表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/266

26.団長として

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


一章もそろそろ終盤になります。

これからもどうぞよろしくお願い致します。


追記:何度かご指摘をいただいた出禁設定ですが、色々と直さないといけないところが出てきたため、撤廃しました。


 時は少し遡り、数十分前。

 勇者軍本部ではある出来事が起こっていた。


「せ、戦地に赴かれるのですか!?」


「ええ。それが今、私が団長としてやれることです」


 場所は団長室。

 勇者軍を統率する女勇者、リベルカ=フォン・フィールドはそう言いながら専用の鎧を装着する。

 そしてすぐ隣にいるのはそのリベルカを支える側近の一人。

 勇者軍、副団長のアゼルだ。


「で、ですが……!」


 アゼルは副団長でありながら今の勇者軍の運営や経理などの裏業務を一挙に引き受けている有能な幹部の一人。

 緊急会議の時も発言こそしなかったが、裏方でリベルカの支援をしていた。


 リベルカとは古くからの友人であり、ゴルドが勇者軍を率いていた時からの数少ない古参者でもある。

 事件以来、崩壊寸前だった勇者軍を少しずつ建て直していけたのも彼の尽力あってのものだった。


 だからリベルカの彼に対する信頼は非常に厚く、そして彼自身もリベルカのことを強く信頼していた。


「団長、考え直してください。今、本部を空けてしまったら誰が総指揮を執るのです!?」


「ごめんなさい、アゼル。でも……それでも私は行かなければならないの」


「どうしてです? 別に団長自らが行かなくても……」

 

「……違うの。これは私がやらないといけないことなの」


「だからどうして……どうしてリベルカが……!」


 納得いかないアゼルはリベルカに強く問う。

 いつしかその口調は団長とその側近という関係から友人としての関係へとシフトしていた。


 だがそれでもリベルカは理由を言わなかった。


「アゼル。ここの守りはあなたに任せたわ」


「ちょっ、待ってくれリベルカ! だったら俺も行く! お前ほどの力はないけど、俺だってお前と同じ勇者なんだ!」


 アゼルはリベルカの行く手を阻みながらもそう話す。

 しかしリベルカは静かに首を振り、


「駄目よ。あなたは元々戦闘が得意なタイプじゃない」


「で、でも……!」


「それに、あなたまでここを離れたらここの守りはどうするの?」


「そ、それは……」


 言葉を失うアゼル。

 そんなアゼルの姿を見て心を痛めつつもリベルカは、


「勝手なことだって自分でも分かってる。でも今回は……今回ばかりは私の我儘を聞いてほしい」


 一瞬たりとも表情を変えずただアゼルの目をじっと見ながらリベルカはそう話す。

 その真剣そのものの眼差しを見てアゼルは何かを悟ったのか、


「……訳あり、のようだな」

 

 アゼルのこの一言にリベルカは小さく頷く。

 

「……分かった。お前がそこまで言うなら俺はもう止めない」


 その眼差しに何か深い意味を見出したのかアゼルはすんなりOKを出す。


「でも、一つだけ約束してほしいことがある」


「……約束してほしいこと?」


「ああ、それは――」


 アゼルはここで一息つき、リベルカの目を見る。

 そしてそっと口を開くと、


「絶対に……死ぬな。必ず、帰ってきてくれ」


 アゼルの想いは全てこの一言に込められていた。

 それはただ純粋に無事に帰ってきてほしいという願いだった。


「分かった、約束する。絶対に無事に帰ってくるって」

 

 リベルカは慣れない笑顔を向けてアゼルにそう返す。

 アゼルもそれに応えるようにニッコリと笑みを見せる。


「……ったく、昔から変わらないよなリベルカは。やめろって言っても自分の意見を曲げないんだから」


「ご、ごめんなさい」


「別に怒っているわけじゃない。ただ単に俺は一人の友人としてお前が心配なだけだ。なんだかんだいって数年来の付き合いだからな」


「アゼル……」


 リベルカは申し訳なさそうに俯く。

 

「お、おいおい。そんな顔するなって。なんか余計に心配になるじゃねぇか」


「ご、ごめん」


 リベルカはすぐにキリッとした表情へと切り替え、アゼルを見る。

 そして作業用デスクのすぐ後ろにある専用の剣立てから自らの聖威剣を手に取ると、


「アゼル……後は頼みましたよ」


「ああ、任せておけ!」


 リベルカは剣を垂直に立てる。

 自らの心の中で複雑に混ざり合う感情を抑え、彼女は静かに解放の呪文を詠唱する。


「……≪解放せよ(アーヴェント)≫!」


 瞬間。

 彼女の持つ聖威剣の特殊能力である瞬間転移(クイックテレポート)が発動。

 その場から瞬時に移動し、リベルカは一人、戦地へと向かったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻冬舎コミックス様より
コミックス4巻発売中!
現在「comicブースト」様にて好評連載中です!
俺の冴えない幼馴染がSランク勇者になっていた件

i801353


↓comicブースト様連載サイト↓
俺の冴えない幼馴染がSランク勇者になっていた件



↓幻冬舎コミックス様紹介サイト↓
俺の冴えない幼馴染がSランク勇者になっていた件



アルファポリス様より
小説2巻発売中!
無能と蔑まれし魔術師、ホワイトパーティーで最強を目指す

i801359


↓アルファポリス様紹介サイト↓
無能と蔑まれし魔法使い、ホワイトパーティーで最強を目指す

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ