人もいる。
どれが正しいかは未だに解明されてはいないが、一つだけ確実に言えるのは魔族が聖魂を持っていることは絶対にあり得ないということ。
だが今回の報告はその理論を大きく覆すものだ。
もしかしたら伝達兵の見間違いの可能性もある。
「この胸騒ぎはなんだろう。嫌な予感がする……」
リベルカの心の中では一つだけ恐れていたものがあった。
だがそれはあくまで仮定にすぎない。
「あの事件は全て解決したはず。でも、もしもあの男が……」
リベルカのスピードは焦燥感と共にどんどん上がっていく。
そして予め伝達兵によって伝えられていたポイントに辿り着いた。
のだが……
「ひ、酷い……」
森のちょうど中央に位置する少し大きめの広場。
そこには数人の兵士が地に伏し、辺りには無残にも血痕が飛び散っていた。
近くにはその兵士たちが使っていたであろう剣や鎧の破片が散乱しており、中には勇者軍のものではない武具も落ちていた。
恐らく勇者軍の応援に駆けつけてくれた国家騎士のものだろう。
「くっ……!」
その悲惨な光景を目の当たりにするやリベルカは強く拳を握った。
だが次の瞬間――
≪……久しぶりだなリベルカよ≫
「……!?」
どこからか声が聞こえてくる。
だが周りに見渡す限り、人の姿はない。
声のみが森の中でこだました。
≪それにしてもお前も落ちぶれたものだな。前のような凄まじい魔力の波動を感じないぞ≫
「だ、誰ですか!? 隠れていないで出てきなさい!」
腰に差した聖威剣を即座に抜き、臨戦態勢を整えるリベルカ。
精神を集中させ、いつでも戦闘に入れる準備をする。
と、その時だ。
突如辺りが黒い霧に覆われる。
一点に影のようなものが集中し、それは段々形を変え、やがて人型のような形状へと変化する。
「こうして面と向かって会うのは3年ぶりか。時が流れるのは早いものだ」
謎の霧による影響でまだ完全に姿は見えない。
だが人影はもう見えている。
大柄でガッチリとした肉体を持った輩だ。
それはシルエットだけでもすぐに分かる。
「まさかとは思っていましたが、やはりあなただったのですね……」
リベルカは聖威剣を構えながら問う。
もうリベルカはこの時点でほぼ確信していた。
最初は半信半疑だったが、3年前までは共に一つの組織を支え合ってきた仲だ。
簡単に忘れられるはずがない。
謎の霧はその声の主の登場と共に少しずつ霧が晴れていく。
完全に霧が無くなり、その魔人とやらの全貌が明らかになった時――
リベルカはある人物の名前を叫んだ。
「……ゴルド・エンブラント!」
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